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第百四十話 暗殺者の本領

ー/ー



 試合開始の合図の空砲が鳴り、ドミトリーは小隊全員に支援魔法を掛ける。

筋力(レッサー・)強化(ストレングス)!」

 アレク、ルイーゼ、ナディア、ドミトリーの四人は、旗のある本陣から通路へ進み、敵陣を目指す。



 アレクは、通路を歩きながら指示を出す。

「ルイーゼ。先頭に立ってくれ」

「判ったわ」

 暗殺者(アサシン)であり、斥候系の技能(スキル)に長けたルイーゼがアレクたちを先導する。



 アレクたちは、通路を歩いて行く。

 途中で分かれ道があったり、曲がり角があったり、小部屋があったりするが、ルイーゼが先導して探索しながら進んで行く。

 ルイーゼは、曲がり角の手前で屈んで立ち止まると、後続のアレクたちにハンドサインを示す。

(待って。二人。こっちに来る)

 アレクは、三人に鼻先で近くの小部屋に入るように促し、自分も小部屋に入る。

 小部屋の入り口の向かって左側にアレクが潜み、右側の天井近くに手甲を使って壁を登ったルイーゼが潜む。

 ナディアとドミトリーは、小部屋入り口の正面奥で身構える。

 アレクたちが息を殺して潜んでいると、フェンリル小隊の二人が小部屋の探索にやって来た。

 フェンリル小隊の二人は、小部屋の正面奥にいるナディアとドミトリーを発見して、交戦しようと小部屋に入ろうとする。

 ルイーゼは、広げた両足を軸にして上半身を振り子のように半回転させ、フェンリル小隊の先頭の一人を攻撃する。

 ルイーゼが両手で持つショートソードの柄が、フェンリル小隊の先頭の者の喉元を打つ。

「ごふっ!」

 フェンリル小隊の先頭の者は男であったが、ルイーゼの一撃を喉元に受け、白目を剥いて前のめりに倒れる。

 突然襲ってきたルイーゼの攻撃に、フェンリル小隊の二人目の者は怯む。

 すかさずアレクが入り口の影から現れて、フェンリル小隊の二人目の者の肩口を捕まえて部屋の中に引き込むと、胸を押して壁に押し付け、喉元に剣を突き付ける。

 アレクが捕まえた相手に顔を近づけて告げる。

「降参しろ! ……って、えっ!?」



 ぷにゅっ。

 ぷにゅっ、ぷにゅっ。



 相手の胸を押すアレクの手に柔らかい感触が伝わる。

 アレクが捕まえた相手は、女の子であった。

 アレクに捕まって怯えていたフェンリル小隊の女の子が、アレクの顔を正視する。

 女の子は口を開く。

「……アレク中尉!?」

 アレクが捕まえたフェンリル小隊の女の子は、学校の屋上でアレクにお菓子とラブレターを渡した女の子であった。

 女の子は、自分の胸を揉んでいるアレクの手に自分の手を重ねると、恍惚(こうこつ)とした表情でアレクに告げる。

「降参します」

 そこまで言うと女の子は、頬を赤らめて恥じらいながら、アレクから顔を背けて続ける。

「……アレク中尉の好きにして下さい」

 アレクは、想定外の女の子の反応に焦る。

「いや、そういう意味じゃなくて……」

 ナディアの位置からアレクたちを見ると、アレクが女の子を壁際に立たせて顔を近づけ、強引に迫っているようにしか見えなかった。

 ナディアは、アレクを咎める。

「ちょっと! アレク! 試合中に女の子を口説いて迫ってるの!?」

 ルイーゼは、ナディアの言葉を聞いて驚き、アレクたちの方を振り向く。

「ええっ!?」

 アレクは、焦りながら否定する。

「誤解だよ! 誤解!」

 ドミトリーは、しみじみとアレクに語り掛ける。

「隊長は、煩悩に捕らわれ過ぎだ」




 ルイーゼが倒した相手は斥候で、アレクが捕まえた女の子は僧侶であった。



 とりあえずの戦闘が片付いたアレクたちは、小部屋で一息つく。

 ルイーゼはアレクに尋ねる。

「アレク。捕まえたその女の子をどうするの?」

 アレクは困惑する。

「どうって……」

 ナディアはアレクをからかう。

「アレク。……まさか、その女の子を裸にして、縄で縛り上げるつもりなんじゃ……?」

「ええっ!?」

 ルイーゼとエマの顔が赤くなる。

 ナディアは続ける。

「裸にして縄で縛り上げて身動きできないようにしてから、凌辱するのね。……エロい! エロいわ!」

 ドミトリーは、渋い顔をしながら懸念を示す。

「……隊長なら本当にやりそうだ」

 エマは、恥じらいから頬を赤らめてモジモジしながらアレクに告げる。

「アレク中尉は、そういうのがお好きなんですか? ……あの、……恥ずかしいので、二人きりの時に……」

 アレクは、必死に否定する。

「いや、そんな事はしないよ!」

 アレクはエマに告げる。

「縛ったりはしないけど、試合が終わるまで、この部屋で大人しくしてて」

「はい」

 気を取り直したアレクたちは、小部屋から通路に出て、再び進み始める。



 アレクたち四人は、先ほどと同じようにルイーゼを先頭に歩き続ける。

 アレクは、歩きながら考える。

(二人倒したものの、まだフェンリル小隊の主力は残ってるな……)

 アレクが考え事をしながら歩いていると、先導するルイーゼが左折している曲がり角の手前で立ち止まり、『敵接近』の合図をアレクたちに示す。

 アレクは『全員で戦闘する』との合図を返して、ナディア、ドミトリーと、それぞれ目線を合わせて無言で頷きあい、三人でルイーゼの元に駆け寄る。

 アレクの合図で四人は、戦闘態勢を取る。

 アレクを剣を抜き、ナディアはレイピアを抜く。ルイーゼは鉤爪を構え、ドミトリーは拳を握る。

 アレクたち四人は、身構えながら一斉に曲がり角を左に曲がる。

 通路に出たアレクたち四人の前に、通路の先の曲がり角を曲がって来たフェンリル小隊の四人が現れた。



 現れたフェンリル小隊の四人は、戦士三人と魔導師一人であった。

 通路で鉢合わせしたフェンリル小隊の一人が叫ぶ。

「敵!?」

 通路での遭遇戦であったが、アレクたちが事前に相手の存在を把握していて、既に戦闘態勢であるのに対し、フェンリル小隊の四人は、アレクたちと鉢合わせしてから慌てて戦闘態勢を取り始める。

 アレクたち四人は戦闘態勢で、フェンリル小隊の四人に向けて駆け寄る。

 アレクとルイーゼ、その後ろにナディアとドミトリーが続く。

 アレクをルイーゼが追い越していく。

(ルイーゼ!?……速い!)

 アレクを追い越していったルイーゼの顔は、いつもの可愛らしい顔ではなく、戦士の顔つきであった。

 ルイーゼは、両手の手甲の鉤爪を構えながら低い姿勢で走り、先陣を切ってフェンリル小隊の四人に斬り込んでいく。



 ルイーゼは、低い姿勢から右手の手甲の鉤爪を下から上に斬り上げ、右側の戦士に襲い掛かる。

 右側の戦士は盾を構え、ルイーゼの一撃を防ぐ。

 乾いた金属音が通路に響く。

「くそっ!」

 左側の戦士がルイーゼに剣で斬り掛かるが、ルイーゼは左手の手甲の爪で剣を受けると、右手の手甲の爪で相手の喉元を狙い、突きを放つ。

(……いけない! 殺してはダメだ!)

 ハッとして気付いたルイーゼは、突きを放った右手の手首を返して『突き』から『掌底』に変える。

 ルイーゼの右手の掌底が左側の戦士の顎先を捉える。

「がはっ!」

 ルイーゼの攻撃を受けた戦士は、嗚咽を漏らして壁を背にして倒れ込む。

 倒れた戦士の後ろに居た魔導師がルイーゼに向けて魔法を唱える。

火球(ファイヤーボール)!」

 ルイーゼは素早く後方転回で飛び跳ねて魔法の攻撃を避けると、手甲の爪を使って壁に取り付きながら通路の反対側の壁を蹴って、魔導師に向けて三角蹴りを放つ。

 フェンリル小隊の魔導師は、ルイーゼの素早く、立体的で予測不能な立ち回りに口を開く。

「なっ!? 何なんだ? ぐおっ!」

 ルイーゼの三角蹴りが魔導師に炸裂する。

「おらっ!」

 魔導師の隣にいた戦士が、ルイーゼに向けて水平に剣を払う。

 ルイーゼは、屈んで剣での攻撃を避けると、斬り掛かって来た戦士の足を狙って床面すれすれに後ろ回し蹴りを放ち、戦士の足を払う。

 ルイーゼに後ろ回し蹴りで足を払われた戦士は転倒する。

 敵中を駆け抜けたルイーゼは、立ち上がってフェンリル小隊の四人の方を振り向き、再び身構える。

 斥候系の中堅職の暗殺者(アサシン)であるルイーゼは、先陣を切って斬り込み、フェンリル小隊の四人を至近距離での格闘戦で翻弄し圧倒した。



 ルイーゼの手甲の爪での攻撃を盾で防いだ戦士が、ルイーゼの方を振り向いて口を開く。

「くそっ! チョロチョロしやがって!}

 だが、戦士がフェンリル小隊の四人の後ろへ駆け抜けた()()()()()()()()()()()()は、駆け寄って来る()()()()()()()()()()()であった。

 アレクは、自分に背を見せた戦士に後ろから剣の背で殴り掛る。

 アレクの剣は戦士の後頭部に直撃し、鈍い音と共に戦士は崩れ落ちる。



 屋内(イン・ドア・)(ファイト)

 敵の存在を察知して、自分の気配を消して接敵し、至近距離から攻撃する。

 狭い屋内での遭遇戦、至近距離の戦闘は、ルイーゼが暗殺者(アサシン)としての本領を発揮できる場所であった。



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 試合開始の合図の空砲が鳴り、ドミトリーは小隊全員に支援魔法を掛ける。
「|筋力《レッサー・》|強化《ストレングス》!」
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 アレクは、通路を歩きながら指示を出す。
「ルイーゼ。先頭に立ってくれ」
「判ったわ」
 |暗殺者《アサシン》であり、斥候系の|技能《スキル》に長けたルイーゼがアレクたちを先導する。
 アレクたちは、通路を歩いて行く。
 途中で分かれ道があったり、曲がり角があったり、小部屋があったりするが、ルイーゼが先導して探索しながら進んで行く。
 ルイーゼは、曲がり角の手前で屈んで立ち止まると、後続のアレクたちにハンドサインを示す。
(待って。二人。こっちに来る)
 アレクは、三人に鼻先で近くの小部屋に入るように促し、自分も小部屋に入る。
 小部屋の入り口の向かって左側にアレクが潜み、右側の天井近くに手甲を使って壁を登ったルイーゼが潜む。
 ナディアとドミトリーは、小部屋入り口の正面奥で身構える。
 アレクたちが息を殺して潜んでいると、フェンリル小隊の二人が小部屋の探索にやって来た。
 フェンリル小隊の二人は、小部屋の正面奥にいるナディアとドミトリーを発見して、交戦しようと小部屋に入ろうとする。
 ルイーゼは、広げた両足を軸にして上半身を振り子のように半回転させ、フェンリル小隊の先頭の一人を攻撃する。
 ルイーゼが両手で持つショートソードの柄が、フェンリル小隊の先頭の者の喉元を打つ。
「ごふっ!」
 フェンリル小隊の先頭の者は男であったが、ルイーゼの一撃を喉元に受け、白目を剥いて前のめりに倒れる。
 突然襲ってきたルイーゼの攻撃に、フェンリル小隊の二人目の者は怯む。
 すかさずアレクが入り口の影から現れて、フェンリル小隊の二人目の者の肩口を捕まえて部屋の中に引き込むと、胸を押して壁に押し付け、喉元に剣を突き付ける。
 アレクが捕まえた相手に顔を近づけて告げる。
「降参しろ! ……って、えっ!?」
 ぷにゅっ。
 ぷにゅっ、ぷにゅっ。
 相手の胸を押すアレクの手に柔らかい感触が伝わる。
 アレクが捕まえた相手は、女の子であった。
 アレクに捕まって怯えていたフェンリル小隊の女の子が、アレクの顔を正視する。
 女の子は口を開く。
「……アレク中尉!?」
 アレクが捕まえたフェンリル小隊の女の子は、学校の屋上でアレクにお菓子とラブレターを渡した女の子であった。
 女の子は、自分の胸を揉んでいるアレクの手に自分の手を重ねると、|恍惚《こうこつ》とした表情でアレクに告げる。
「降参します」
 そこまで言うと女の子は、頬を赤らめて恥じらいながら、アレクから顔を背けて続ける。
「……アレク中尉の好きにして下さい」
 アレクは、想定外の女の子の反応に焦る。
「いや、そういう意味じゃなくて……」
 ナディアの位置からアレクたちを見ると、アレクが女の子を壁際に立たせて顔を近づけ、強引に迫っているようにしか見えなかった。
 ナディアは、アレクを咎める。
「ちょっと! アレク! 試合中に女の子を口説いて迫ってるの!?」
 ルイーゼは、ナディアの言葉を聞いて驚き、アレクたちの方を振り向く。
「ええっ!?」
 アレクは、焦りながら否定する。
「誤解だよ! 誤解!」
 ドミトリーは、しみじみとアレクに語り掛ける。
「隊長は、煩悩に捕らわれ過ぎだ」
 ルイーゼが倒した相手は斥候で、アレクが捕まえた女の子は僧侶であった。
 とりあえずの戦闘が片付いたアレクたちは、小部屋で一息つく。
 ルイーゼはアレクに尋ねる。
「アレク。捕まえたその女の子をどうするの?」
 アレクは困惑する。
「どうって……」
 ナディアはアレクをからかう。
「アレク。……まさか、その女の子を裸にして、縄で縛り上げるつもりなんじゃ……?」
「ええっ!?」
 ルイーゼとエマの顔が赤くなる。
 ナディアは続ける。
「裸にして縄で縛り上げて身動きできないようにしてから、凌辱するのね。……エロい! エロいわ!」
 ドミトリーは、渋い顔をしながら懸念を示す。
「……隊長なら本当にやりそうだ」
 エマは、恥じらいから頬を赤らめてモジモジしながらアレクに告げる。
「アレク中尉は、そういうのがお好きなんですか? ……あの、……恥ずかしいので、二人きりの時に……」
 アレクは、必死に否定する。
「いや、そんな事はしないよ!」
 アレクはエマに告げる。
「縛ったりはしないけど、試合が終わるまで、この部屋で大人しくしてて」
「はい」
 気を取り直したアレクたちは、小部屋から通路に出て、再び進み始める。
 アレクたち四人は、先ほどと同じようにルイーゼを先頭に歩き続ける。
 アレクは、歩きながら考える。
(二人倒したものの、まだフェンリル小隊の主力は残ってるな……)
 アレクが考え事をしながら歩いていると、先導するルイーゼが左折している曲がり角の手前で立ち止まり、『敵接近』の合図をアレクたちに示す。
 アレクは『全員で戦闘する』との合図を返して、ナディア、ドミトリーと、それぞれ目線を合わせて無言で頷きあい、三人でルイーゼの元に駆け寄る。
 アレクの合図で四人は、戦闘態勢を取る。
 アレクを剣を抜き、ナディアはレイピアを抜く。ルイーゼは鉤爪を構え、ドミトリーは拳を握る。
 アレクたち四人は、身構えながら一斉に曲がり角を左に曲がる。
 通路に出たアレクたち四人の前に、通路の先の曲がり角を曲がって来たフェンリル小隊の四人が現れた。
 現れたフェンリル小隊の四人は、戦士三人と魔導師一人であった。
 通路で鉢合わせしたフェンリル小隊の一人が叫ぶ。
「敵!?」
 通路での遭遇戦であったが、アレクたちが事前に相手の存在を把握していて、既に戦闘態勢であるのに対し、フェンリル小隊の四人は、アレクたちと鉢合わせしてから慌てて戦闘態勢を取り始める。
 アレクたち四人は戦闘態勢で、フェンリル小隊の四人に向けて駆け寄る。
 アレクとルイーゼ、その後ろにナディアとドミトリーが続く。
 アレクをルイーゼが追い越していく。
(ルイーゼ!?……速い!)
 アレクを追い越していったルイーゼの顔は、いつもの可愛らしい顔ではなく、戦士の顔つきであった。
 ルイーゼは、両手の手甲の鉤爪を構えながら低い姿勢で走り、先陣を切ってフェンリル小隊の四人に斬り込んでいく。
 ルイーゼは、低い姿勢から右手の手甲の鉤爪を下から上に斬り上げ、右側の戦士に襲い掛かる。
 右側の戦士は盾を構え、ルイーゼの一撃を防ぐ。
 乾いた金属音が通路に響く。
「くそっ!」
 左側の戦士がルイーゼに剣で斬り掛かるが、ルイーゼは左手の手甲の爪で剣を受けると、右手の手甲の爪で相手の喉元を狙い、突きを放つ。
(……いけない! 殺してはダメだ!)
 ハッとして気付いたルイーゼは、突きを放った右手の手首を返して『突き』から『掌底』に変える。
 ルイーゼの右手の掌底が左側の戦士の顎先を捉える。
「がはっ!」
 ルイーゼの攻撃を受けた戦士は、嗚咽を漏らして壁を背にして倒れ込む。
 倒れた戦士の後ろに居た魔導師がルイーゼに向けて魔法を唱える。
「|火球《ファイヤーボール》!」
 ルイーゼは素早く後方転回で飛び跳ねて魔法の攻撃を避けると、手甲の爪を使って壁に取り付きながら通路の反対側の壁を蹴って、魔導師に向けて三角蹴りを放つ。
 フェンリル小隊の魔導師は、ルイーゼの素早く、立体的で予測不能な立ち回りに口を開く。
「なっ!? 何なんだ? ぐおっ!」
 ルイーゼの三角蹴りが魔導師に炸裂する。
「おらっ!」
 魔導師の隣にいた戦士が、ルイーゼに向けて水平に剣を払う。
 ルイーゼは、屈んで剣での攻撃を避けると、斬り掛かって来た戦士の足を狙って床面すれすれに後ろ回し蹴りを放ち、戦士の足を払う。
 ルイーゼに後ろ回し蹴りで足を払われた戦士は転倒する。
 敵中を駆け抜けたルイーゼは、立ち上がってフェンリル小隊の四人の方を振り向き、再び身構える。
 斥候系の中堅職の|暗殺者《アサシン》であるルイーゼは、先陣を切って斬り込み、フェンリル小隊の四人を至近距離での格闘戦で翻弄し圧倒した。
 ルイーゼの手甲の爪での攻撃を盾で防いだ戦士が、ルイーゼの方を振り向いて口を開く。
「くそっ! チョロチョロしやがって!}
 だが、戦士がフェンリル小隊の四人の後ろへ駆け抜けた|ル《・》|イ《・》|ー《・》|ゼ《・》|の《・》|方《・》|を《・》|振《・》|り《・》|向《・》|く《・》|事《・》は、駆け寄って来る|ア《・》|レ《・》|ク《・》|達《・》|に《・》|背《・》|を《・》|見《・》|せ《・》|る《・》|事《・》であった。
 アレクは、自分に背を見せた戦士に後ろから剣の背で殴り掛る。
 アレクの剣は戦士の後頭部に直撃し、鈍い音と共に戦士は崩れ落ちる。
 |屋内《イン・ドア・》|戦《ファイト》。
 敵の存在を察知して、自分の気配を消して接敵し、至近距離から攻撃する。
 狭い屋内での遭遇戦、至近距離の戦闘は、ルイーゼが|暗殺者《アサシン》としての本領を発揮できる場所であった。