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第百八十三話 空襲、野戦陣地

ー/ー



 アレクたち教導大隊の各小隊の編隊は、ゴズフレズの大空をカスパニア軍の野戦陣地に向かって飛んでいた。

 程なく、アレクの目に平野の広い範囲で土煙が立ち昇っているのが見えてくる。

(あれは……土煙!?)
 
 ルイーゼは叫ぶ。

「アレク! 戦闘よ! ゴズフレズ軍とカスパニア軍が戦闘中!」

 アレクは、ルイーゼからの報告に答える。

「ゴズフレズ軍の陽動作戦だ!」

 教導大隊の編隊は、ゴズフレズ軍とカスパニア軍が戦闘している上空を通過していく。

 ネルトン将軍率いるゴズフレズ軍の斧戦士達は、特徴的な二本角兜を被り、鱗鎧を着込んで両刃の戦斧を手に、三倍以上の兵力のカスパニアの傭兵団へ怯むことなく斬り込んでいき、次々と傭兵たちを両刃の戦斧で斬り伏せていく。

 ゴズフレズ軍の熟練した斧戦士たちは、個体戦力としては傭兵を寄せ集めたカスパニア軍よりもはるかに強力であり、カスパニア軍はゴズフレズ軍の三倍以上の軍勢であったが、ネルトン将軍率いるゴズフレズ軍は一歩も引かず奮戦していた。

 ルイーゼは、怒号と血飛沫の舞う地上の戦闘の様子を見て呟く。

「……凄い」 



 程無くアレクたちの前にカスパニア軍の野戦陣地が見えてくる。

 教導大隊の編隊は、野戦陣地の上空を大きく旋回する。

 広大な野戦陣地の敷地内には、無数の黒い鉄板で覆われた荷台の奴隷輸送車が所狭しと並べられており、カスパニア軍の人狩りに捕らえられたゴズフレズの人々の多さを物語っていた。

 野戦陣地は、周囲を木の柵で囲んでおり、所々に物見櫓が設けられ、野戦陣地の内外を監視しているようであった。

 ナタリーは地上の野戦陣地を見て呟く。

「奴隷輸送車が、こんなにたくさん……」

 アルも口を開く。

「いったい、何台あるんだ……? 凄いな! まるで鉄道車両基地だぜ!」

 アレクは口を開く。

「ルイーゼ、各機へ伝達。『ユニコーン小隊、対地攻撃用意。第一撃は、物見櫓を狙う』」

「了解!」

 ルイーゼは、手旗信号で僚機にアレクからの指示を伝える。

 アルは、ルイーゼの手旗信号を見て、口を開く。

「『物見櫓を狙う』か……。了解! 主砲発射タイミング、隊長機ユニコーン・リーダーに同調!」



 野戦陣地上空を大きく旋回したユニコーン小隊の各機は、地上攻撃に向けて低空飛行に入る。

 アレクは口を開く。

「距離、二千! ……主砲、発射用意!」

 アレクは、飛空艇の主砲の照準を野戦陣地の物見櫓に定める。

 ルイーゼは、右手に持つ手旗を高く掲げる。

 アレクはトリガーを引き、攻撃命令を下す。

「今だ! 撃て!」

 ルイーゼが掲げる手旗が、勢いよく振り下ろされる。

 編隊を組むユニコーン小隊の四機の飛空艇から一斉に主砲が発射され、八発の砲弾が野戦陣地の物見櫓を目指して真っ直ぐに飛んで行く。

 発射された砲弾は物見櫓に二発づつ命中し、轟音と共に四基の物見櫓が次々に爆発する。

 野戦陣地の指揮所の半鐘が激しく鳴らされ、半鐘の金属音と共に叫び声が野戦陣地に響く。

「空襲!」

 しかし、半鐘の金属音も叫び声も、すぐに指揮所の爆発音によって消える。

 ルドルフたち、グリフォン小隊が放った飛空艇の主砲による第二撃であった。

 ユニコーン小隊、グリフォン小隊に続いて、フェンリル小隊が飛空艇の主砲による第三撃を放ち、野戦陣地に設置されている大砲や投石器(カタパルト)固定大弓(バリスタ)を破壊していく。

 続いてセイレーン小隊が第四撃を放ち、木造の倉庫群を破壊していく。

 アレクたちユニコーン小隊が野戦陣地の上空を大きく旋回していると、木造の倉庫群の大爆発と共に大きな黒いきのこ雲が立ち昇り、衝撃波が飛空艇に届く。

 アレクは衝撃波で揺れる機体の姿勢を立て直すと、ルイーゼに尋ねる。

「うおっ!? どうしたんだ?」

 ルイーゼは答える。

「火薬庫が爆発したみたい! 凄い黒煙……」



 カスパニア軍の野戦陣地は、教導大隊の空襲による波状攻撃で大混乱に陥っていた。

 兵士達は次々に叫ぶ。

「なんなんだ一体!?」

「敵襲!」

「敵だと!? どこから!?」

「空だ!」

「空!?」  

 兵士達が空を見上げると、教導大隊の飛空艇が小隊毎に綺麗に編隊を組み、野戦陣地の上空を旋回している様子が見えた。



 アレクたちユニコーン小隊は旋回を終え、再び低空飛行に入る。

 ルイーゼは叫ぶ。

「アレク! どうするの!?」

 アレクは答える。

「奴隷輸送車の車列とカスパニア軍陣屋の間に強行着陸して奴隷輸送車を確保する! 手旗信号を頼む! 『車列と陣屋の間に強行着陸! 奴隷輸送車を確保せよ!』」

「任せて!」

 ルイーゼは手旗信号で僚機に伝える。

 アレクたちユニコーン小隊は、野戦陣地の上空を奴隷輸送車の車列に向かって、超低空飛行に入る。

 ユニコーン小隊は、奴隷輸送車の車列とカスパニア軍陣屋の間に飛空艇を強行着陸させると、飛空艇から飛び降りる。 

 アレクは小隊の仲間たちに向かって叫ぶ。

「みんな、行くぞ!」

 ルイーゼは答える。

「了解!」

 アルは、軽口を叩く。

「いよいよだぜ!」

 ナタリーも口を開く。

「うん!」

 ユニコーン小隊の八人は、カスパニア軍の陣屋に向かって陣形を整え、戦闘態勢を取る。



 カスパニア軍の陣屋のテントから、わらわらとカスパニア軍兵士や傭兵たち、人狩りたちが現れてくる。

 アレクは叫ぶ。

「ナタリー! やれ!」

「了解!」

 アレクの指示を受けたナタリーは、現れたカスパニア軍兵士や傭兵たち、人狩りたちに向けて手をかざし、魔法を唱える。

火炎(フレイム・)爆裂(バースト)!」

 ナタリーの腕からオーラのように湧き出た魔法因子(オド)は、その掌の先に三つの魔法陣を描き、魔法陣から魔法素粒子(マナ)によって造られた爆炎がカスパニア軍に向かって一直線に進み、カスパニア軍を爆炎で包む。

「うぁああああ!」

「ぎゃあああ!」

 ナタリーの魔法で火達磨になった者たちは地面を転がり回る。 

 ドミトリーは強化魔法をアレクたちに掛ける。

筋力(レッサー・)強化(ストレングス)! 装甲(フォース・)強化(アーマー)!」

 アレクは、ゾーリンゲン・ツヴァイハンダーを鞘から抜き、迫り来るカスパニア軍に向けて構える。 



 ルドルフは、飛空艇で空からアレクたちが地上での戦闘開始した様子を見て叫ぶ。

「ユニコーンが地上戦に入った! 我々も地上戦に突入する!」

 ブルクハルトは口を開く。

「了解!」

 ルドルフは続ける。

「手旗信号だ! 『グリフォン小隊全機、強行着陸! グリフォンは、ユニコーンの左翼に展開! フェンリルは、右翼を頼む!』」

 ブルクハルトが手旗信号で僚機に伝えると、グリフォン小隊もユニコーン小隊の隣に強行着陸する。



 程なくフェンリル小隊もアレクたちの隣に強行着陸してくる。

 フェンリル小隊の隊長フレデリクは軽口を叩く。

「どうやら、間に合ったな」

 フレデリクの言葉にエマが頷く。

「はい!」

 ユニコーン、グリフォン、フェンリルの三つの小隊が陣形を整えると、カスパニア軍の陣屋のテントから続々と現れるカスパニア軍の兵士や傭兵たち、人狩りたちが三つの小隊に向かって迫り来る。

 カスパニア軍と教導大隊の死闘が始まろうとしていた。



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 アレクたち教導大隊の各小隊の編隊は、ゴズフレズの大空をカスパニア軍の野戦陣地に向かって飛んでいた。
 程なく、アレクの目に平野の広い範囲で土煙が立ち昇っているのが見えてくる。
(あれは……土煙!?)
 ルイーゼは叫ぶ。
「アレク! 戦闘よ! ゴズフレズ軍とカスパニア軍が戦闘中!」
 アレクは、ルイーゼからの報告に答える。
「ゴズフレズ軍の陽動作戦だ!」
 教導大隊の編隊は、ゴズフレズ軍とカスパニア軍が戦闘している上空を通過していく。
 ネルトン将軍率いるゴズフレズ軍の斧戦士達は、特徴的な二本角兜を被り、鱗鎧を着込んで両刃の戦斧を手に、三倍以上の兵力のカスパニアの傭兵団へ怯むことなく斬り込んでいき、次々と傭兵たちを両刃の戦斧で斬り伏せていく。
 ゴズフレズ軍の熟練した斧戦士たちは、個体戦力としては傭兵を寄せ集めたカスパニア軍よりもはるかに強力であり、カスパニア軍はゴズフレズ軍の三倍以上の軍勢であったが、ネルトン将軍率いるゴズフレズ軍は一歩も引かず奮戦していた。
 ルイーゼは、怒号と血飛沫の舞う地上の戦闘の様子を見て呟く。
「……凄い」 
 程無くアレクたちの前にカスパニア軍の野戦陣地が見えてくる。
 教導大隊の編隊は、野戦陣地の上空を大きく旋回する。
 広大な野戦陣地の敷地内には、無数の黒い鉄板で覆われた荷台の奴隷輸送車が所狭しと並べられており、カスパニア軍の人狩りに捕らえられたゴズフレズの人々の多さを物語っていた。
 野戦陣地は、周囲を木の柵で囲んでおり、所々に物見櫓が設けられ、野戦陣地の内外を監視しているようであった。
 ナタリーは地上の野戦陣地を見て呟く。
「奴隷輸送車が、こんなにたくさん……」
 アルも口を開く。
「いったい、何台あるんだ……? 凄いな! まるで鉄道車両基地だぜ!」
 アレクは口を開く。
「ルイーゼ、各機へ伝達。『ユニコーン小隊、対地攻撃用意。第一撃は、物見櫓を狙う』」
「了解!」
 ルイーゼは、手旗信号で僚機にアレクからの指示を伝える。
 アルは、ルイーゼの手旗信号を見て、口を開く。
「『物見櫓を狙う』か……。了解! 主砲発射タイミング、隊長機ユニコーン・リーダーに同調!」
 野戦陣地上空を大きく旋回したユニコーン小隊の各機は、地上攻撃に向けて低空飛行に入る。
 アレクは口を開く。
「距離、二千! ……主砲、発射用意!」
 アレクは、飛空艇の主砲の照準を野戦陣地の物見櫓に定める。
 ルイーゼは、右手に持つ手旗を高く掲げる。
 アレクはトリガーを引き、攻撃命令を下す。
「今だ! 撃て!」
 ルイーゼが掲げる手旗が、勢いよく振り下ろされる。
 編隊を組むユニコーン小隊の四機の飛空艇から一斉に主砲が発射され、八発の砲弾が野戦陣地の物見櫓を目指して真っ直ぐに飛んで行く。
 発射された砲弾は物見櫓に二発づつ命中し、轟音と共に四基の物見櫓が次々に爆発する。
 野戦陣地の指揮所の半鐘が激しく鳴らされ、半鐘の金属音と共に叫び声が野戦陣地に響く。
「空襲!」
 しかし、半鐘の金属音も叫び声も、すぐに指揮所の爆発音によって消える。
 ルドルフたち、グリフォン小隊が放った飛空艇の主砲による第二撃であった。
 ユニコーン小隊、グリフォン小隊に続いて、フェンリル小隊が飛空艇の主砲による第三撃を放ち、野戦陣地に設置されている大砲や|投石器《カタパルト》や|固定大弓《バリスタ》を破壊していく。
 続いてセイレーン小隊が第四撃を放ち、木造の倉庫群を破壊していく。
 アレクたちユニコーン小隊が野戦陣地の上空を大きく旋回していると、木造の倉庫群の大爆発と共に大きな黒いきのこ雲が立ち昇り、衝撃波が飛空艇に届く。
 アレクは衝撃波で揺れる機体の姿勢を立て直すと、ルイーゼに尋ねる。
「うおっ!? どうしたんだ?」
 ルイーゼは答える。
「火薬庫が爆発したみたい! 凄い黒煙……」
 カスパニア軍の野戦陣地は、教導大隊の空襲による波状攻撃で大混乱に陥っていた。
 兵士達は次々に叫ぶ。
「なんなんだ一体!?」
「敵襲!」
「敵だと!? どこから!?」
「空だ!」
「空!?」  
 兵士達が空を見上げると、教導大隊の飛空艇が小隊毎に綺麗に編隊を組み、野戦陣地の上空を旋回している様子が見えた。
 アレクたちユニコーン小隊は旋回を終え、再び低空飛行に入る。
 ルイーゼは叫ぶ。
「アレク! どうするの!?」
 アレクは答える。
「奴隷輸送車の車列とカスパニア軍陣屋の間に強行着陸して奴隷輸送車を確保する! 手旗信号を頼む! 『車列と陣屋の間に強行着陸! 奴隷輸送車を確保せよ!』」
「任せて!」
 ルイーゼは手旗信号で僚機に伝える。
 アレクたちユニコーン小隊は、野戦陣地の上空を奴隷輸送車の車列に向かって、超低空飛行に入る。
 ユニコーン小隊は、奴隷輸送車の車列とカスパニア軍陣屋の間に飛空艇を強行着陸させると、飛空艇から飛び降りる。 
 アレクは小隊の仲間たちに向かって叫ぶ。
「みんな、行くぞ!」
 ルイーゼは答える。
「了解!」
 アルは、軽口を叩く。
「いよいよだぜ!」
 ナタリーも口を開く。
「うん!」
 ユニコーン小隊の八人は、カスパニア軍の陣屋に向かって陣形を整え、戦闘態勢を取る。
 カスパニア軍の陣屋のテントから、わらわらとカスパニア軍兵士や傭兵たち、人狩りたちが現れてくる。
 アレクは叫ぶ。
「ナタリー! やれ!」
「了解!」
 アレクの指示を受けたナタリーは、現れたカスパニア軍兵士や傭兵たち、人狩りたちに向けて手をかざし、魔法を唱える。
「|火炎《フレイム・》|爆裂《バースト》!」
 ナタリーの腕からオーラのように湧き出た|魔法因子《オド》は、その掌の先に三つの魔法陣を描き、魔法陣から|魔法素粒子《マナ》によって造られた爆炎がカスパニア軍に向かって一直線に進み、カスパニア軍を爆炎で包む。
「うぁああああ!」
「ぎゃあああ!」
 ナタリーの魔法で火達磨になった者たちは地面を転がり回る。 
 ドミトリーは強化魔法をアレクたちに掛ける。
「|筋力《レッサー・》|強化《ストレングス》! |装甲《フォース・》|強化《アーマー》!」
 アレクは、ゾーリンゲン・ツヴァイハンダーを鞘から抜き、迫り来るカスパニア軍に向けて構える。 
 ルドルフは、飛空艇で空からアレクたちが地上での戦闘開始した様子を見て叫ぶ。
「ユニコーンが地上戦に入った! 我々も地上戦に突入する!」
 ブルクハルトは口を開く。
「了解!」
 ルドルフは続ける。
「手旗信号だ! 『グリフォン小隊全機、強行着陸! グリフォンは、ユニコーンの左翼に展開! フェンリルは、右翼を頼む!』」
 ブルクハルトが手旗信号で僚機に伝えると、グリフォン小隊もユニコーン小隊の隣に強行着陸する。
 程なくフェンリル小隊もアレクたちの隣に強行着陸してくる。
 フェンリル小隊の隊長フレデリクは軽口を叩く。
「どうやら、間に合ったな」
 フレデリクの言葉にエマが頷く。
「はい!」
 ユニコーン、グリフォン、フェンリルの三つの小隊が陣形を整えると、カスパニア軍の陣屋のテントから続々と現れるカスパニア軍の兵士や傭兵たち、人狩りたちが三つの小隊に向かって迫り来る。
 カスパニア軍と教導大隊の死闘が始まろうとしていた。