第百四十九話 決勝戦ユニコーン小隊vsグリフォン小隊
ー/ー--翌、決勝戦当日。
朝。アレクたちは、いつものように食堂に集まり朝食を取っていた。
朝食を食べながら、アルがアレクに話し掛ける。
「アレク。決勝戦は、ルドルフのとこと戦うらしいぞ」
アレクはアルの言葉に驚く。
「決勝戦は、ルドルフたちとか!?」
アルは、考えるように続ける。
「そうらしい。……たしか、アイツもお前と同じ中堅職の騎士だったよな? ……しかもアイツ、結構、強かった気がする」
トゥルムはアルに続く。
「ルドルフは、強いぞ。以前、補給処で、我々とグリフォン小隊でやりあった時も、ルドルフはアレクと互角だった」
ドミトリーも続く。
「中堅職のいないフェンリル小隊より、グリフォン小隊が強いのは、確かだ。……今まで戦った中で、一番の強敵だろう」
エルザが話に混ざって来る。
「何々~? 決勝戦は、ルイーゼの浮気相手のところとなの?」
エルザの冗談にルイーゼは、ギクリとした後、顔を真っ赤にして必死に否定する。
「ちがっ……! 違うわよ! 彼は、そんなのじゃないって!」
ルイーゼとしては、あくまで想い人はアレクであり、ルドルフには、自分と似たような不幸な生い立ちに対する同情しかなかった。
アレクは、ルドルフが事あるごとにルイーゼにちょっかいを出している事は知っていた。
エルザの冗談は、アレク、ルイーゼ、ルドルフの三人の当事者以外に触れて欲しくないところをえぐる冗談であった。
当然、エルザの冗談を聞いたアレクは、面白くない。
アレクは、ムッとした表情をする。
アレクの不機嫌な顔を見たルイーゼは、涙目になって必死にアレクにすがりながら訴える。
「アレク! 私、浮気なんてしてない! エルザの嘘を真に受けないで! お願い!」
ルイーゼがあまりにも必死にアレクに懇願するので、アレクとルイーゼ以外の者は驚き、場の空気が凍り付く。
エルザは、ほんの軽い気持ちでの冗談が、場の空気を一変させ凍り付かせたことに驚いて呟く。
「……ルイーゼ」
ルイーゼの必死の懇願には訳があった。
アスカニアは男尊女卑の世界であるうえ、帝国第二皇子のアレクと、準貴族の騎士爵家生まれのメイドでしかないルイーゼとは、身分の差が天と地ほども開いていた。
ルイーゼがどれほどアレクに恋い焦がれていても、アレクが違う女性を妃にしたいとラインハルトに伝えれば、皇帝であるラインハルトの一声で、その女性がアレクの妃になってしまう。
ルイーゼは、家族同然の幼馴染であり、初恋の人であり、恋い焦がれるアレクと結婚して、自分を育ててくれたナナイと親子になり、三人で『本当の家族』になるために、何としてもアレク自身から直接ラインハルトに「ルイーゼと一緒になりたい」と伝えて貰う必要があった。
アスカニアで「誰を妻にするか」「今夜、誰を抱いて寝るか」を決めるのは、男の側に決定権があった。
女性の不貞、浮気など論外であり、身分によっては『姦通罪』に問われる事例もあった。
ルイーゼの今の幸せである『アレクの傍に居て共に暮らす幸せ』も、『アレクに抱かれ、その腕の中で眠りに就く幸せ』も、近い将来に得られるであろう、『アレクと結婚してナナイと親子になり三人で本当の家族になる幸せ』も、ルイーゼの不貞・浮気となれば、全てが消し飛んでしまう。
『家族から捨てられたくない』『今の幸せを失いたくない』『近い将来に得られるであろう幸せを失いたくない』との想いがルイーゼを必死に駆り立てていた。
ルイーゼは、涙目でキッとエルザを睨み付ける。
エルザは、その迫力にたじろぐ。
ナディアがエルザを責める。
「エルザ。『言って良い冗談』と『悪い冗談』があるわよ」
エルザは、気まずくなってアレクとルイーゼに謝る。
「あの……。アレク、ルイーゼ。……ゴメンね。冗談だから。ホントに……」
エルザの謝罪とルイーゼの必死の懇願に、アレクは機嫌を直す。
アレクは、微笑みながらルイーゼに告げる。
「……判ってるよ。ルイーゼが悪い訳じゃない」
アレクの言葉にルイーゼは安堵する。
安堵したルイーゼの目から大粒の涙が零れ、頬を伝う。
「大丈夫、大丈夫よ。ルイーゼ」
泣き出したルイーゼは、ナタリーに頭を撫でて貰い、慰めて貰っていた。
この一件で、アレクとルイーゼ、ルドルフの三人の関係について、当事者以外であるユニコーン小隊の仲間たちも知るところとなった。
気不味い空気の朝食を終えたアレクたちは、練兵場へ向かう。
練兵場の一角で、ルドルフは母親と会っていた。
ルドルフの母親が告げる。
「いよいよ決勝戦よ。頑張ってね!」
「ああ」
ルドルフの母親は、帝国騎士の装備に身を包むルドルフを眺めて、感慨深げに呟く。
「ルドルフ。立派になって。……貴方の父親が、今の貴方の姿を見たら、きっと喜ぶわ」
「……オレは優勝する。騎士として名を上げて、『至高にして最強の騎士』という、父さんを探すよ。見ていてくれ」
ルドルフは、母親にそう告げると、グリフォン小隊の仲間たちがいる所へ向かって歩き出した。
ルドルフの母親は、その場に佇んで、仲間の元へ歩いて行くルドルフの背中を見送っていた。
ほどなくアレクたちユニコーン小隊とルドルフたちグリフォン小隊の前に案内役の女性が現れ、口を開く。
「決勝試合を行う小隊は、試合会場『障害物』へ移動して下さい!」
ユニコーン小隊とグリフォン小隊は、試合会場『障害物』へ移動すると、それぞれ旗のある本陣の位置に歩いて行く。
決勝戦が始まろうとしていた。
朝。アレクたちは、いつものように食堂に集まり朝食を取っていた。
朝食を食べながら、アルがアレクに話し掛ける。
「アレク。決勝戦は、ルドルフのとこと戦うらしいぞ」
アレクはアルの言葉に驚く。
「決勝戦は、ルドルフたちとか!?」
アルは、考えるように続ける。
「そうらしい。……たしか、アイツもお前と同じ中堅職の騎士だったよな? ……しかもアイツ、結構、強かった気がする」
トゥルムはアルに続く。
「ルドルフは、強いぞ。以前、補給処で、我々とグリフォン小隊でやりあった時も、ルドルフはアレクと互角だった」
ドミトリーも続く。
「中堅職のいないフェンリル小隊より、グリフォン小隊が強いのは、確かだ。……今まで戦った中で、一番の強敵だろう」
エルザが話に混ざって来る。
「何々~? 決勝戦は、ルイーゼの浮気相手のところとなの?」
エルザの冗談にルイーゼは、ギクリとした後、顔を真っ赤にして必死に否定する。
「ちがっ……! 違うわよ! 彼は、そんなのじゃないって!」
ルイーゼとしては、あくまで想い人はアレクであり、ルドルフには、自分と似たような不幸な生い立ちに対する同情しかなかった。
アレクは、ルドルフが事あるごとにルイーゼにちょっかいを出している事は知っていた。
エルザの冗談は、アレク、ルイーゼ、ルドルフの三人の当事者以外に触れて欲しくないところをえぐる冗談であった。
当然、エルザの冗談を聞いたアレクは、面白くない。
アレクは、ムッとした表情をする。
アレクの不機嫌な顔を見たルイーゼは、涙目になって必死にアレクにすがりながら訴える。
「アレク! 私、浮気なんてしてない! エルザの嘘を真に受けないで! お願い!」
ルイーゼがあまりにも必死にアレクに懇願するので、アレクとルイーゼ以外の者は驚き、場の空気が凍り付く。
エルザは、ほんの軽い気持ちでの冗談が、場の空気を一変させ凍り付かせたことに驚いて呟く。
「……ルイーゼ」
ルイーゼの必死の懇願には訳があった。
アスカニアは男尊女卑の世界であるうえ、帝国第二皇子のアレクと、準貴族の騎士爵家生まれのメイドでしかないルイーゼとは、身分の差が天と地ほども開いていた。
ルイーゼがどれほどアレクに恋い焦がれていても、アレクが違う女性を妃にしたいとラインハルトに伝えれば、皇帝であるラインハルトの一声で、その女性がアレクの妃になってしまう。
ルイーゼは、家族同然の幼馴染であり、初恋の人であり、恋い焦がれるアレクと結婚して、自分を育ててくれたナナイと親子になり、三人で『本当の家族』になるために、何としてもアレク自身から直接ラインハルトに「ルイーゼと一緒になりたい」と伝えて貰う必要があった。
アスカニアで「誰を妻にするか」「今夜、誰を抱いて寝るか」を決めるのは、男の側に決定権があった。
女性の不貞、浮気など論外であり、身分によっては『姦通罪』に問われる事例もあった。
ルイーゼの今の幸せである『アレクの傍に居て共に暮らす幸せ』も、『アレクに抱かれ、その腕の中で眠りに就く幸せ』も、近い将来に得られるであろう、『アレクと結婚してナナイと親子になり三人で本当の家族になる幸せ』も、ルイーゼの不貞・浮気となれば、全てが消し飛んでしまう。
『家族から捨てられたくない』『今の幸せを失いたくない』『近い将来に得られるであろう幸せを失いたくない』との想いがルイーゼを必死に駆り立てていた。
ルイーゼは、涙目でキッとエルザを睨み付ける。
エルザは、その迫力にたじろぐ。
ナディアがエルザを責める。
「エルザ。『言って良い冗談』と『悪い冗談』があるわよ」
エルザは、気まずくなってアレクとルイーゼに謝る。
「あの……。アレク、ルイーゼ。……ゴメンね。冗談だから。ホントに……」
エルザの謝罪とルイーゼの必死の懇願に、アレクは機嫌を直す。
アレクは、微笑みながらルイーゼに告げる。
「……判ってるよ。ルイーゼが悪い訳じゃない」
アレクの言葉にルイーゼは安堵する。
安堵したルイーゼの目から大粒の涙が零れ、頬を伝う。
「大丈夫、大丈夫よ。ルイーゼ」
泣き出したルイーゼは、ナタリーに頭を撫でて貰い、慰めて貰っていた。
この一件で、アレクとルイーゼ、ルドルフの三人の関係について、当事者以外であるユニコーン小隊の仲間たちも知るところとなった。
気不味い空気の朝食を終えたアレクたちは、練兵場へ向かう。
練兵場の一角で、ルドルフは母親と会っていた。
ルドルフの母親が告げる。
「いよいよ決勝戦よ。頑張ってね!」
「ああ」
ルドルフの母親は、帝国騎士の装備に身を包むルドルフを眺めて、感慨深げに呟く。
「ルドルフ。立派になって。……貴方の父親が、今の貴方の姿を見たら、きっと喜ぶわ」
「……オレは優勝する。騎士として名を上げて、『至高にして最強の騎士』という、父さんを探すよ。見ていてくれ」
ルドルフは、母親にそう告げると、グリフォン小隊の仲間たちがいる所へ向かって歩き出した。
ルドルフの母親は、その場に佇んで、仲間の元へ歩いて行くルドルフの背中を見送っていた。
ほどなくアレクたちユニコーン小隊とルドルフたちグリフォン小隊の前に案内役の女性が現れ、口を開く。
「決勝試合を行う小隊は、試合会場『障害物』へ移動して下さい!」
ユニコーン小隊とグリフォン小隊は、試合会場『障害物』へ移動すると、それぞれ旗のある本陣の位置に歩いて行く。
決勝戦が始まろうとしていた。
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--翌、決勝戦当日。
朝。アレクたちは、いつものように食堂に集まり朝食を取っていた。
朝食を食べながら、アルがアレクに話し掛ける。
「アレク。決勝戦は、ルドルフのとこと戦うらしいぞ」
アレクはアルの言葉に驚く。
「決勝戦は、ルドルフたちとか!?」
アルは、考えるように続ける。
「そうらしい。……たしか、アイツもお前と同じ中堅職の|騎士《ナイト》だったよな? ……しかもアイツ、結構、強かった気がする」
トゥルムはアルに続く。
「ルドルフは、強いぞ。以前、補給処で、我々とグリフォン小隊でやりあった時も、ルドルフはアレクと互角だった」
ドミトリーも続く。
「中堅職のいないフェンリル小隊より、グリフォン小隊が強いのは、確かだ。……今まで戦った中で、一番の強敵だろう」
エルザが話に混ざって来る。
「何々~? 決勝戦は、ルイーゼの|浮《・》|気《・》|相《・》|手《・》のところとなの?」
エルザの冗談にルイーゼは、ギクリとした後、顔を真っ赤にして必死に否定する。
「ちがっ……! 違うわよ! 彼は、そんなのじゃないって!」
ルイーゼとしては、あくまで想い人はアレクであり、ルドルフには、自分と似たような不幸な生い立ちに対する同情しかなかった。
アレクは、ルドルフが事あるごとにルイーゼにちょっかいを出している事は知っていた。
エルザの冗談は、アレク、ルイーゼ、ルドルフの三人の当事者以外に触れて欲しくないところをえぐる冗談であった。
当然、エルザの冗談を聞いたアレクは、面白くない。
アレクは、ムッとした表情をする。
アレクの不機嫌な顔を見たルイーゼは、涙目になって必死にアレクにすがりながら訴える。
「アレク! 私、浮気なんてしてない! エルザの嘘を真に受けないで! お願い!」
ルイーゼがあまりにも必死にアレクに懇願するので、アレクとルイーゼ以外の者は驚き、場の空気が凍り付く。
エルザは、ほんの軽い気持ちでの冗談が、場の空気を一変させ凍り付かせたことに驚いて呟く。
「……ルイーゼ」
ルイーゼの必死の懇願には訳があった。
アスカニアは男尊女卑の世界であるうえ、帝国第二皇子のアレクと、準貴族の騎士爵家生まれのメイドでしかないルイーゼとは、身分の差が天と地ほども開いていた。
ルイーゼがどれほどアレクに恋い焦がれていても、アレクが違う女性を妃にしたいとラインハルトに伝えれば、皇帝であるラインハルトの一声で、その女性がアレクの妃になってしまう。
ルイーゼは、家族同然の幼馴染であり、初恋の人であり、恋い焦がれるアレクと結婚して、自分を育ててくれたナナイと親子になり、三人で『本当の家族』になるために、何としてもアレク自身から直接ラインハルトに「ルイーゼと一緒になりたい」と伝えて貰う必要があった。
アスカニアで「誰を妻にするか」「今夜、誰を抱いて寝るか」を決めるのは、男の側に決定権があった。
女性の不貞、浮気など論外であり、身分によっては『姦通罪』に問われる事例もあった。
ルイーゼの今の幸せである『アレクの傍に居て共に暮らす幸せ』も、『アレクに抱かれ、その腕の中で眠りに就く幸せ』も、近い将来に得られるであろう、『アレクと結婚してナナイと親子になり三人で本当の家族になる幸せ』も、ルイーゼの不貞・浮気となれば、全てが消し飛んでしまう。
『家族から捨てられたくない』『今の幸せを失いたくない』『近い将来に得られるであろう幸せを失いたくない』との想いがルイーゼを必死に駆り立てていた。
ルイーゼは、涙目でキッとエルザを睨み付ける。
エルザは、その迫力にたじろぐ。
ナディアがエルザを責める。
「エルザ。『言って良い冗談』と『悪い冗談』があるわよ」
エルザは、気まずくなってアレクとルイーゼに謝る。
「あの……。アレク、ルイーゼ。……ゴメンね。冗談だから。ホントに……」
エルザの謝罪とルイーゼの必死の懇願に、アレクは機嫌を直す。
アレクは、微笑みながらルイーゼに告げる。
「……判ってるよ。ルイーゼが悪い訳じゃない」
アレクの言葉にルイーゼは安堵する。
安堵したルイーゼの目から大粒の涙が零れ、頬を伝う。
「大丈夫、大丈夫よ。ルイーゼ」
泣き出したルイーゼは、ナタリーに頭を撫でて貰い、慰めて貰っていた。
この一件で、アレクとルイーゼ、ルドルフの三人の関係について、当事者以外であるユニコーン小隊の仲間たちも知るところとなった。
気不味い空気の朝食を終えたアレクたちは、練兵場へ向かう。
練兵場の一角で、ルドルフは母親と会っていた。
ルドルフの母親が告げる。
「いよいよ決勝戦よ。頑張ってね!」
「ああ」
ルドルフの母親は、|帝国騎士《ライヒスリッター》の装備に身を包むルドルフを眺めて、感慨深げに呟く。
「ルドルフ。立派になって。……貴方の父親が、今の貴方の姿を見たら、きっと喜ぶわ」
「……オレは優勝する。騎士として名を上げて、『至高にして最強の騎士』という、父さんを探すよ。見ていてくれ」
ルドルフは、母親にそう告げると、グリフォン小隊の仲間たちがいる所へ向かって歩き出した。
ルドルフの母親は、その場に佇んで、仲間の元へ歩いて行くルドルフの背中を見送っていた。
ほどなくアレクたちユニコーン小隊とルドルフたちグリフォン小隊の前に案内役の女性が現れ、口を開く。
「決勝試合を行う小隊は、試合会場『障害物』へ移動して下さい!」
ユニコーン小隊とグリフォン小隊は、試合会場『障害物』へ移動すると、それぞれ旗のある本陣の位置に歩いて行く。
決勝戦が始まろうとしていた。