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第百九十六話 ティティス探索(五)

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 ナディアとエルザは、街の中心街を歩いていた。

 二人とも、目立たないようにローブを羽織り、フードを目深く被る。

 二人の任務は『街の様子を探る』というだけで、他の仲間たちのように具体的な目標がある訳ではなく、二人は街の中心街を散策していた。



 昼近くなると、それまで静かであったカスパニア軍の動きが急に慌ただしくなる。

 カスパニア軍の部隊が隊列を組んで、街の大通りを塔へ向かって小走りで行進していく。

 市庁舎の周辺の道路は、カスパニア軍による非常線と検問が設置され、民間人は近づけなくなっていた。

 ナディアとエルザは、カスパニア兵達が話している会話に聞き耳を立てる。

「いったい、どうなっているんだ?」

「シロヒゲ将軍が暗殺された! 娼婦と一緒だったらしい!」

「見張り塔が爆破された!」

「街に賊が潜入しているぞ!」

 ナディアは、カスパニア兵の立ち話を盗み聞きするとエルザにそっと耳打ちする。

「……何だか、騒がしくなってきたわね」

「そうね」

「早めに隠れ家に引き上げた方が良さそう」

「そうしましょ」



 隠れ家に引き上げようとした二人の前にカスパニア軍の警ら隊が現れる。

 カスパニア兵の一人が二人に近寄って来て告げる。

「おっと。待ちな。そこの二人」

 ナディアが周囲を見回すと、二人は既にカスパニア軍の警ら隊に囲まれていることに気が付く。

(くっ……十人!? いや、それ以上か?)

 カスパニア兵は続ける。

「お前たち、商人じゃないな? ……顔を見せろ!」

 ナディアは口を開く。

「……エルザ」

「判ったわ」

 ナディアとエルザは、カスパニア兵に言われた通りに被っていたフードを避けて顔を見せ、羽織っていたローブを脱ぐ。

 ナディアとエルザの顔と容姿を見たカスパニア兵たちは口々に感嘆の声を上げ、口笛を吹く者も現れる。

「おぉ!」

「女!?」

「女だ!」

「エルフ!?」

獣人(ビーストマン)!?」

「良い女だぜ!」

「どっちも凄い美人だ!」



 カスパニア兵の一人は、下卑た笑みを浮かべながら二人に近付いてきて尋ねる。

「へへへ。姉ちゃんたち、いくらだい?」

 ナディアは、カスパニア兵を見下した薄ら笑みを浮かべながら軽口を叩く。
 
「私たち、高いわよ?」

 ナディアに続いて、エルザもカスパニア兵に悪態を突く。

「帝国の皇子様なら、ともかく! あなたたちの安給料じゃ無理ね!」

 カスパニア兵は、二人に悪態を突かれても食い下がって来る。

 カスパニア兵たちは、占領した街での略奪で皆、小金を持っていた。

「へへ。つれないなぁ~……ホラ、金額を言ってみな?」

 ナディアは、カスパニア兵を睨みながら悪態を突く。

「残念! 私たちは娼婦じゃなくてよ!」

 ナディアに続き、エルザもカスパニア兵に悪態を突く。

「それに、あなたたちは私のタイプじゃないの!」

 怒ったカスパニア兵たちは、次々と剣を抜いて二人に迫る。

「くっ! 下手に出りゃ、ツケあがりやがって! 腕ずくで()ってやる!」

「亜人が! お高くとまりやがって!」

輪姦(まわ)して、奴隷商人に売ってやる!」

 ナディアはレイピアを抜いて構えると、傍らのエルザに告げる。

「エルザ、手加減無用よ。本気出しなさい!」

 エルザも両手剣を構えると、ナディアに答える。

「……言われなくても、そのつもり!」

 カスパニア兵が剣で斬り掛かって来たのを合図に、二人は街中でカスパニア軍の警ら隊と剣戟を始める。

「おりゃああああ!」

 エルザは、雄叫びと共に大上段に構えた両手剣を振り下ろし、一撃でカスパニア兵を斬り伏せると、素早く身を翻し、後ろのカスパニア兵の頭部に後ろ回し蹴りを放って蹴り倒す。

 ナディアは、正面のカスパニア兵をレイピアの刺突で仕止めると、召喚魔法を唱える。

戦乙女の(ヴァルキリーズ・)戦槍(ジャベリン)!」

 ナディアの前に三つの光の玉が現れると、それは光の矢に形を変えて真っ直ぐに飛んで行き、カスパニア兵の胸を貫く。

「クソがぁああ!」

 カスパニア兵は、槍を構えてエルザを突いてくる。

 エルザは、身を反らして槍の一撃を躱すと、踏み込んで両手剣を水平に払い、カスパニア兵の首を斬り飛ばす。

 ナディアは、風の精霊(シルフ)を召喚する。

風の精霊(シルフ)たち!」

 ナディアに召喚された風の精霊(シルフ)たちは、無数の風の刃と化してカスパニア兵たちを切り裂いていく。

 二人は、次々とカスパニア兵たちを倒していくが、街の中心街で大立ち回りで騒ぎが大きくなり、更にカスパニア軍部隊が集まって来る。

 エルザは、ナディアに話し掛ける。

「ナディア! マズいわ! 敵の援軍よ!」

 ナディアは答える。

「まったく! 次から次へ、ゾロゾロと群がって来て! ……カスパニアの男って、そんなに女に飢えているのかしら?」

 エルザは、もう一人のカスパニア兵を斬り伏せるとナディアに話し掛ける。

「恐らくカスパニアには、女がいないんでしょ!?」

 ナディアは、エルザをからかう。

「エルザ、彼らの相手してあげたら? きっと、すごく溜まっているわよ?」

 エルザは、猛烈に拒絶する。

「嫌よ! 触られるのも、犯されるのも! 奴らの汚い手で触られるなんて! ……ううっ、気持ち悪い!」

 エルザは、カスパニア兵たちに犯されている自分の姿を想像をして全身に鳥肌が立つ。

 ナディアは、周囲を見回してエルザに告げる。

「奴ら、たくさん集まって来たわね!」

 エルザも周囲を見回すと、集まって来たカスパニア軍は師団規模になりつつあった。

「ちょっと、凄い数よ! ナディア! どうするの!?」

 ナディアは不敵な笑みを浮かべる。

「お姉さんの本気、見せてあげるわ!」



 ナディアは、懐から呪符を取り出すと地面に置き、片膝を付いて両手を地面に当て、召喚魔法を唱える。

Я(ヤー・)  приказываю(プリカーズ・)  своему(ヴーズ・) слуге(ズィウス・)  по(ヴィー・)  контракту(コントラクト・)  с землей.(ズウィームリー)
(我、大地との契約に基づき、下僕に命じる!)

Уби(ウー・)райся!(ヴィリャシヤ!) Каменный(カーメレイ・) гигант! !(ギガント!)
(出でよ! 石の巨兵!)

 ナディアの足元と呪符が置かれた地面に大きな魔法陣が現れ、ナディアの頭上にも一定間隔で六つの魔法陣が現れる。

 ナディアは立ち上がると両手を空に向けて上げ、天を仰ぐ。

Скалы,(スカレー・)  камни.(カムニ)   Приди(プリズィー・)  из(イズ・)  мира(ミラ・)  призраков(プリズル・カ・)  и(フィ・) прими(プルミ・)  форму.(フォロモ) По(ポ・)  моей(マイ・ヴィー・)  воле.(ヴォーリャ)
(岩よ、石よ! 幽世より来たりて、形を成せ! 我が意のままに!)

 空中に浮き上がった呪符に地面から浮き出た石や岩が集まり、大きな人形を形作っていく。
 
 やがて集まった石や岩は巨大なストーンゴーレムとなった。

 出来上がったストーンゴーレムは、魔法陣の中で片膝を付いて主であるナディアを注視していた。

 魔法陣の中でナディアは、港の方角を指差す。
 
 ストーンゴーレムはナディアが指差す方向を向く。

 ナディアは、ストーンゴーレムに命令を下す。

Возьми(ヴォズィミー・) нас(ナス) Underway!(アンデロイ!)  Каменный(カーメネイ・)  гигант!!(ギガント!)
(我等を連れ、進め! 石の巨兵よ!)

 ナディアが魔法の詠唱を終えると、魔法陣は光の粉となって空中に消えた。

 ストーンゴーレムは、『承知した』と言わんばかりに両目を一度、大きく赤く輝かせると、ナディアとエルザの二人を右手の掌に乗せて胸の高さに持ち上げ、ティティス港を目指して歩き出した。



 ストーンゴーレムは、ナディアとエルザの二人を手のひらに乗せて胸の高さまで持ち上げると、街の中心部から建物をなぎ倒しながら一直線に港を目指して地響きと共に歩いて行く。

「うわぁあああ!」

「逃げろぉ~!」

 街の中心街に突然、現れた十二メートル級の巨大なストーンゴーレムにカスパニア軍は大混乱に陥り、我先にと一斉に逃げ出し始める。

 エルザは、ストーンゴーレムの手のひらの上から、蜘蛛の子を散らしたように逃げ出すカスパニア兵たちの姿を見下ろして、感心する。

「ナディア、凄いじゃない!」

 ナディアは、エルザに自慢げに語る。

「どう? お姉さんの本気、凄いでしょ?」



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 ナディアとエルザは、街の中心街を歩いていた。
 二人とも、目立たないようにローブを羽織り、フードを目深く被る。
 二人の任務は『街の様子を探る』というだけで、他の仲間たちのように具体的な目標がある訳ではなく、二人は街の中心街を散策していた。
 昼近くなると、それまで静かであったカスパニア軍の動きが急に慌ただしくなる。
 カスパニア軍の部隊が隊列を組んで、街の大通りを塔へ向かって小走りで行進していく。
 市庁舎の周辺の道路は、カスパニア軍による非常線と検問が設置され、民間人は近づけなくなっていた。
 ナディアとエルザは、カスパニア兵達が話している会話に聞き耳を立てる。
「いったい、どうなっているんだ?」
「シロヒゲ将軍が暗殺された! 娼婦と一緒だったらしい!」
「見張り塔が爆破された!」
「街に賊が潜入しているぞ!」
 ナディアは、カスパニア兵の立ち話を盗み聞きするとエルザにそっと耳打ちする。
「……何だか、騒がしくなってきたわね」
「そうね」
「早めに隠れ家に引き上げた方が良さそう」
「そうしましょ」
 隠れ家に引き上げようとした二人の前にカスパニア軍の警ら隊が現れる。
 カスパニア兵の一人が二人に近寄って来て告げる。
「おっと。待ちな。そこの二人」
 ナディアが周囲を見回すと、二人は既にカスパニア軍の警ら隊に囲まれていることに気が付く。
(くっ……十人!? いや、それ以上か?)
 カスパニア兵は続ける。
「お前たち、商人じゃないな? ……顔を見せろ!」
 ナディアは口を開く。
「……エルザ」
「判ったわ」
 ナディアとエルザは、カスパニア兵に言われた通りに被っていたフードを避けて顔を見せ、羽織っていたローブを脱ぐ。
 ナディアとエルザの顔と容姿を見たカスパニア兵たちは口々に感嘆の声を上げ、口笛を吹く者も現れる。
「おぉ!」
「女!?」
「女だ!」
「エルフ!?」
「|獣人《ビーストマン》!?」
「良い女だぜ!」
「どっちも凄い美人だ!」
 カスパニア兵の一人は、下卑た笑みを浮かべながら二人に近付いてきて尋ねる。
「へへへ。姉ちゃんたち、いくらだい?」
 ナディアは、カスパニア兵を見下した薄ら笑みを浮かべながら軽口を叩く。
「私たち、高いわよ?」
 ナディアに続いて、エルザもカスパニア兵に悪態を突く。
「帝国の皇子様なら、ともかく! あなたたちの安給料じゃ無理ね!」
 カスパニア兵は、二人に悪態を突かれても食い下がって来る。
 カスパニア兵たちは、占領した街での略奪で皆、小金を持っていた。
「へへ。つれないなぁ~……ホラ、金額を言ってみな?」
 ナディアは、カスパニア兵を睨みながら悪態を突く。
「残念! 私たちは娼婦じゃなくてよ!」
 ナディアに続き、エルザもカスパニア兵に悪態を突く。
「それに、あなたたちは私のタイプじゃないの!」
 怒ったカスパニア兵たちは、次々と剣を抜いて二人に迫る。
「くっ! 下手に出りゃ、ツケあがりやがって! 腕ずくで|犯《や》ってやる!」
「亜人が! お高くとまりやがって!」
「|輪姦《まわ》して、奴隷商人に売ってやる!」
 ナディアはレイピアを抜いて構えると、傍らのエルザに告げる。
「エルザ、手加減無用よ。本気出しなさい!」
 エルザも両手剣を構えると、ナディアに答える。
「……言われなくても、そのつもり!」
 カスパニア兵が剣で斬り掛かって来たのを合図に、二人は街中でカスパニア軍の警ら隊と剣戟を始める。
「おりゃああああ!」
 エルザは、雄叫びと共に大上段に構えた両手剣を振り下ろし、一撃でカスパニア兵を斬り伏せると、素早く身を翻し、後ろのカスパニア兵の頭部に後ろ回し蹴りを放って蹴り倒す。
 ナディアは、正面のカスパニア兵をレイピアの刺突で仕止めると、召喚魔法を唱える。
「|戦乙女の《ヴァルキリーズ・》|戦槍《ジャベリン》!」
 ナディアの前に三つの光の玉が現れると、それは光の矢に形を変えて真っ直ぐに飛んで行き、カスパニア兵の胸を貫く。
「クソがぁああ!」
 カスパニア兵は、槍を構えてエルザを突いてくる。
 エルザは、身を反らして槍の一撃を躱すと、踏み込んで両手剣を水平に払い、カスパニア兵の首を斬り飛ばす。
 ナディアは、|風の精霊《シルフ》を召喚する。
「|風の精霊《シルフ》たち!」
 ナディアに召喚された|風の精霊《シルフ》たちは、無数の風の刃と化してカスパニア兵たちを切り裂いていく。
 二人は、次々とカスパニア兵たちを倒していくが、街の中心街で大立ち回りで騒ぎが大きくなり、更にカスパニア軍部隊が集まって来る。
 エルザは、ナディアに話し掛ける。
「ナディア! マズいわ! 敵の援軍よ!」
 ナディアは答える。
「まったく! 次から次へ、ゾロゾロと群がって来て! ……カスパニアの男って、そんなに女に飢えているのかしら?」
 エルザは、もう一人のカスパニア兵を斬り伏せるとナディアに話し掛ける。
「恐らくカスパニアには、女がいないんでしょ!?」
 ナディアは、エルザをからかう。
「エルザ、彼らの相手してあげたら? きっと、すごく溜まっているわよ?」
 エルザは、猛烈に拒絶する。
「嫌よ! 触られるのも、犯されるのも! 奴らの汚い手で触られるなんて! ……ううっ、気持ち悪い!」
 エルザは、カスパニア兵たちに犯されている自分の姿を想像をして全身に鳥肌が立つ。
 ナディアは、周囲を見回してエルザに告げる。
「奴ら、たくさん集まって来たわね!」
 エルザも周囲を見回すと、集まって来たカスパニア軍は師団規模になりつつあった。
「ちょっと、凄い数よ! ナディア! どうするの!?」
 ナディアは不敵な笑みを浮かべる。
「お姉さんの本気、見せてあげるわ!」
 ナディアは、懐から呪符を取り出すと地面に置き、片膝を付いて両手を地面に当て、召喚魔法を唱える。
「|Я《ヤー・》  |приказываю《プリカーズ・》  |своему《ヴーズ・》 |слуге《ズィウス・》  |по《ヴィー・》  |контракту 《コントラクト・》  |с землей.《ズウィームリー》」
(我、大地との契約に基づき、下僕に命じる!)
「|Уби《ウー・》|райся!《ヴィリャシヤ!》 |Каменный《カーメレイ・》 |гигант! !《ギガント!》」
(出でよ! 石の巨兵!)
 ナディアの足元と呪符が置かれた地面に大きな魔法陣が現れ、ナディアの頭上にも一定間隔で六つの魔法陣が現れる。
 ナディアは立ち上がると両手を空に向けて上げ、天を仰ぐ。
「|Скалы,《スカレー・》  |камни.《カムニ》   |Приди《プリズィー・》  |из《イズ・》  |мира《ミラ・》  |призраков《プリズル・カ・》  |и《フィ・》 |прими 《プルミ・》  |форму.《フォロモ》 |По 《ポ・》  |моей 《マイ・ヴィー・》  |воле.《ヴォーリャ》」
(岩よ、石よ! 幽世より来たりて、形を成せ! 我が意のままに!)
 空中に浮き上がった呪符に地面から浮き出た石や岩が集まり、大きな人形を形作っていく。
 やがて集まった石や岩は巨大なストーンゴーレムとなった。
 出来上がったストーンゴーレムは、魔法陣の中で片膝を付いて主であるナディアを注視していた。
 魔法陣の中でナディアは、港の方角を指差す。
 ストーンゴーレムはナディアが指差す方向を向く。
 ナディアは、ストーンゴーレムに命令を下す。
「|Возьми《ヴォズィミー・》 |нас《ナス》 |Underway! 《アンデロイ!》  |Каменный《カーメネイ・》  |гигант!!《ギガント!》」
(我等を連れ、進め! 石の巨兵よ!)
 ナディアが魔法の詠唱を終えると、魔法陣は光の粉となって空中に消えた。
 ストーンゴーレムは、『承知した』と言わんばかりに両目を一度、大きく赤く輝かせると、ナディアとエルザの二人を右手の掌に乗せて胸の高さに持ち上げ、ティティス港を目指して歩き出した。
 ストーンゴーレムは、ナディアとエルザの二人を手のひらに乗せて胸の高さまで持ち上げると、街の中心部から建物をなぎ倒しながら一直線に港を目指して地響きと共に歩いて行く。
「うわぁあああ!」
「逃げろぉ~!」
 街の中心街に突然、現れた十二メートル級の巨大なストーンゴーレムにカスパニア軍は大混乱に陥り、我先にと一斉に逃げ出し始める。
 エルザは、ストーンゴーレムの手のひらの上から、蜘蛛の子を散らしたように逃げ出すカスパニア兵たちの姿を見下ろして、感心する。
「ナディア、凄いじゃない!」
 ナディアは、エルザに自慢げに語る。
「どう? お姉さんの本気、凄いでしょ?」