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第百七十四話 戦況

ー/ー



 王城に招かれたジカイラたち教導大隊は、城のホールに案内される。

 ホールでは、立食式の食事がテーブルに用意されていた。

 ハロルド王は口を開く。

「バレンシュテットの諸君! ささやかだが一席用意させていただいた! 遠慮なく召し上がって欲しい!」

 早速、エルザとナディアはテーブルに近寄って料理を覗き込む。

 テーブルには、一口大に四角く細切れにされたパンなどの食材や茹でたジャガイモやニンジンなどと、鍋で暖められているチーズが置かれていた。

 エルザはハロルド王に尋ねる。

「ねね。王様。これ……。どうやって、食べるの?」

「この料理は、こうやって食べるのだ」

 ハロルド王は、フォークにパンを一切れ突き刺すと、鍋の溶けているチーズに浸けて口に運び、エルザ達に食べて見せる。

「ふ~ん。そうやって食べるんだ。じゃあ、早速……」

 エルザはハロルド王と同じようにフォークにパンを突き刺すと、鍋のチーズを浸けて食べる。

「んんっ! 美味しい!」

 満面の笑みで喜ぶエルザを見て、ハロルド王は上機嫌に話す。

「だろう? ゴズフレズの名物料理『チーズフォンデュ』だ!」

 エルザの食べる様子を見た他の女の子達や教導大隊の学生達がエルザに続いて食べ始める。

 今度はナディアがハロルド王に尋ねる。

「王様、こっちの料理は?」

「こっちの料理は、まず、取り皿に茹でたジャガイモを取って、このチーズの塊を火で炙るのだ」

 ハロルド王はチーズの塊を取ると、火で炙り始める。

「それで、火で炙ったところを削ると……」

 ハロルド王がナイフでチーズの炙った所を削ると、チーズの塊の中から溶けたチーズが流れて出てくる。

 ハロルド王は、流れ出てきたチーズを取り皿のジャガイモに掛ける。

「ほら……。こうやって、溶けたチーズを掛けて食べるのだ」

「へぇ~」

 ナディアは、ハロルド王から器を受けとると一切れ口に入れる。

「美味しい!」

「だろう? これもゴズフレズの名物料理『ラクレット』だ!」

 ラクレットを頬張るナディアの笑顔を見た他の学生達も食べ始める。

 アレクとルイーゼもゴズフレズ料理を食べる。

 シンプルで素朴な味わいの料理に二人とも笑顔を浮かべる。

 エルザとナディアに名物料理を紹介したハロルド王は、ジカイラのところに歩いてくる。

「豊かなバレンシュテット帝国の諸君に『ゴズフレズの料理など口に合わないのではないか』と心配したが、どうやら気に入って貰えたようだ」   

「お心遣い、痛み入ります」

 ジカイラはハロルド王にお礼を言う。

 

 
 肥沃な穀倉地帯を持つバレンシュテット帝国と、土地の痩せた低地のゴズフレズ王国では、食糧事情が異なっており、ゴズフレズで酪農や畜産が盛んなのには理由があった。 

 穀物の単位面積当たりの収穫を比べると、竜王山脈の南側であるバレンシュテット帝国を『40』としたら、竜王山脈の北側であるゴズフレズ王国は『3』しか収穫できなかった。

 不足する穀物を補うため、ゴズフレズといった竜王山脈の北側では、ジャガイモの栽培や酪農、畜産が行われていた。


 
 ジカイラはハロルド王に尋ねる。

「食事が終わったら、我々は前線に向かいたいのですが」

 ハロルド王は申し訳なさそうに答える。

「遺憾ながら余は所要があり、ここに留まらなければならぬ。前線までネルトンに案内させよう。よろしく頼む」

 そう言ってハロルド王は、ジカイラに頭を下げる。



 ジカイラたち教導大隊は、食事を終えると飛行空母ユニコーン・ゼロに乗り込み、前線へ向かう。

 ジカイラとヒナは、飛行空母ユニコーン・ゼロの会議室にネルトンと小隊長達を集め、地図を広げて軍議を始める。

 ネルトンは戦況を説明し始める。

「現在の戦況を説明致します。カスパニア軍は、我が国と国境を接する南西部、そして西部と北西部の海岸に部隊を上陸させ、三方向から侵略してきています」

 ジカイラは地図を指しながら尋ねる。

「カスパニアは、海軍を使って海から攻めてきているのか?」

 ネルトンは頷き、地図を指で指し示しながら説明を続ける。

「はい。ガレオンの艦隊を擁するカスパニア海軍は強力です。我が国の海軍は、王都の母港がある南岸の海峡と北岸の海峡の二ヵ所を防衛しているだけで、手一杯の状況です」

 ヒナは、ジカイラに尋ねる。

「ガレオンって?」
 
 ジカイラは答える。

「外洋も航行できる、三本から五本のマストと大きな船尾楼を持った大型船さ。お前も港湾自治都市群で見ただろ?」

 ヒナは思い出したように呟く。

「あの大きな船……」

 ネルトンは続ける。

「カスパニアは、我が国の三つの都市……、北部のティティス、中部のブナレス、南部のリベを占領して拠点にしているとの事です。いかがいたしますか?」

 ジカイラは答える。

「簡単さ。教導大隊は敵の補給線が伸びきっている北西部から順に、反時計回りに順番にカスパニア軍を叩く。北西部の上陸軍から叩いて、次に西部の上陸軍、カスパニアの属州と陸続きの南西部は最後だな」

 ネルトンは頷く。

「……なるほど」

 ジカイラはヒナに指示を出す。

「ヒナ。ユニコーン・ゼロを北西部に向けろ」

「判ったわ」

 ヒナはそう答えると、艦橋へ向かう。



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 王城に招かれたジカイラたち教導大隊は、城のホールに案内される。
 ホールでは、立食式の食事がテーブルに用意されていた。
 ハロルド王は口を開く。
「バレンシュテットの諸君! ささやかだが一席用意させていただいた! 遠慮なく召し上がって欲しい!」
 早速、エルザとナディアはテーブルに近寄って料理を覗き込む。
 テーブルには、一口大に四角く細切れにされたパンなどの食材や茹でたジャガイモやニンジンなどと、鍋で暖められているチーズが置かれていた。
 エルザはハロルド王に尋ねる。
「ねね。王様。これ……。どうやって、食べるの?」
「この料理は、こうやって食べるのだ」
 ハロルド王は、フォークにパンを一切れ突き刺すと、鍋の溶けているチーズに浸けて口に運び、エルザ達に食べて見せる。
「ふ~ん。そうやって食べるんだ。じゃあ、早速……」
 エルザはハロルド王と同じようにフォークにパンを突き刺すと、鍋のチーズを浸けて食べる。
「んんっ! 美味しい!」
 満面の笑みで喜ぶエルザを見て、ハロルド王は上機嫌に話す。
「だろう? ゴズフレズの名物料理『チーズフォンデュ』だ!」
 エルザの食べる様子を見た他の女の子達や教導大隊の学生達がエルザに続いて食べ始める。
 今度はナディアがハロルド王に尋ねる。
「王様、こっちの料理は?」
「こっちの料理は、まず、取り皿に茹でたジャガイモを取って、このチーズの塊を火で炙るのだ」
 ハロルド王はチーズの塊を取ると、火で炙り始める。
「それで、火で炙ったところを削ると……」
 ハロルド王がナイフでチーズの炙った所を削ると、チーズの塊の中から溶けたチーズが流れて出てくる。
 ハロルド王は、流れ出てきたチーズを取り皿のジャガイモに掛ける。
「ほら……。こうやって、溶けたチーズを掛けて食べるのだ」
「へぇ~」
 ナディアは、ハロルド王から器を受けとると一切れ口に入れる。
「美味しい!」
「だろう? これもゴズフレズの名物料理『ラクレット』だ!」
 ラクレットを頬張るナディアの笑顔を見た他の学生達も食べ始める。
 アレクとルイーゼもゴズフレズ料理を食べる。
 シンプルで素朴な味わいの料理に二人とも笑顔を浮かべる。
 エルザとナディアに名物料理を紹介したハロルド王は、ジカイラのところに歩いてくる。
「豊かなバレンシュテット帝国の諸君に『ゴズフレズの料理など口に合わないのではないか』と心配したが、どうやら気に入って貰えたようだ」   
「お心遣い、痛み入ります」
 ジカイラはハロルド王にお礼を言う。
 肥沃な穀倉地帯を持つバレンシュテット帝国と、土地の痩せた低地のゴズフレズ王国では、食糧事情が異なっており、ゴズフレズで酪農や畜産が盛んなのには理由があった。 
 穀物の単位面積当たりの収穫を比べると、竜王山脈の南側であるバレンシュテット帝国を『40』としたら、竜王山脈の北側であるゴズフレズ王国は『3』しか収穫できなかった。
 不足する穀物を補うため、ゴズフレズといった竜王山脈の北側では、ジャガイモの栽培や酪農、畜産が行われていた。
 ジカイラはハロルド王に尋ねる。
「食事が終わったら、我々は前線に向かいたいのですが」
 ハロルド王は申し訳なさそうに答える。
「遺憾ながら余は所要があり、ここに留まらなければならぬ。前線までネルトンに案内させよう。よろしく頼む」
 そう言ってハロルド王は、ジカイラに頭を下げる。
 ジカイラたち教導大隊は、食事を終えると飛行空母ユニコーン・ゼロに乗り込み、前線へ向かう。
 ジカイラとヒナは、飛行空母ユニコーン・ゼロの会議室にネルトンと小隊長達を集め、地図を広げて軍議を始める。
 ネルトンは戦況を説明し始める。
「現在の戦況を説明致します。カスパニア軍は、我が国と国境を接する南西部、そして西部と北西部の海岸に部隊を上陸させ、三方向から侵略してきています」
 ジカイラは地図を指しながら尋ねる。
「カスパニアは、海軍を使って海から攻めてきているのか?」
 ネルトンは頷き、地図を指で指し示しながら説明を続ける。
「はい。ガレオンの艦隊を擁するカスパニア海軍は強力です。我が国の海軍は、王都の母港がある南岸の海峡と北岸の海峡の二ヵ所を防衛しているだけで、手一杯の状況です」
 ヒナは、ジカイラに尋ねる。
「ガレオンって?」
 ジカイラは答える。
「外洋も航行できる、三本から五本のマストと大きな船尾楼を持った大型船さ。お前も港湾自治都市群で見ただろ?」
 ヒナは思い出したように呟く。
「あの大きな船……」
 ネルトンは続ける。
「カスパニアは、我が国の三つの都市……、北部のティティス、中部のブナレス、南部のリベを占領して拠点にしているとの事です。いかがいたしますか?」
 ジカイラは答える。
「簡単さ。教導大隊は敵の補給線が伸びきっている北西部から順に、反時計回りに順番にカスパニア軍を叩く。北西部の上陸軍から叩いて、次に西部の上陸軍、カスパニアの属州と陸続きの南西部は最後だな」
 ネルトンは頷く。
「……なるほど」
 ジカイラはヒナに指示を出す。
「ヒナ。ユニコーン・ゼロを北西部に向けろ」
「判ったわ」
 ヒナはそう答えると、艦橋へ向かう。