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第百三十七話 第八試合グリフォン小隊vsイオニア小隊

ー/ー



--小隊対抗模擬戦トーナメント 開始から二日目の昼過ぎ。

 トーナメントの試合は、一日四試合ずつ行われ、今日はアレクたちの小隊の対戦は無く、第五試合から第八試合までが行われていた。

 試合が無いアレクたちは昼食を済ませると、制服姿で試合会場周辺を散策していた。

 陶器屋、毛皮屋、服屋や木製品屋、料理やお菓子といった出店が並び、お祭りの縁日のような賑わいを見せる。

 会場周辺では、芸人一座によるいくつものアトラクションも行われていた。

 綱渡り、手品、人形劇、詠会、占いなどなど、多くの人だかりができていた。

 人形遣いが小さなステージで『革命戦役』を物語として演じており、アレクたちは目を止める。



 帝国軍要塞『死の山(ディアトロフ)』での革命党の幹部たちと、ラインハルトたちの決戦。

 輸送飛空艇に乗って逃げる革命党の幹部たちを、飛空艇に乗ったラインハルトたちが撃墜する。

 帝都に向かう帝国軍要塞『死の山(ディアトロフ)』を、爆炎の大魔導師ハリッシュが『隕石落とし(メテオ・ストライク)』で破壊する。



 それぞれの名場面で観衆は沸き立ち、ステージに拍手喝さいを送っていた。

 アレクは、傍らのルイーゼに話し掛ける。

「『革命戦役』は実在の歴史なんだが、英雄譚にもなっているんだな」

「そうね。十七年前の事なのに、伝説に昇華されているのかも」

「伝説か……」

 そう呟くと、アレクは自分の両親が伝説の主人公となっていることに想いを巡らせる。



 アレクの父、皇帝ラインハルトは、革命戦役で革命政府を倒した初代ユニコーン小隊の隊長であった。 

 そして、同じ小隊で副官を務めた母ナナイと結婚した。

 両親が英雄であると、その子供に対しても周囲は期待を向ける。

 黒い剣士ジカイラと氷の魔女ヒナの息子であるアルや、爆炎の大魔導師ハリッシュと大召喚師クリシュナの娘であるナタリーは、両親の名に恥じない才能と実力を持っている。

 アレクの長兄であるジークは、懸命な努力の結果、帝国最年少の上級騎士(パラディン)になり士官学校を首席で飛び級で卒業、トラキア戦役で帝国を勝利に導いた。

 対して自分はどうか。

 士官学校に入学して中堅職の騎士になり、トラキア戦役で活躍して帝国騎士十字章を叙勲された。

 兄であるジークと自分との差は、少しは縮めることができたのではないか。

 小隊対抗模擬戦トーナメントで優勝して父ラインハルトに認められたら、兄ジークとの差をもっと縮める事ができる。

 アレクは、小隊対抗模擬戦トーナメントで優勝したいという決意を新たにする。



 アレクたちが人形劇の前で立ち止まっていると、エルザが屋台で買ったであろう串焼きを手にアレクの元にやってくる。

 エルザは、笑顔でアレクに串焼きを差し出す。

「はい、アレク。ア~ン」

「ア~ン」

 アレクは、エルザの持ってきた串焼きを一口食べる。

 ニンニクとショウガの効いた鶏肉のような食感に、肉の間に挟んである辛みのある付け合わせが食欲をそそる。

「んん? 鶏肉? ……美味い」

 アレクの言葉にエルザは満面の笑みを浮かべて答える。

「でしょ?」

 アレクは、エルザから串焼きを受け取ると、食べ続ける。

 エルザは、ニコニコと笑顔を浮かべ、アレクが串焼きを食べ続ける様子を眺めていた。

 アレクは、串焼きを食べ終わるとエルザに尋ねる。

「美味しかった。……鶏肉みたいだったけど、何の串焼きなんだ?」

 エルザは、満面の笑みで答える。

「『スッポンと赤マムシのにんにく添え』の串焼きよ。『精力絶倫』の魔法薬もトッピングされてるのよ!」

 エルザの言葉にアレクたちは驚く。

 アルは口を開く。

「スッポンと赤マムシの肉の間に挟んであったアレって、にんにくだったのか?」

 エルザが答える。

「そうよ!」

 アルは、エルザの答えを聞いたアレクの心配をする。

「おいおい……、スッポンに、赤マムシに、ニンニク五個だぞ? それに『精力絶倫』の魔法薬!? ……アレク、大丈夫か? アレ全部食べたら、鼻血出るんじゃないか??」

 アレクが答える。

「……なんか、夜、眠れなくなりそうだな。明日は試合があるのに……」

 エルザはアレクの腕を取って告げる。

「え~。眠らなくていいじゃん。アレを食べたからには、きっと一晩中、オチ●●ンはギンギンよ? エルザちゃんがアレクのお相手するんだから!」

 アレクは苦笑いしながら答える。

「いや。試合前日に徹夜は無いわ」

 エルザは、口を尖らせて不満を口にする。

「ぶ~。ルイーゼは毎日抱かれているのに~」

 ナディアは、アレクとエルザのやり取りを見ていたが、アレクと腕を組むと耳元でささやく。

「大丈夫よ、アレク。私が眠りの精霊を召喚して、ぐっすり眠れるようにするから。だから今夜は私と一緒に寝ましょう」

 ナディアの話を聞いたエルザが抗議する。

「ああっ!? ナディア! ズルい! 私がアレクに精力料理を食べさせたのに、一晩中ギンギンなアレクのオチ●●ンを独り占めする気ね!」

 ナディアは目論見がバレたため、横目でエルザをチラッと見ながら短く舌打ちする。

「チッ!」

 エルザとナディアのやり取りを見ていたアレクとアルは、二人で顔を見合わせて苦笑いする。



 アレクたちが通りに目をやると、ルドルフ親子が居た。

 母親らしき女性がルドルフに告げる。

「ルドルフ。しっかりね!」

「ああ」

 ルドルフは、言葉少なげにそう答えると、グリフォン小隊の試合会場に向けて歩いて行った。

 エルザは小隊の皆に尋ねる。

「え? ルドルフが一緒に居た、あの女の人って誰? ルドルフのお母さん??」

 アレクが答える。

「……話を聞いた限りでは、そうだろうね」

 アレクたちが見たルドルフの母親は、アレクの母であるナナイと同年代の、栗毛でおさげ髪、茶色の瞳の明るく快活な女性であった。
 
 ナディアは呟く。

「ルドルフと違って、お母さんは明るい感じの人ね」

 ナタリーが答える。

「そうね。明るくて、愛嬌があって。……良い人みたい」

 ルイーゼは、ルドルフの母親の顔を見て、訝しむ。

(あの女の人の顔、どこかで見た気がする……? たしか、皇宮で……?)

 アレクはルイーゼに話し掛ける。

「どうしたんだ? ルイーゼ? 考え込んで?」

 ルイーゼは断片的であいまいな記憶のことは口にせず、目にした印象を答える。

「ルドルフは、口数が少なくて暗いのに、お母さんは明るい感じの人なんだなって」

 アルは口を開く。

「まぁ、これからルドルフたち、グリフォン小隊の試合だし、みんなで見に行こうぜ」

 トゥルムとドムトリーが同意する。

「そうだな」

 アレクたちもルドルフたちグリフォン小隊の試合会場へ向かって行った。

 

 アレクたちは、第八試合となるルドルフたちグリフォン小隊の試合会場に着いた。

 アレクは口を開く。

「ルドルフたちの試合会場も『塹壕戦』なんだな」

 アルが答える。

「奴らの対戦相手は、二年生のイオニア小隊か。一回戦目は、どこの小隊も塹壕戦みたいだ」

 トゥルムは口を開く。

「皆、試合が始まったぞ」



 試合が始まると、ルドルフたちグリフォン小隊、そして二年生のイオニア小隊も塹壕に入り、離れた場所から、魔法や弓矢や小型の投石器(スリング)などで互いに攻撃しながら、少しづつ互いの距離を詰めていく。

 アルは解説する。

「……アレが『塹壕戦』の普通の戦い方だろう? いきなり突撃をカマしたオレたちが珍しいって事だな」

 トゥルムが大声で笑う。

「そうだろうな。普通、塹壕に対して、むやみに突撃したりはしない」

 ルドルフたちは、ギリギリまで近づくと、一斉に突撃する。

 第八試合でただ一人の中堅職『騎士』であるルドルフは、近接戦闘で二年生を圧倒する。

 アルは戦況を解説する。

「グリフォン小隊は、騎士のルドルフと戦士が三人、僧侶に魔導師二人に斥候か。……イオニア小隊は、戦士二人に斥候と猛獣(ビースト)使い(テイマー)、僧侶二人に魔導師が二人……。まぁ、戦力的にはグリフォン小隊の方が上だわな」

 ナタリーは、アルの解説を聞いて驚く。

猛獣(ビースト)使い(テイマー)!?」

 ルイーゼも驚く。

「珍しいわね。猛獣(ビースト)使い(テイマー)なんて」

 アルは苦笑いしながら続ける。

「トーナメントは、『猛獣禁止』だし。武器は鞭だけで防御力は皆無。遠距離も近接もダメって、使えない職種だろ……」

 トゥルムは苦笑いしながら答える。

「……終わってるな」

 ドミトリーは口を開く。

「皆、決着がついたぞ。グリフォン小隊が勝ったようだ」

 アレクたちが試合会場を見ると、ルドルフが奪取した旗を高く掲げて振っていた。



 貴賓席で試合を見ていたジークは傍らのラインハルトに話し掛ける。

「父上。あの騎士の隊長は、なかなかやるようですな」

 ジークの言葉を聞いたラインハルトが答える。

「名前は、ルドルフ・ヘーゲルだ」
 
 ジークは、ラインハルトの答えを聞いて驚く。

「……小隊の隊長の名前など、よく御存じで」

 ラインハルトは、素っ気なく答える。

「まぁな」




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--小隊対抗模擬戦トーナメント 開始から二日目の昼過ぎ。
 トーナメントの試合は、一日四試合ずつ行われ、今日はアレクたちの小隊の対戦は無く、第五試合から第八試合までが行われていた。
 試合が無いアレクたちは昼食を済ませると、制服姿で試合会場周辺を散策していた。
 陶器屋、毛皮屋、服屋や木製品屋、料理やお菓子といった出店が並び、お祭りの縁日のような賑わいを見せる。
 会場周辺では、芸人一座によるいくつものアトラクションも行われていた。
 綱渡り、手品、人形劇、詠会、占いなどなど、多くの人だかりができていた。
 人形遣いが小さなステージで『革命戦役』を物語として演じており、アレクたちは目を止める。
 帝国軍要塞『|死の山《ディアトロフ》』での革命党の幹部たちと、ラインハルトたちの決戦。
 輸送飛空艇に乗って逃げる革命党の幹部たちを、飛空艇に乗ったラインハルトたちが撃墜する。
 帝都に向かう帝国軍要塞『|死の山《ディアトロフ》』を、爆炎の大魔導師ハリッシュが『|隕石落とし《メテオ・ストライク》』で破壊する。
 それぞれの名場面で観衆は沸き立ち、ステージに拍手喝さいを送っていた。
 アレクは、傍らのルイーゼに話し掛ける。
「『革命戦役』は実在の歴史なんだが、英雄譚にもなっているんだな」
「そうね。十七年前の事なのに、伝説に昇華されているのかも」
「伝説か……」
 そう呟くと、アレクは自分の両親が伝説の主人公となっていることに想いを巡らせる。
 アレクの父、皇帝ラインハルトは、革命戦役で革命政府を倒した初代ユニコーン小隊の隊長であった。 
 そして、同じ小隊で副官を務めた母ナナイと結婚した。
 両親が英雄であると、その子供に対しても周囲は期待を向ける。
 黒い剣士ジカイラと氷の魔女ヒナの息子であるアルや、爆炎の大魔導師ハリッシュと大召喚師クリシュナの娘であるナタリーは、両親の名に恥じない才能と実力を持っている。
 アレクの長兄であるジークは、懸命な努力の結果、帝国最年少の|上級騎士《パラディン》になり士官学校を首席で飛び級で卒業、トラキア戦役で帝国を勝利に導いた。
 対して自分はどうか。
 士官学校に入学して中堅職の騎士になり、トラキア戦役で活躍して帝国騎士十字章を叙勲された。
 兄であるジークと自分との差は、少しは縮めることができたのではないか。
 小隊対抗模擬戦トーナメントで優勝して父ラインハルトに認められたら、兄ジークとの差をもっと縮める事ができる。
 アレクは、小隊対抗模擬戦トーナメントで優勝したいという決意を新たにする。
 アレクたちが人形劇の前で立ち止まっていると、エルザが屋台で買ったであろう串焼きを手にアレクの元にやってくる。
 エルザは、笑顔でアレクに串焼きを差し出す。
「はい、アレク。ア~ン」
「ア~ン」
 アレクは、エルザの持ってきた串焼きを一口食べる。
 ニンニクとショウガの効いた鶏肉のような食感に、肉の間に挟んである辛みのある付け合わせが食欲をそそる。
「んん? 鶏肉? ……美味い」
 アレクの言葉にエルザは満面の笑みを浮かべて答える。
「でしょ?」
 アレクは、エルザから串焼きを受け取ると、食べ続ける。
 エルザは、ニコニコと笑顔を浮かべ、アレクが串焼きを食べ続ける様子を眺めていた。
 アレクは、串焼きを食べ終わるとエルザに尋ねる。
「美味しかった。……鶏肉みたいだったけど、何の串焼きなんだ?」
 エルザは、満面の笑みで答える。
「『スッポンと赤マムシのにんにく添え』の串焼きよ。『精力絶倫』の魔法薬もトッピングされてるのよ!」
 エルザの言葉にアレクたちは驚く。
 アルは口を開く。
「スッポンと赤マムシの肉の間に挟んであったアレって、にんにくだったのか?」
 エルザが答える。
「そうよ!」
 アルは、エルザの答えを聞いたアレクの心配をする。
「おいおい……、スッポンに、赤マムシに、ニンニク五個だぞ? それに『精力絶倫』の魔法薬!? ……アレク、大丈夫か? アレ全部食べたら、鼻血出るんじゃないか??」
 アレクが答える。
「……なんか、夜、眠れなくなりそうだな。明日は試合があるのに……」
 エルザはアレクの腕を取って告げる。
「え~。眠らなくていいじゃん。アレを食べたからには、きっと一晩中、オチ●●ンはギンギンよ? エルザちゃんがアレクのお相手するんだから!」
 アレクは苦笑いしながら答える。
「いや。試合前日に徹夜は無いわ」
 エルザは、口を尖らせて不満を口にする。
「ぶ~。ルイーゼは毎日抱かれているのに~」
 ナディアは、アレクとエルザのやり取りを見ていたが、アレクと腕を組むと耳元でささやく。
「大丈夫よ、アレク。私が眠りの精霊を召喚して、ぐっすり眠れるようにするから。だから今夜は私と一緒に寝ましょう」
 ナディアの話を聞いたエルザが抗議する。
「ああっ!? ナディア! ズルい! 私がアレクに精力料理を食べさせたのに、一晩中ギンギンなアレクのオチ●●ンを独り占めする気ね!」
 ナディアは目論見がバレたため、横目でエルザをチラッと見ながら短く舌打ちする。
「チッ!」
 エルザとナディアのやり取りを見ていたアレクとアルは、二人で顔を見合わせて苦笑いする。
 アレクたちが通りに目をやると、ルドルフ親子が居た。
 母親らしき女性がルドルフに告げる。
「ルドルフ。しっかりね!」
「ああ」
 ルドルフは、言葉少なげにそう答えると、グリフォン小隊の試合会場に向けて歩いて行った。
 エルザは小隊の皆に尋ねる。
「え? ルドルフが一緒に居た、あの女の人って誰? ルドルフのお母さん??」
 アレクが答える。
「……話を聞いた限りでは、そうだろうね」
 アレクたちが見たルドルフの母親は、アレクの母であるナナイと同年代の、栗毛でおさげ髪、茶色の瞳の明るく快活な女性であった。
 ナディアは呟く。
「ルドルフと違って、お母さんは明るい感じの人ね」
 ナタリーが答える。
「そうね。明るくて、愛嬌があって。……良い人みたい」
 ルイーゼは、ルドルフの母親の顔を見て、訝しむ。
(あの女の人の顔、どこかで見た気がする……? たしか、皇宮で……?)
 アレクはルイーゼに話し掛ける。
「どうしたんだ? ルイーゼ? 考え込んで?」
 ルイーゼは断片的であいまいな記憶のことは口にせず、目にした印象を答える。
「ルドルフは、口数が少なくて暗いのに、お母さんは明るい感じの人なんだなって」
 アルは口を開く。
「まぁ、これからルドルフたち、グリフォン小隊の試合だし、みんなで見に行こうぜ」
 トゥルムとドムトリーが同意する。
「そうだな」
 アレクたちもルドルフたちグリフォン小隊の試合会場へ向かって行った。
 アレクたちは、第八試合となるルドルフたちグリフォン小隊の試合会場に着いた。
 アレクは口を開く。
「ルドルフたちの試合会場も『塹壕戦』なんだな」
 アルが答える。
「奴らの対戦相手は、二年生のイオニア小隊か。一回戦目は、どこの小隊も塹壕戦みたいだ」
 トゥルムは口を開く。
「皆、試合が始まったぞ」
 試合が始まると、ルドルフたちグリフォン小隊、そして二年生のイオニア小隊も塹壕に入り、離れた場所から、魔法や弓矢や小型の|投石器《スリング》などで互いに攻撃しながら、少しづつ互いの距離を詰めていく。
 アルは解説する。
「……アレが『塹壕戦』の普通の戦い方だろう? いきなり突撃をカマしたオレたちが珍しいって事だな」
 トゥルムが大声で笑う。
「そうだろうな。普通、塹壕に対して、むやみに突撃したりはしない」
 ルドルフたちは、ギリギリまで近づくと、一斉に突撃する。
 第八試合でただ一人の中堅職『騎士』であるルドルフは、近接戦闘で二年生を圧倒する。
 アルは戦況を解説する。
「グリフォン小隊は、騎士のルドルフと戦士が三人、僧侶に魔導師二人に斥候か。……イオニア小隊は、戦士二人に斥候と|猛獣《ビースト》|使い《テイマー》、僧侶二人に魔導師が二人……。まぁ、戦力的にはグリフォン小隊の方が上だわな」
 ナタリーは、アルの解説を聞いて驚く。
「|猛獣《ビースト》|使い《テイマー》!?」
 ルイーゼも驚く。
「珍しいわね。|猛獣《ビースト》|使い《テイマー》なんて」
 アルは苦笑いしながら続ける。
「トーナメントは、『猛獣禁止』だし。武器は鞭だけで防御力は皆無。遠距離も近接もダメって、使えない職種だろ……」
 トゥルムは苦笑いしながら答える。
「……終わってるな」
 ドミトリーは口を開く。
「皆、決着がついたぞ。グリフォン小隊が勝ったようだ」
 アレクたちが試合会場を見ると、ルドルフが奪取した旗を高く掲げて振っていた。
 貴賓席で試合を見ていたジークは傍らのラインハルトに話し掛ける。
「父上。あの騎士の隊長は、なかなかやるようですな」
 ジークの言葉を聞いたラインハルトが答える。
「名前は、ルドルフ・ヘーゲルだ」
 ジークは、ラインハルトの答えを聞いて驚く。
「……小隊の隊長の名前など、よく御存じで」
 ラインハルトは、素っ気なく答える。
「まぁな」