第百七十五話 人狩り
ー/ー--三時間後。
アレクたち、教導大隊を乗せた飛行空母ユニコーン・ゼロは、カスパニア軍に占領されたゴズフレズ王国北西部の都市ティティスに向けて航行していた。
アレクが自室で休んでいると、貴族組と平民組を合わせた一学年の八個小隊に呼集が掛かり、アレクたちは武装して格納庫に集まる。
格納庫では、ジカイラとヒナがアレクたちが集合するのを待っており、全員が集まると、ジカイラは口を開く。
「傾注せよ! ここに居る一学年の八個小隊の任務は、『強行偵察』だ! 飛空艇による航空偵察を行う! 小隊毎に別れ、担当する地域を偵察すること! 小隊長は、自分の小隊の担当地域を地図で確認するように!」
傍らのヒナがゴズフレズ王国北西部の地図を掲示板に貼り出す。
ジカイラは、地図を指し示しながら説明を続ける。
「現時点では、敵軍は三個師団規模、約三万人ほどと見られている。敵の勢力範囲や宿営地、兵站施設、補給基地などの正確な位置は、ほぼ不明だ! 各員、可能な限り情報を集めろ! 各機のナビゲーターは、担当地域の偵察で確認したことを記録! 各小隊は、日没迄に飛行空母に帰投すること! 以上だ!」
アルはアレクに尋ねる。
「なぁ……、『強行偵察』って事は、『敵との戦闘も含む』って事だよな?」
アレクは答える。
「うん。遭遇戦といった交戦も含まれる」
ルイーゼは地図を指でなぞりながら、二人に話し掛ける。
「……敵の補給基地や戦力がはっきりするまで、できる限り戦闘は避けたいわね」
ドミトリーも口を開く。
「だが、敵の占領地域に踏み込めば、否応無しに戦闘になるだろう」
トゥルムもドミトリーに追従する。
「確かに。戦闘は、想定しておくべきだな」
アルは口を開く。
「ちょっと待て! 『一学年八個小隊』って事は、貴族組も一緒か!?」
アレクは答える。
「……そうなるね」
アルは嫌そうに呟く。
「げげっ! バジリスクの、あのオカッパ頭と一緒に強硬偵察するのかよ!? ……ナディア、オカッパ頭に後ろから撃たれないようにしろよ?」
アルの言う『オカッパ頭』とは、貴族組バジリスク小隊のキャスパー・ヨーイチ三世男爵の事であった。
アルの言葉にナディアは、鼻で笑って答える。
「フン! もし、アイツが後ろから撃ってきたら、今度こそ『割礼』して、余っている皮を切り落としてやるわ!」
エルザもナディアに続く。
「そうよ! 私もナディアと一緒にアイツを割礼して、包茎を治してあげるんだから!」
アルは、二人の言葉に呆れたように答える。
「……それって、どうなんだ? アイツの包茎を治してやったら、むしろ、アイツは喜ぶんじゃないのか?」
アルからの問いに二人はプィッと横を向いて答える。
「さぁね」
「知らない!」
ルイーゼは笑いを堪えながら三人に告げる。
「オカッパ頭の彼。この前はナディアに割礼されそうになって、お漏らししていたわよ。よっぽど、ナディアが怖かったんじゃない?」
アレクは口を開く。
「奴は『お漏らしキャスパー』って呼ばれているんだから。みんな、あんまり弱い者を苛めるなよ?」
アルは呆れたように答える。
「アイツは、弱っちいクセに威張り散らしているから、叩かれるんだろう? ……オレは、あんまり関わりたくないけどな」
アレクは皆に声を掛ける。
「さて。みんな、そろそろ出撃の時間だ。飛空艇に乗り込め!」
「了解!」
アレクの指示でユニコーン小隊の面々は、飛空艇に乗り込んでいく。
アレクは、小隊全員が飛空艇に乗り込んだ事を確認すると整備員に告げる。
「ユニコーン小隊、出撃します!」
「了解!」
整備員は、同僚と共にアレクたちが乗る四機の飛空艇をエレベーターに押して乗せると、同僚の整備員に向かって叫ぶ。
「ユニコーンが出る! エレベーターを上げろ!」
整備員が動力を切り替えると、飛行甲板に向けてアレクたちが搭乗する四機の飛空艇は、エレベーターで上昇していく。
程なく、アレクたちが搭乗する四機の飛空艇は、飛行甲板に出る。
上空の冷たい風がアレクの顔を撫でる。
アレクは、伝声管でルイーゼに告げる。
「行くよ。ルイーゼ」
「うん」
「発動機始動!」
アレクは、掛け声と共に 魔導発動機の起動ボタンを押す。
魔導発動機の音が飛行甲板に響く。
ルイーゼはアレクに続く。
「飛行前点検、開始!」
ルイーゼは掛け声の後、スイッチを操作して機能を確認する。
「発動機、航法計器、浮遊水晶、降着装置、昇降舵、全て異常無し!」
ルイーゼからの報告を受け、アレクは浮遊水晶に魔力を加えるバルブを開く。
「ユニコーン・リーダー、離陸!」
アレクの声の後、大きな団扇を扇いだような音と共に機体が浮かび上がる。
「発進!」
アレクは、クラッチをゆっくりと繋ぎ、スロットルを開ける。
プロペラの回転数が上がり、風切り音が大きくなると、アレクとルイーゼの乗る機体ユニコーン・リーダーは、加速しながら飛行甲板の上を進む。
やがて飛行甲板の終わりまでくると、二人の乗るユニコーン・リーダーは大空へと舞い上がった。
二人の乗るユニコーン・リーダーは飛行空母の上を旋回して、小隊の仲間が離陸してくるのを待つ。
直ぐにアルとナタリーが乗るユニコーン二号機が飛行空母を発進し、上昇してくる。
続いて、ドミトリーとナディアが乗るユニコーン三号機とエルザとトゥルムが乗るユニコーン四号機が飛行空母から発進して上昇してくる。
四機全てが揃ったユニコーン小隊は、自分達が偵察を担当する地域を目指して、編隊を組んで向かった。
半時程でアレクたちユニコーン小隊は、偵察を担当する目標地域に到達する。
ルイーゼは地図を確認して、アレクに報告する。
「アレク、作戦地域に到達!」
「了解! これより作戦行動に移る! ルイーゼ、僚機に手旗信号で伝達! 『作戦開始』!」
「了解!」
ルイーゼが手旗信号で偵察任務の開始を各機に伝えると、小隊の各機はアレクたちのユニコーン・リーダーに続いて低空飛行に移った。
アレクは口を開く。
「高度一〇〇、目標高度に到達。これより偵察を開始する!」
「了解!」
アレクたちは一定間隔で編隊を組み、低空飛行で地上の様子を偵察する。
ユニコーン小隊が進路を北西に向けたところで、ルイーゼは叫ぶ。
「アレク、集落があるわ!」
アレクがルイーゼが指で指す方向を見ると、開拓村のような集落があった。
村は、その周囲を木の塀で囲っており、所々から黒煙が昇っていた。
少し間を空けて、武装している集団が村の外の木の塀の影から現れる。
アレクは口を開く。
「何かあったな!? 村の上空を旋回しよう!」
「了解!」
ルイーゼは、村の上空を旋回する事を手旗信号とハンドサインで僚機に伝える。
飛空艇で村の上空を旋回しながら、村の建物から立ち上る黒煙と、現れた武装している集団を見てアレクは訝しむ。
(野盗? ……何だ!? あれは?)
アレクの視界に武装している集団の荷馬車の車列が見えてくる。
四頭の牛に曳かせた黒い鉄製の箱型の荷台の荷馬車が、列を作って村の入り口に数台並んでいた。
黒い鉄製の箱型の荷台の上は櫓のようになっており、弓を持った男が二人いた。
荷台には窓があり、窓には鉄格子が付いていて、捕まったであろう村人達が鉄鎖に繋がれ、荷台に乗せられていた。
アレクは、その荷馬車について、以前、ジカイラとの話の中で小耳に挟んだことがあった。
(まさか!? 奴隷輸送車だ!)
アレクは叫ぶ。
「ルイーゼ! 武装した奴らは『人狩り』だ! あいつら、村を襲っているんだ!」
「ええっ!?」
武装した集団『人狩り』は、村の入り口から中に押し入り、村人達や建物を襲っていた。
アレクは口を開く。
「ルイーゼ! 助けよう!」
「了解!」
ルイーゼは、『人狩り』から村人達を助ける事を手旗信号とハンドサインで僚機に伝える。
ルイーゼの手旗とハンドサインを見たアルは口を開く。
「『我、人狩りから村人を救出する。全機、突入。我に続け!』 良いぞ、アレク! 剣闘士の力を見せてやる! 行くよ! ナタリー!」
「了解!」
アレクたちユニコーン小隊は急降下し、村の中心の広場に飛空艇を強行着陸させると、小隊は飛空艇から飛び降りて集まり、大通りで村の入り口から押し入って来ている『人狩り』の方角を向いて身構える。
アレクの耳に飛び交う怒号と悲鳴が聞こえてくる。
アレクは、ゾーリンゲン・ツヴァイハンダーを鞘から抜くと、左手で刀身に触れながら心の中で呟く。
(父上。力を貸して下さい。……力無き者達を守るために!)
アレクの精神状態に反応するように、ゾーリンゲン・ツヴァイハンダーの刀身は、淡い青白い光の輝きを増していく。
意を決したアレクは叫ぶ。
「ナタリー! やれ!」
「了解!」
アレクの指示を受けたナタリーは、村の入り口から押し入って来ている『人狩り』達に向けて手をかざし、魔法を唱える。
「火炎爆裂!」
ナタリーの身体からオーラのようにあふれ出た魔法因子がその掌の先に三つの魔法陣を描くと、三つの魔法陣は魔法素粒子から爆炎を作り出し、人狩りの集団に向かって一直線に進んで行き、人狩りの集団を爆炎で包む。
「ぐぁああああ!」
「ぎゃああああ!」
ナタリーの魔法で火達磨になった人狩り達は地面を転がり回る。
村を襲っている人狩りの集団がアレクたちの存在に気が付き、身構える。
ドミトリーは強化魔法をアレクたちに掛ける。
「筋力強化! 装甲強化!」
再びアレクは叫ぶ。
「ユニコーン小隊、突撃!」
「おおっ!」
アレクたちは、人狩りの集団に向かって突撃していく。
アレクたち、教導大隊を乗せた飛行空母ユニコーン・ゼロは、カスパニア軍に占領されたゴズフレズ王国北西部の都市ティティスに向けて航行していた。
アレクが自室で休んでいると、貴族組と平民組を合わせた一学年の八個小隊に呼集が掛かり、アレクたちは武装して格納庫に集まる。
格納庫では、ジカイラとヒナがアレクたちが集合するのを待っており、全員が集まると、ジカイラは口を開く。
「傾注せよ! ここに居る一学年の八個小隊の任務は、『強行偵察』だ! 飛空艇による航空偵察を行う! 小隊毎に別れ、担当する地域を偵察すること! 小隊長は、自分の小隊の担当地域を地図で確認するように!」
傍らのヒナがゴズフレズ王国北西部の地図を掲示板に貼り出す。
ジカイラは、地図を指し示しながら説明を続ける。
「現時点では、敵軍は三個師団規模、約三万人ほどと見られている。敵の勢力範囲や宿営地、兵站施設、補給基地などの正確な位置は、ほぼ不明だ! 各員、可能な限り情報を集めろ! 各機のナビゲーターは、担当地域の偵察で確認したことを記録! 各小隊は、日没迄に飛行空母に帰投すること! 以上だ!」
アルはアレクに尋ねる。
「なぁ……、『強行偵察』って事は、『敵との戦闘も含む』って事だよな?」
アレクは答える。
「うん。遭遇戦といった交戦も含まれる」
ルイーゼは地図を指でなぞりながら、二人に話し掛ける。
「……敵の補給基地や戦力がはっきりするまで、できる限り戦闘は避けたいわね」
ドミトリーも口を開く。
「だが、敵の占領地域に踏み込めば、否応無しに戦闘になるだろう」
トゥルムもドミトリーに追従する。
「確かに。戦闘は、想定しておくべきだな」
アルは口を開く。
「ちょっと待て! 『一学年八個小隊』って事は、貴族組も一緒か!?」
アレクは答える。
「……そうなるね」
アルは嫌そうに呟く。
「げげっ! バジリスクの、あのオカッパ頭と一緒に強硬偵察するのかよ!? ……ナディア、オカッパ頭に後ろから撃たれないようにしろよ?」
アルの言う『オカッパ頭』とは、貴族組バジリスク小隊のキャスパー・ヨーイチ三世男爵の事であった。
アルの言葉にナディアは、鼻で笑って答える。
「フン! もし、アイツが後ろから撃ってきたら、今度こそ『割礼』して、余っている皮を切り落としてやるわ!」
エルザもナディアに続く。
「そうよ! 私もナディアと一緒にアイツを割礼して、包茎を治してあげるんだから!」
アルは、二人の言葉に呆れたように答える。
「……それって、どうなんだ? アイツの包茎を治してやったら、むしろ、アイツは喜ぶんじゃないのか?」
アルからの問いに二人はプィッと横を向いて答える。
「さぁね」
「知らない!」
ルイーゼは笑いを堪えながら三人に告げる。
「オカッパ頭の彼。この前はナディアに割礼されそうになって、お漏らししていたわよ。よっぽど、ナディアが怖かったんじゃない?」
アレクは口を開く。
「奴は『お漏らしキャスパー』って呼ばれているんだから。みんな、あんまり弱い者を苛めるなよ?」
アルは呆れたように答える。
「アイツは、弱っちいクセに威張り散らしているから、叩かれるんだろう? ……オレは、あんまり関わりたくないけどな」
アレクは皆に声を掛ける。
「さて。みんな、そろそろ出撃の時間だ。飛空艇に乗り込め!」
「了解!」
アレクの指示でユニコーン小隊の面々は、飛空艇に乗り込んでいく。
アレクは、小隊全員が飛空艇に乗り込んだ事を確認すると整備員に告げる。
「ユニコーン小隊、出撃します!」
「了解!」
整備員は、同僚と共にアレクたちが乗る四機の飛空艇をエレベーターに押して乗せると、同僚の整備員に向かって叫ぶ。
「ユニコーンが出る! エレベーターを上げろ!」
整備員が動力を切り替えると、飛行甲板に向けてアレクたちが搭乗する四機の飛空艇は、エレベーターで上昇していく。
程なく、アレクたちが搭乗する四機の飛空艇は、飛行甲板に出る。
上空の冷たい風がアレクの顔を撫でる。
アレクは、伝声管でルイーゼに告げる。
「行くよ。ルイーゼ」
「うん」
「発動機始動!」
アレクは、掛け声と共に 魔導発動機の起動ボタンを押す。
魔導発動機の音が飛行甲板に響く。
ルイーゼはアレクに続く。
「飛行前点検、開始!」
ルイーゼは掛け声の後、スイッチを操作して機能を確認する。
「発動機、航法計器、浮遊水晶、降着装置、昇降舵、全て異常無し!」
ルイーゼからの報告を受け、アレクは浮遊水晶に魔力を加えるバルブを開く。
「ユニコーン・リーダー、離陸!」
アレクの声の後、大きな団扇を扇いだような音と共に機体が浮かび上がる。
「発進!」
アレクは、クラッチをゆっくりと繋ぎ、スロットルを開ける。
プロペラの回転数が上がり、風切り音が大きくなると、アレクとルイーゼの乗る機体ユニコーン・リーダーは、加速しながら飛行甲板の上を進む。
やがて飛行甲板の終わりまでくると、二人の乗るユニコーン・リーダーは大空へと舞い上がった。
二人の乗るユニコーン・リーダーは飛行空母の上を旋回して、小隊の仲間が離陸してくるのを待つ。
直ぐにアルとナタリーが乗るユニコーン二号機が飛行空母を発進し、上昇してくる。
続いて、ドミトリーとナディアが乗るユニコーン三号機とエルザとトゥルムが乗るユニコーン四号機が飛行空母から発進して上昇してくる。
四機全てが揃ったユニコーン小隊は、自分達が偵察を担当する地域を目指して、編隊を組んで向かった。
半時程でアレクたちユニコーン小隊は、偵察を担当する目標地域に到達する。
ルイーゼは地図を確認して、アレクに報告する。
「アレク、作戦地域に到達!」
「了解! これより作戦行動に移る! ルイーゼ、僚機に手旗信号で伝達! 『作戦開始』!」
「了解!」
ルイーゼが手旗信号で偵察任務の開始を各機に伝えると、小隊の各機はアレクたちのユニコーン・リーダーに続いて低空飛行に移った。
アレクは口を開く。
「高度一〇〇、目標高度に到達。これより偵察を開始する!」
「了解!」
アレクたちは一定間隔で編隊を組み、低空飛行で地上の様子を偵察する。
ユニコーン小隊が進路を北西に向けたところで、ルイーゼは叫ぶ。
「アレク、集落があるわ!」
アレクがルイーゼが指で指す方向を見ると、開拓村のような集落があった。
村は、その周囲を木の塀で囲っており、所々から黒煙が昇っていた。
少し間を空けて、武装している集団が村の外の木の塀の影から現れる。
アレクは口を開く。
「何かあったな!? 村の上空を旋回しよう!」
「了解!」
ルイーゼは、村の上空を旋回する事を手旗信号とハンドサインで僚機に伝える。
飛空艇で村の上空を旋回しながら、村の建物から立ち上る黒煙と、現れた武装している集団を見てアレクは訝しむ。
(野盗? ……何だ!? あれは?)
アレクの視界に武装している集団の荷馬車の車列が見えてくる。
四頭の牛に曳かせた黒い鉄製の箱型の荷台の荷馬車が、列を作って村の入り口に数台並んでいた。
黒い鉄製の箱型の荷台の上は櫓のようになっており、弓を持った男が二人いた。
荷台には窓があり、窓には鉄格子が付いていて、捕まったであろう村人達が鉄鎖に繋がれ、荷台に乗せられていた。
アレクは、その荷馬車について、以前、ジカイラとの話の中で小耳に挟んだことがあった。
(まさか!? 奴隷輸送車だ!)
アレクは叫ぶ。
「ルイーゼ! 武装した奴らは『人狩り』だ! あいつら、村を襲っているんだ!」
「ええっ!?」
武装した集団『人狩り』は、村の入り口から中に押し入り、村人達や建物を襲っていた。
アレクは口を開く。
「ルイーゼ! 助けよう!」
「了解!」
ルイーゼは、『人狩り』から村人達を助ける事を手旗信号とハンドサインで僚機に伝える。
ルイーゼの手旗とハンドサインを見たアルは口を開く。
「『我、人狩りから村人を救出する。全機、突入。我に続け!』 良いぞ、アレク! 剣闘士の力を見せてやる! 行くよ! ナタリー!」
「了解!」
アレクたちユニコーン小隊は急降下し、村の中心の広場に飛空艇を強行着陸させると、小隊は飛空艇から飛び降りて集まり、大通りで村の入り口から押し入って来ている『人狩り』の方角を向いて身構える。
アレクの耳に飛び交う怒号と悲鳴が聞こえてくる。
アレクは、ゾーリンゲン・ツヴァイハンダーを鞘から抜くと、左手で刀身に触れながら心の中で呟く。
(父上。力を貸して下さい。……力無き者達を守るために!)
アレクの精神状態に反応するように、ゾーリンゲン・ツヴァイハンダーの刀身は、淡い青白い光の輝きを増していく。
意を決したアレクは叫ぶ。
「ナタリー! やれ!」
「了解!」
アレクの指示を受けたナタリーは、村の入り口から押し入って来ている『人狩り』達に向けて手をかざし、魔法を唱える。
「火炎爆裂!」
ナタリーの身体からオーラのようにあふれ出た魔法因子がその掌の先に三つの魔法陣を描くと、三つの魔法陣は魔法素粒子から爆炎を作り出し、人狩りの集団に向かって一直線に進んで行き、人狩りの集団を爆炎で包む。
「ぐぁああああ!」
「ぎゃああああ!」
ナタリーの魔法で火達磨になった人狩り達は地面を転がり回る。
村を襲っている人狩りの集団がアレクたちの存在に気が付き、身構える。
ドミトリーは強化魔法をアレクたちに掛ける。
「筋力強化! 装甲強化!」
再びアレクは叫ぶ。
「ユニコーン小隊、突撃!」
「おおっ!」
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ジカイラは、地図を指し示しながら説明を続ける。
「現時点では、敵軍は三個師団規模、約三万人ほどと見られている。敵の勢力範囲や宿営地、兵站施設、補給基地などの正確な位置は、ほぼ不明だ! 各員、可能な限り情報を集めろ! 各機のナビゲーターは、担当地域の偵察で確認したことを記録! 各小隊は、日没迄に飛行空母に帰投すること! 以上だ!」
アルはアレクに尋ねる。
「なぁ……、『強行偵察』って事は、『敵との戦闘も含む』って事だよな?」
アレクは答える。
「うん。遭遇戦といった交戦も含まれる」
ルイーゼは地図を指でなぞりながら、二人に話し掛ける。
「……敵の補給基地や戦力がはっきりするまで、できる限り戦闘は避けたいわね」
ドミトリーも口を開く。
「だが、敵の占領地域に踏み込めば、否応無しに戦闘になるだろう」
トゥルムもドミトリーに追従する。
「確かに。戦闘は、想定しておくべきだな」
アルは口を開く。
「ちょっと待て! 『一学年八個小隊』って事は、貴族組も一緒か!?」
アレクは答える。
「……そうなるね」
アルは嫌そうに呟く。
「げげっ! バジリスクの、あのオカッパ頭と一緒に強硬偵察するのかよ!? ……ナディア、オカッパ頭に後ろから撃たれないようにしろよ?」
アルの言う『オカッパ頭』とは、貴族組バジリスク小隊のキャスパー・ヨーイチ三世男爵の事であった。
アルの言葉にナディアは、鼻で笑って答える。
「フン! もし、アイツが後ろから撃ってきたら、今度こそ『割礼』して、余っている皮を切り落としてやるわ!」
エルザもナディアに続く。
「そうよ! 私もナディアと一緒にアイツを割礼して、包茎を治してあげるんだから!」
アルは、二人の言葉に呆れたように答える。
「……それって、どうなんだ? アイツの包茎を治してやったら、むしろ、アイツは喜ぶんじゃないのか?」
アルからの問いに二人はプィッと横を向いて答える。
「さぁね」
「知らない!」
ルイーゼは笑いを堪えながら三人に告げる。
「オカッパ頭の彼。この前はナディアに割礼されそうになって、お漏らししていたわよ。よっぽど、ナディアが怖かったんじゃない?」
アレクは口を開く。
「奴は『お漏らしキャスパー』って呼ばれているんだから。みんな、あんまり弱い者を苛めるなよ?」
アルは呆れたように答える。
「アイツは、弱っちいクセに威張り散らしているから、叩かれるんだろう? ……オレは、あんまり関わりたくないけどな」
アレクは皆に声を掛ける。
「さて。みんな、そろそろ出撃の時間だ。飛空艇に乗り込め!」
「了解!」
アレクの指示でユニコーン小隊の面々は、飛空艇に乗り込んでいく。
アレクは、小隊全員が飛空艇に乗り込んだ事を確認すると整備員に告げる。
「ユニコーン小隊、出撃します!」
「了解!」
整備員は、同僚と共にアレクたちが乗る四機の飛空艇をエレベーターに押して乗せると、同僚の整備員に向かって叫ぶ。
「ユニコーンが出る! エレベーターを上げろ!」
整備員が動力を切り替えると、飛行甲板に向けてアレクたちが搭乗する四機の飛空艇は、エレベーターで上昇していく。
程なく、アレクたちが搭乗する四機の飛空艇は、飛行甲板に出る。
上空の冷たい風がアレクの顔を撫でる。
アレクは、伝声管でルイーゼに告げる。
「行くよ。ルイーゼ」
「うん」
「|発動機始動《モータリングスタート》!」
アレクは、掛け声と共に |魔導発動機《エンジン》の起動ボタンを押す。
|魔導発動機《エンジン》の音が飛行甲板に響く。
ルイーゼはアレクに続く。
「|飛行前点検《プリフライトチェック》、|開始《スタート》!」
ルイーゼは掛け声の後、スイッチを操作して機能を確認する。
「|発動機《エンジン》、|航法計器《エアーデータ》、|浮遊水晶《クリスタル》、|降着装置《ギア》、|昇降舵《フラップ》、|全て異常無し《オールグリーン》!」
ルイーゼからの報告を受け、アレクは|浮遊《フローティング》|水晶《クリスタル》に魔力を加えるバルブを開く。
「ユニコーン・リーダー、|離陸《テイクオフ》!」
アレクの声の後、大きな|団扇《うちわ》を扇いだような音と共に機体が浮かび上がる。
「|発進《ゴー》!」
アレクは、クラッチをゆっくりと繋ぎ、スロットルを開ける。
プロペラの回転数が上がり、風切り音が大きくなると、アレクとルイーゼの乗る機体ユニコーン・リーダーは、加速しながら飛行甲板の上を進む。
やがて飛行甲板の終わりまでくると、二人の乗るユニコーン・リーダーは大空へと舞い上がった。
二人の乗るユニコーン・リーダーは飛行空母の上を旋回して、小隊の仲間が離陸してくるのを待つ。
直ぐにアルとナタリーが乗るユニコーン二号機が飛行空母を発進し、上昇してくる。
続いて、ドミトリーとナディアが乗るユニコーン三号機とエルザとトゥルムが乗るユニコーン四号機が飛行空母から発進して上昇してくる。
四機全てが揃ったユニコーン小隊は、自分達が偵察を担当する地域を目指して、編隊を組んで向かった。
半時程でアレクたちユニコーン小隊は、偵察を担当する目標地域に到達する。
ルイーゼは地図を確認して、アレクに報告する。
「アレク、作戦地域に到達!」
「了解! これより作戦行動に移る! ルイーゼ、僚機に手旗信号で伝達! 『作戦開始』!」
「了解!」
ルイーゼが手旗信号で偵察任務の開始を各機に伝えると、小隊の各機はアレクたちのユニコーン・リーダーに続いて低空飛行に移った。
アレクは口を開く。
「高度一〇〇、目標高度に到達。これより偵察を開始する!」
「了解!」
アレクたちは一定間隔で編隊を組み、低空飛行で地上の様子を偵察する。
ユニコーン小隊が進路を北西に向けたところで、ルイーゼは叫ぶ。
「アレク、集落があるわ!」
アレクがルイーゼが指で指す方向を見ると、開拓村のような集落があった。
村は、その周囲を木の塀で囲っており、所々から黒煙が昇っていた。
少し間を空けて、武装している集団が村の外の木の塀の影から現れる。
アレクは口を開く。
「何かあったな!? 村の上空を旋回しよう!」
「了解!」
ルイーゼは、村の上空を旋回する事を手旗信号とハンドサインで僚機に伝える。
飛空艇で村の上空を旋回しながら、村の建物から立ち上る黒煙と、現れた武装している集団を見てアレクは訝しむ。
(野盗? ……何だ!? あれは?)
アレクの視界に武装している集団の荷馬車の車列が見えてくる。
四頭の牛に曳かせた黒い鉄製の箱型の荷台の荷馬車が、列を作って村の入り口に数台並んでいた。
黒い鉄製の箱型の荷台の上は櫓のようになっており、弓を持った男が二人いた。
荷台には窓があり、窓には鉄格子が付いていて、捕まったであろう村人達が鉄鎖に繋がれ、荷台に乗せられていた。
アレクは、その荷馬車について、以前、ジカイラとの話の中で小耳に挟んだことがあった。
(まさか!? 奴隷輸送車だ!)
アレクは叫ぶ。
「ルイーゼ! 武装した奴らは『人狩り』だ! あいつら、村を襲っているんだ!」
「ええっ!?」
武装した集団『人狩り』は、村の入り口から中に押し入り、村人達や建物を襲っていた。
アレクは口を開く。
「ルイーゼ! 助けよう!」
「了解!」
ルイーゼは、『人狩り』から村人達を助ける事を手旗信号とハンドサインで僚機に伝える。
ルイーゼの手旗とハンドサインを見たアルは口を開く。
「『我、人狩りから村人を救出する。全機、突入。我に続け!』 良いぞ、アレク! |剣闘士《グラディエーター》の力を見せてやる! 行くよ! ナタリー!」
「了解!」
アレクたちユニコーン小隊は急降下し、村の中心の広場に飛空艇を強行着陸させると、小隊は飛空艇から飛び降りて集まり、大通りで村の入り口から押し入って来ている『人狩り』の方角を向いて身構える。
アレクの耳に飛び交う怒号と悲鳴が聞こえてくる。
アレクは、ゾーリンゲン・ツヴァイハンダーを鞘から抜くと、左手で刀身に触れながら心の中で呟く。
(父上。力を貸して下さい。……力無き者達を守るために!)
アレクの精神状態に反応するように、ゾーリンゲン・ツヴァイハンダーの刀身は、淡い青白い光の輝きを増していく。
意を決したアレクは叫ぶ。
「ナタリー! やれ!」
「了解!」
アレクの指示を受けたナタリーは、村の入り口から押し入って来ている『人狩り』達に向けて手をかざし、魔法を唱える。
「|火炎《フレイム・》|爆裂《バースト》!」
ナタリーの身体からオーラのようにあふれ出た|魔法因子《オド》がその掌の先に三つの魔法陣を描くと、三つの魔法陣は|魔法素粒子《マナ》から爆炎を作り出し、人狩りの集団に向かって一直線に進んで行き、人狩りの集団を爆炎で包む。
「ぐぁああああ!」
「ぎゃああああ!」
ナタリーの魔法で火達磨になった人狩り達は地面を転がり回る。
村を襲っている人狩りの集団がアレクたちの存在に気が付き、身構える。
ドミトリーは強化魔法をアレクたちに掛ける。
「|筋力《レッサー・》|強化《ストレングス》! |装甲《フォース・》|強化《アーマー》!」
再びアレクは叫ぶ。
「ユニコーン小隊、突撃!」
「おおっ!」
アレクたちは、人狩りの集団に向かって突撃していく。