第百四十二話 フェンリル小隊本陣での戦闘
ー/ー フェンリル小隊の戦士は、自分達の本陣を目指して逃げていく。
アレクたちは、逃げる戦士を追って、旗のある本陣へ向かう。
中堅職暗殺者のルイーゼは先頭を走り、敵感知や追跡といった斥候系の技能を活かし、逃げる戦士の後を追っていく。
そのルイーゼの後をアレクが追う。
アレクは中堅職の騎士であり、体力には余裕があった。
アレク自身は、騎士鎧を着込んでいたがミスリル製であり、羽のように軽く、その重さを感じることはほとんど無いに等しい。
アレクの後にナディアが続く。
ナディアは、エルフの精霊使いで、装備も布鎧にレイピアといった軽装備であり、走るには何も問題は無かった。
最後尾はドミトリーであった。
ドミトリーは、修行僧の法衣しか着ていなかったが、ドワーフ特有の樽のような体形で、全身汗だくになって必死に走っていた。
ドミトリーは叫ぶ。
「待て! 待ってくれ! はぁ、はぁ、ドワーフは、短距離型だ。……はぁ、はぁ、長距離は苦手なんだ!」
ナディアが答える。
「ドミトリー! 急いで! 置いていくわよ!」
ドミトリーはぼやく。
「まったく……、この小隊にいると、すっかり健康になってしまうな!」
逃げた戦士は、フェンリル小隊の本陣の小部屋にたどり着く。
フェンリル小隊の小隊長と精霊使いが、後を追ってきたルイーゼを出迎える。
フェンリル小隊の小隊長は、逃げて来た戦士に話し掛ける。
「他の者はどうした?」
「はぁ、はぁ。……他のみんなは、やられた。残ったのはオレだけだ」
「くっ! やつら、帝国騎士十字章を授与されているのは、伊達ではないという事か!」
戦士の後を追っていたルイーゼが、フェンリル小隊の本陣の小部屋にたどり着く。
フェンリル小隊の小隊長は、現れたルイーゼの姿を見て、他の仲間達に告げる。
「……後をつけられたな」
ルイーゼは、小部屋の中に居るフェンリル小隊の三人を認識すると、瞬時に攻撃を仕掛ける。
ルイーゼは低い姿勢で駆け寄り、三人との間合いを一気に詰めると、手甲の爪で小隊長の戦士に斬り掛かる。
小隊長の戦士は、ルイーゼが手甲の爪で右、左、右と斬り掛かってくる斬撃を盾で防ぐ。
乾いた金属音が小部屋に響き渡る。
ひと呼吸おいて、小隊長が右手に持っている戦斧で横薙ぎに払い、ルイーゼを攻撃する。
ルイーゼは、後方転回で戦斧の払いをかわすと、もう一度、後方転回して三人との距離を取って身構え、三人を観察する。
(手強い。……今までの小隊のようには、いかない……)
ルイーゼが身構えていると、アレクたちが本陣のある小部屋に到着する。
アレクは叫ぶ。
「ルイーゼ! 下がれ!」
ルイーゼがアレクに道を譲ると、アレクはそのまま一気に駆け抜け、フェンリル小隊の小隊長に斬り掛かる。
アレクの大上段からの斬撃をフェンリル小隊の小隊長は盾で受け止める。
鈍い金属音が響く。
小隊長の戦士が盾越しにアレクに尋ねる。
「その騎士鎧、ユニコーンの小隊長だな?」
剣を構えながら、アレクが答える。
「ユニコーン小隊隊長、アレキサンダー・ヘーゲルだ」
小隊長の戦士も戦斧を構えながら、名乗りを上げる。
「オレは、フェンリル小隊隊長フレデリク・コイエット。帝国騎士十字章を授与された実力、見せてもらうぞ!」
そう言うとフレデリクは、戦斧でアレクに斬り掛かり、二人は斬撃を繰り広げる。
アレクとフレデリクが剣戟を始めた事を見届けたルイーゼは、本陣に逃げ込んだ戦士に手甲の鉤爪で斬り掛かる。
ナディアはレイピアを構えると、フェンリル小隊の精霊使いに斬り掛かる。
フェンリル小隊の精霊使いは、女の子であった。
フェンリル小隊の精霊使いは、手に持っている戦杖で、ナディアと斬り結ぶ。
ドミトリーは、本陣の小部屋にたどり着いたものの、完全に息を切らせており、肩で息をしながら、その場に立ち止まる。
ナディアは、ドミトリーを労わる。
「ドミトリーは、そこで見てて!」
「ゼェ、ゼェ、ゼェ……すまん」
ユニコーン小隊とフェンリル小隊は、実戦経験は同程度であったが、一対一で戦闘を続けると、個人の能力差、技量の差が次第に出始める。
ルイーゼは、速さと手数で相手の戦士を圧倒する。
相手の戦士は、ルイーゼが三回、四回と攻撃した後に剣で一回反撃することが精一杯であった。
ルイーゼは、数回それを繰り返して相手の攻撃の傾向を把握すると、戦士の攻撃を身を翻してかわし、懐から二本の短刀を取り出して、両手で戦士に向け投擲する。
ルイーゼが投擲した二本の短刀は、戦士の両足の太腿に突き刺さり、戦士が悲鳴を上げる。
「ぐぁああああ!」
戦士は、自分の両方の太腿に突き刺さった短刀に目を向ける。
次の瞬間、ルイーゼの飛び膝蹴りが戦士の顔面に炸裂して鈍い音を立てると、戦士は小部屋の壁を背に倒れ込み、動かなくなった。
ナディアと精霊使いは数回、斬り結ぶと後ろに飛び退き、間合いを開ける。
精霊使いが精霊の召喚を始める。
「闇の精霊よ!」
ナディアも精霊を召喚する。
「光の精霊!」
召喚された精霊は互いにぶつかると、光を放ちながら消えていく。
ナディアは精霊の召喚を続ける。
「風の精霊たち!」
精霊使いは驚く。
「異なる系統の精霊を召喚するなんて!?」
ナディアは、勝ち誇った笑みを浮かべる。
「できるわよ……エルフですもの」
ナディアが召喚した風の精霊達が、無数の風の刃で精霊使いに斬り掛かる。
「きゃあっ!」
精霊使いは全身に無数の切り傷を負い、その場にうずくまる。
ナディアは、うずくまって動けなくなった精霊使いに告げる。
「命に別状は無いわ。動けないでしょうけど」
アレクとフレデリクは、剣戟を続けていた。
剣技でアレクが勝っているものの、力ではフレデリクの方が上であった。
アレクは、相手に剣で小さな傷は与えられるものの、戦斧の重い一撃で押し返されてしまう。
剣戟を続けながらアレクは考える。
(力では、フレデリクの方が上か……、それなら!)
アレクは、フレデリクの戦斧の一撃を剣で『受け流し』フレデリクに体当たりする。
二人は剣と戦斧を交えたまま、互いに両肩でぶつかる。
フレデリクは口を開く。
「ほう? 『受け流し』か。……それで、次はどうするつもりだ??」
アレクが答える。
「こうするのさ!」
アレクは、剣と戦斧を交えていたところから、フレデリクの顔を目掛けて斬り返す。
アレクの『斬り返し』を見たフレデリクは、驚愕の表情を顔に浮かべる。
アレクの剣の背がフレデリクの顔面を捉える。
フレデリクが呟く。
「『受け流し』と『斬り返し』だと!? それは上級騎士の……」
そこまで言うと、鈍い音と主にフレデリクは後ろに倒れ込む。
倒れたフレデリクにアレクが告げる。
「そう。上級騎士の剣技さ」
ルイーゼ、ナディア、ドミトリーが見守る中、アレクは本陣の旗を手に取ると高く掲げて振る。
ユニコーン小隊とフェンリル小隊の戦いは、アレクたちユニコーン小隊の勝利であった。
アレクたちは、逃げる戦士を追って、旗のある本陣へ向かう。
中堅職暗殺者のルイーゼは先頭を走り、敵感知や追跡といった斥候系の技能を活かし、逃げる戦士の後を追っていく。
そのルイーゼの後をアレクが追う。
アレクは中堅職の騎士であり、体力には余裕があった。
アレク自身は、騎士鎧を着込んでいたがミスリル製であり、羽のように軽く、その重さを感じることはほとんど無いに等しい。
アレクの後にナディアが続く。
ナディアは、エルフの精霊使いで、装備も布鎧にレイピアといった軽装備であり、走るには何も問題は無かった。
最後尾はドミトリーであった。
ドミトリーは、修行僧の法衣しか着ていなかったが、ドワーフ特有の樽のような体形で、全身汗だくになって必死に走っていた。
ドミトリーは叫ぶ。
「待て! 待ってくれ! はぁ、はぁ、ドワーフは、短距離型だ。……はぁ、はぁ、長距離は苦手なんだ!」
ナディアが答える。
「ドミトリー! 急いで! 置いていくわよ!」
ドミトリーはぼやく。
「まったく……、この小隊にいると、すっかり健康になってしまうな!」
逃げた戦士は、フェンリル小隊の本陣の小部屋にたどり着く。
フェンリル小隊の小隊長と精霊使いが、後を追ってきたルイーゼを出迎える。
フェンリル小隊の小隊長は、逃げて来た戦士に話し掛ける。
「他の者はどうした?」
「はぁ、はぁ。……他のみんなは、やられた。残ったのはオレだけだ」
「くっ! やつら、帝国騎士十字章を授与されているのは、伊達ではないという事か!」
戦士の後を追っていたルイーゼが、フェンリル小隊の本陣の小部屋にたどり着く。
フェンリル小隊の小隊長は、現れたルイーゼの姿を見て、他の仲間達に告げる。
「……後をつけられたな」
ルイーゼは、小部屋の中に居るフェンリル小隊の三人を認識すると、瞬時に攻撃を仕掛ける。
ルイーゼは低い姿勢で駆け寄り、三人との間合いを一気に詰めると、手甲の爪で小隊長の戦士に斬り掛かる。
小隊長の戦士は、ルイーゼが手甲の爪で右、左、右と斬り掛かってくる斬撃を盾で防ぐ。
乾いた金属音が小部屋に響き渡る。
ひと呼吸おいて、小隊長が右手に持っている戦斧で横薙ぎに払い、ルイーゼを攻撃する。
ルイーゼは、後方転回で戦斧の払いをかわすと、もう一度、後方転回して三人との距離を取って身構え、三人を観察する。
(手強い。……今までの小隊のようには、いかない……)
ルイーゼが身構えていると、アレクたちが本陣のある小部屋に到着する。
アレクは叫ぶ。
「ルイーゼ! 下がれ!」
ルイーゼがアレクに道を譲ると、アレクはそのまま一気に駆け抜け、フェンリル小隊の小隊長に斬り掛かる。
アレクの大上段からの斬撃をフェンリル小隊の小隊長は盾で受け止める。
鈍い金属音が響く。
小隊長の戦士が盾越しにアレクに尋ねる。
「その騎士鎧、ユニコーンの小隊長だな?」
剣を構えながら、アレクが答える。
「ユニコーン小隊隊長、アレキサンダー・ヘーゲルだ」
小隊長の戦士も戦斧を構えながら、名乗りを上げる。
「オレは、フェンリル小隊隊長フレデリク・コイエット。帝国騎士十字章を授与された実力、見せてもらうぞ!」
そう言うとフレデリクは、戦斧でアレクに斬り掛かり、二人は斬撃を繰り広げる。
アレクとフレデリクが剣戟を始めた事を見届けたルイーゼは、本陣に逃げ込んだ戦士に手甲の鉤爪で斬り掛かる。
ナディアはレイピアを構えると、フェンリル小隊の精霊使いに斬り掛かる。
フェンリル小隊の精霊使いは、女の子であった。
フェンリル小隊の精霊使いは、手に持っている戦杖で、ナディアと斬り結ぶ。
ドミトリーは、本陣の小部屋にたどり着いたものの、完全に息を切らせており、肩で息をしながら、その場に立ち止まる。
ナディアは、ドミトリーを労わる。
「ドミトリーは、そこで見てて!」
「ゼェ、ゼェ、ゼェ……すまん」
ユニコーン小隊とフェンリル小隊は、実戦経験は同程度であったが、一対一で戦闘を続けると、個人の能力差、技量の差が次第に出始める。
ルイーゼは、速さと手数で相手の戦士を圧倒する。
相手の戦士は、ルイーゼが三回、四回と攻撃した後に剣で一回反撃することが精一杯であった。
ルイーゼは、数回それを繰り返して相手の攻撃の傾向を把握すると、戦士の攻撃を身を翻してかわし、懐から二本の短刀を取り出して、両手で戦士に向け投擲する。
ルイーゼが投擲した二本の短刀は、戦士の両足の太腿に突き刺さり、戦士が悲鳴を上げる。
「ぐぁああああ!」
戦士は、自分の両方の太腿に突き刺さった短刀に目を向ける。
次の瞬間、ルイーゼの飛び膝蹴りが戦士の顔面に炸裂して鈍い音を立てると、戦士は小部屋の壁を背に倒れ込み、動かなくなった。
ナディアと精霊使いは数回、斬り結ぶと後ろに飛び退き、間合いを開ける。
精霊使いが精霊の召喚を始める。
「闇の精霊よ!」
ナディアも精霊を召喚する。
「光の精霊!」
召喚された精霊は互いにぶつかると、光を放ちながら消えていく。
ナディアは精霊の召喚を続ける。
「風の精霊たち!」
精霊使いは驚く。
「異なる系統の精霊を召喚するなんて!?」
ナディアは、勝ち誇った笑みを浮かべる。
「できるわよ……エルフですもの」
ナディアが召喚した風の精霊達が、無数の風の刃で精霊使いに斬り掛かる。
「きゃあっ!」
精霊使いは全身に無数の切り傷を負い、その場にうずくまる。
ナディアは、うずくまって動けなくなった精霊使いに告げる。
「命に別状は無いわ。動けないでしょうけど」
アレクとフレデリクは、剣戟を続けていた。
剣技でアレクが勝っているものの、力ではフレデリクの方が上であった。
アレクは、相手に剣で小さな傷は与えられるものの、戦斧の重い一撃で押し返されてしまう。
剣戟を続けながらアレクは考える。
(力では、フレデリクの方が上か……、それなら!)
アレクは、フレデリクの戦斧の一撃を剣で『受け流し』フレデリクに体当たりする。
二人は剣と戦斧を交えたまま、互いに両肩でぶつかる。
フレデリクは口を開く。
「ほう? 『受け流し』か。……それで、次はどうするつもりだ??」
アレクが答える。
「こうするのさ!」
アレクは、剣と戦斧を交えていたところから、フレデリクの顔を目掛けて斬り返す。
アレクの『斬り返し』を見たフレデリクは、驚愕の表情を顔に浮かべる。
アレクの剣の背がフレデリクの顔面を捉える。
フレデリクが呟く。
「『受け流し』と『斬り返し』だと!? それは上級騎士の……」
そこまで言うと、鈍い音と主にフレデリクは後ろに倒れ込む。
倒れたフレデリクにアレクが告げる。
「そう。上級騎士の剣技さ」
ルイーゼ、ナディア、ドミトリーが見守る中、アレクは本陣の旗を手に取ると高く掲げて振る。
ユニコーン小隊とフェンリル小隊の戦いは、アレクたちユニコーン小隊の勝利であった。
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フェンリル小隊の戦士は、自分達の本陣を目指して逃げていく。
アレクたちは、逃げる戦士を追って、旗のある本陣へ向かう。
中堅職|暗殺者《アサシン》のルイーゼは先頭を走り、敵感知や追跡といった斥候系の|技能《スキル》を活かし、逃げる戦士の後を追っていく。
そのルイーゼの後をアレクが追う。
アレクは中堅職の騎士であり、体力には余裕があった。
アレク自身は、騎士鎧を着込んでいたがミスリル製であり、羽のように軽く、その重さを感じることはほとんど無いに等しい。
アレクの後にナディアが続く。
ナディアは、エルフの|精霊使い《シャーマン》で、装備も|布《クロース》|鎧《アーマー》にレイピアといった軽装備であり、走るには何も問題は無かった。
最後尾はドミトリーであった。
ドミトリーは、修行僧の法衣しか着ていなかったが、ドワーフ特有の樽のような体形で、全身汗だくになって必死に走っていた。
ドミトリーは叫ぶ。
「待て! 待ってくれ! はぁ、はぁ、ドワーフは、短距離型だ。……はぁ、はぁ、長距離は苦手なんだ!」
ナディアが答える。
「ドミトリー! 急いで! 置いていくわよ!」
ドミトリーはぼやく。
「まったく……、この小隊にいると、すっかり健康になってしまうな!」
逃げた戦士は、フェンリル小隊の本陣の小部屋にたどり着く。
フェンリル小隊の小隊長と精霊使いが、後を追ってきたルイーゼを出迎える。
フェンリル小隊の小隊長は、逃げて来た戦士に話し掛ける。
「他の者はどうした?」
「はぁ、はぁ。……他のみんなは、やられた。残ったのはオレだけだ」
「くっ! やつら、|帝国騎士《ライヒス・リッター》|十字章《・クロス》を授与されているのは、伊達ではないという事か!」
戦士の後を追っていたルイーゼが、フェンリル小隊の本陣の小部屋にたどり着く。
フェンリル小隊の小隊長は、現れたルイーゼの姿を見て、他の仲間達に告げる。
「……後をつけられたな」
ルイーゼは、小部屋の中に居るフェンリル小隊の三人を認識すると、瞬時に攻撃を仕掛ける。
ルイーゼは低い姿勢で駆け寄り、三人との間合いを一気に詰めると、手甲の爪で小隊長の戦士に斬り掛かる。
小隊長の戦士は、ルイーゼが手甲の爪で右、左、右と斬り掛かってくる斬撃を盾で防ぐ。
乾いた金属音が小部屋に響き渡る。
ひと呼吸おいて、小隊長が右手に持っている戦斧で横薙ぎに払い、ルイーゼを攻撃する。
ルイーゼは、後方転回で戦斧の払いをかわすと、もう一度、後方転回して三人との距離を取って身構え、三人を観察する。
(手強い。……今までの小隊のようには、いかない……)
ルイーゼが身構えていると、アレクたちが本陣のある小部屋に到着する。
アレクは叫ぶ。
「ルイーゼ! 下がれ!」
ルイーゼがアレクに道を譲ると、アレクはそのまま一気に駆け抜け、フェンリル小隊の小隊長に斬り掛かる。
アレクの大上段からの斬撃をフェンリル小隊の小隊長は盾で受け止める。
鈍い金属音が響く。
小隊長の戦士が盾越しにアレクに尋ねる。
「その騎士鎧、ユニコーンの小隊長だな?」
剣を構えながら、アレクが答える。
「ユニコーン小隊隊長、アレキサンダー・ヘーゲルだ」
小隊長の戦士も戦斧を構えながら、名乗りを上げる。
「オレは、フェンリル小隊隊長フレデリク・コイエット。帝国騎士十字章を授与された実力、見せてもらうぞ!」
そう言うとフレデリクは、戦斧でアレクに斬り掛かり、二人は斬撃を繰り広げる。
アレクとフレデリクが剣戟を始めた事を見届けたルイーゼは、本陣に逃げ込んだ戦士に手甲の鉤爪で斬り掛かる。
ナディアはレイピアを構えると、フェンリル小隊の|精霊使い《シャーマン》に斬り掛かる。
フェンリル小隊の|精霊使い《シャーマン》は、女の子であった。
フェンリル小隊の|精霊使い《シャーマン》は、手に持っている戦杖で、ナディアと斬り結ぶ。
ドミトリーは、本陣の小部屋にたどり着いたものの、完全に息を切らせており、肩で息をしながら、その場に立ち止まる。
ナディアは、ドミトリーを労わる。
「ドミトリーは、そこで見てて!」
「ゼェ、ゼェ、ゼェ……すまん」
ユニコーン小隊とフェンリル小隊は、実戦経験は同程度であったが、一対一で戦闘を続けると、個人の能力差、技量の差が次第に出始める。
ルイーゼは、速さと手数で相手の戦士を圧倒する。
相手の戦士は、ルイーゼが三回、四回と攻撃した後に剣で一回反撃することが精一杯であった。
ルイーゼは、数回それを繰り返して相手の攻撃の傾向を把握すると、戦士の攻撃を身を翻してかわし、懐から二本の短刀を取り出して、両手で戦士に向け投擲する。
ルイーゼが投擲した二本の短刀は、戦士の両足の太腿に突き刺さり、戦士が悲鳴を上げる。
「ぐぁああああ!」
戦士は、自分の両方の太腿に突き刺さった短刀に目を向ける。
次の瞬間、ルイーゼの飛び膝蹴りが戦士の顔面に炸裂して鈍い音を立てると、戦士は小部屋の壁を背に倒れ込み、動かなくなった。
ナディアと|精霊使い《シャーマン》は数回、斬り結ぶと後ろに飛び退き、間合いを開ける。
|精霊使い《シャーマン》が精霊の召喚を始める。
「|闇の精霊《シェード》よ!」
ナディアも精霊を召喚する。
「|光の《ウィル・オー》|精霊《・ウィスプ》!」
召喚された精霊は互いにぶつかると、光を放ちながら消えていく。
ナディアは精霊の召喚を続ける。
「|風の精霊《シルフ》たち!」
|精霊使い《シャーマン》は驚く。
「異なる系統の精霊を召喚するなんて!?」
ナディアは、勝ち誇った笑みを浮かべる。
「できるわよ……エルフですもの」
ナディアが召喚した|風の精霊《シルフ》達が、無数の風の刃で|精霊使い《シャーマン》に斬り掛かる。
「きゃあっ!」
|精霊使い《シャーマン》は全身に無数の切り傷を負い、その場にうずくまる。
ナディアは、うずくまって動けなくなった|精霊使い《シャーマン》に告げる。
「命に別状は無いわ。動けないでしょうけど」
アレクとフレデリクは、剣戟を続けていた。
剣技でアレクが勝っているものの、力ではフレデリクの方が上であった。
アレクは、相手に剣で小さな傷は与えられるものの、戦斧の重い一撃で押し返されてしまう。
剣戟を続けながらアレクは考える。
(力では、フレデリクの方が上か……、それなら!)
アレクは、フレデリクの戦斧の一撃を剣で『受け流し』フレデリクに体当たりする。
二人は剣と戦斧を交えたまま、互いに両肩でぶつかる。
フレデリクは口を開く。
「ほう? 『受け流し』か。……それで、次はどうするつもりだ??」
アレクが答える。
「こうするのさ!」
アレクは、剣と戦斧を交えていたところから、フレデリクの顔を目掛けて斬り返す。
アレクの『斬り返し』を見たフレデリクは、驚愕の表情を顔に浮かべる。
アレクの剣の背がフレデリクの顔面を捉える。
フレデリクが呟く。
「『受け流し』と『斬り返し』だと!? それは|上級騎士《パラディン》の……」
そこまで言うと、鈍い音と主にフレデリクは後ろに倒れ込む。
倒れたフレデリクにアレクが告げる。
「そう。|上級騎士《パラディン》の剣技さ」
ルイーゼ、ナディア、ドミトリーが見守る中、アレクは本陣の旗を手に取ると高く掲げて振る。
ユニコーン小隊とフェンリル小隊の戦いは、アレクたちユニコーン小隊の勝利であった。