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第百九話 不死王と真祖吸血鬼の戯れ

ー/ー



 エリシスは、情報を聞き出す前に声を掛けてきた男を殺してしまい、その場に立ったまま考え込む。

 リリーは、左手でエリシスが殺した男の死体を引きずったまま、右手で路地裏の路面にある下水道の鉄蓋を開けると、その中に男の死体を投げ込む。

 鉄蓋を開けた下水道に水の中に男の死体が落ちる音が響く。

 リリーは、重さなど感じないかのように鉄蓋を閉じると、エリシスに尋ねる。

「……どうします? また、さっきの店に戻りますか?」

 何も名案が思い浮かばなかったエリシスは、リリーの提案に従う。

「そうね。とりあえず、また、店に行きましょ」

 エリシスとリリーは、再び大通りに面した安酒場に戻った。



 エリシスとリリーは安酒場に戻ると、また同じ席に座る。

 エリシスは、再び店主に同じ酒を頼む。

「へ、へい」

 店主は二人に怯えながら、先ほど二人が飲んでいた酒とグラスを用意する。

 程なく、一人の男がエリシスに話し掛けてくる。

「……アンタ。さっきの男はどうしたんだ?」

 エリシスは、笑顔で答える。

「彼、飲み過ぎたみたいで、先に帰ったわよ」

 エリシスに話し掛けた男の後ろで、もう一人の男が叫ぶ。

「う、嘘だ! 俺は見たぞ! 見たんだ! お前たち、あいつを殺して、下水道に投げ込んだだろう!?」

 エリシスとリリーは、叫んだ男を横目で睨む。

 店の奥から、十人程の男たちがエリシスとリリーの周りに集まり、取り囲む。

 エリシスに話し掛けた男が呟く。

「ウチのモンを()ったとあっちゃあ、そのまま帰す訳にはいかねぇなぁ。お姉さん達」

 二人を取り囲んでいる男の一人が口を開く。

「フナムシ一家の縄張り(シマ)で、ナメた真似しやがって!」

 エリシスに話し掛けた男が口を開く。

「……顔を貸して貰おうか」

 エリシスは、男に微笑み掛ける。

「そうね。ここじゃ、店に迷惑が掛かるわ。そうしましょう。行くわよ。リリー」

「はい」

 フナムシ一家の男たちは、エリシスとリリーを取り囲んだまま、二人を倉庫街にあるフナムシ一家が根城にしている事務所に馬車で連れて行った。



--帝都 倉庫街 フナムシ一家が根城にしている事務所。
 
 男たちは、馬車の中でエリシスとリリーの両手を荒縄で縛るが、エリシスとリリーは抵抗せず、そのまま両手を縛らせていた。

 半時ほどの後、馬車はフナムシ一家が根城にしている事務所に到着し、男たちはエリシスとリリーを事務所の中に連れ込んだ。

 事務所の奥から幹部らしき二人の男が出てくる。

 幹部らしき男の一人が口を開く。

「なんだ? その二人の女は?」

 男の一人が呟く。 

「ラスタスさん。こいつら、ウチのモンを殺った女達でさぁ。……こいつら、フナムシ一家の根城に連れ込まれたってのに、ビビりやしねぇ」

 ラスタスと呼ばれた男が口を開く。

「こりゃあ、相当、ナメられてるな」

 もう一人の幹部らしき男は、エリシスの顔を見るなり、恐怖に顔を引きつらせて絶叫し、腰を抜かして、その場にへたり込む。

「ヒィイイヤァアアアア! あ、あの女だぁああああ!」

 ラスタスが絶叫した男に話し掛ける。

「どうした、ブリタン? こいつら、知り合いか?」

 ブリタンと呼ばれた男、ハンタ・ブリタンは、十七年前、帝都の安酒場の路地裏でエリシスに麻痺させられた挙句、男性器を引き千切られ、額に呪いの刻印を刻まれていた。

玉無し(ノーボール)臆病者(チキン)・ブリタン』と。

 ハンタ・ブリタンは、ラスタスに叫ぶように答える。

「オ、オレのタマを引きちぎった女だぁああ!」

 ハンタ・ブリタンの言葉に、ラスタスはエリシスとリリーに対して身構える。

「なんだと!?」

 エリシスがハンタ・ブリタンに微笑みながら話し掛ける。

「あら? 貴方、まだ生きてたの?」

 そう言うと、エリシスとリリーは、自分の両手を縛っている荒縄を引き千切り、両手の白い手袋を外してポケットに仕舞う。

 この二人は、素手になることが戦闘準備であった。

 エリシスは、楽しそうにフナムシ一家の者達に告げる。

「ふふふ。貴方達に出来ることは『祈ること』だけよ」

 両手を縛る荒縄を簡単に引き千切って見せた二人に、フナムシ一家の男たちは、後退(あとずさ)りする。

 後退(あとずさ)りする男たちの姿を見たリリーが『フッ』と鼻で笑うと、男の一人がリリーを右手で平手打ちしようとする。

 リリーは、左手の甲で男の平手打ちを受けると、右手で正拳で男の顔を突く。

 リリーの正拳は、男の顔面を砕いて陥没させただけではなく、男の顔にめり込んで両目の眼球が眼窩から飛び出す。

 顔面を砕かれた男は即死し、手足を痙攣させながら床に崩れ落ちる。

 リリーは、自分の右手の拳に付いた男の血を舐めて呟く。

「ふふ。……顔はイマイチでしたが、血の味は良い」

 エリシスがリリーを諭す。

「リリー。簡単に殺しちゃ、つまらないわよ」

「この(アマ)が!」

 目の前で仲間が殺された男たちは、湾曲剣(シミター)片手剣(ブロードソード)を手にすると、一斉にエリシスとリリーに斬り掛かる。

 二人に斬り掛かった男たちは、十人であった。

 エリシスとリリーの身体を、それぞれ五本の剣が貫く。

 剣で身体を貫かれた二人は、血を流すことも、苦痛を感じることも無く、平然と立っていた。

 リリーは、両手の爪を伸ばすと、両腕を広げるように自分に剣を突き刺している五人の男たちを伸ばした爪で斬り付けて薙ぎ払う。

 リリーの爪は、鋭利な刃物のように一瞬で五人の男たちの身体をバラバラに切り裂いて、肉片に変えた。

「なっ!?」

 エリシスを剣で突き刺している男たちは、すぐ隣でリリーに一撃で仲間の五人が瞬殺されたことに驚く。

 驚愕する男たちを他所に、リリーは身体に刺さっている剣を引き抜きながらエリシスに答える。

「エリシス。殺戮を楽しむより、情報を聞き出すことが先ですよ」

「五人も瞬殺した貴女が、それを言うの?」

 エリシスは、自分の身体に剣を突き立てている五人の男のうち、左右の手で二人の男の手に触れる。



吸収(ドレイン)接触(・タッチ)

 不死王(リッチー)技能(スキル)であり、接触した相手の生命力や魔力を奪う技能(スキル)である。

 エリシスに触れられた男たちは、生命力を吸い取られ、瞬く間に体が干からびていく。

 生命力を全て吸い取られた二人の男たちは、干からびたミイラのような姿になって床に倒れる。

「うわぁああああ!」 

 ミイラのような姿になった仲間の姿を見て、エリシスを剣で突き刺していた残りの三人の男たちは、怯えてエリシスを突き刺していた剣を手放し、エリシスから離れる。



 エリシスは、自分の身体に突き刺さっている剣を一本ずつ抜くと、床に捨てる。

 剣が抜けたエリシスの身体は、みるみる傷口が塞がって元に戻っていく。

 エリシスは、剣を突き刺していた三人のうち、右側の男に手をかざして魔法を唱える。

гниль,(グニー、)
(腐れよ。)

Благосло(ブラゴスロ)вение(ヴェニーイェ・) богини(ボギーニ・) яда,(ヤダ、)болезней(ボレズニェ・) и(イ・) коррупции(カロッツェ)
(毒と病気と腐敗の女神ブラグザバスの祝福。)

Возвра(ボズラ)щение(シェーニェ・) в(ヴ・) почву(フォーチョヴ)
(土に還れ。)

 エリシスの掌に魔法陣が現れると、男の全身は、たちまち赤黒く変色して化膿し、腐って崩れ落ちていく。

「ぎゃああああ! 助けてくれぇ!」

 エリシスは、サディスティックな笑みを浮かべ、高笑いする。

「あーはははは。生きたまま腐りなさい」 



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 エリシスは、情報を聞き出す前に声を掛けてきた男を殺してしまい、その場に立ったまま考え込む。
 リリーは、左手でエリシスが殺した男の死体を引きずったまま、右手で路地裏の路面にある下水道の鉄蓋を開けると、その中に男の死体を投げ込む。
 鉄蓋を開けた下水道に水の中に男の死体が落ちる音が響く。
 リリーは、重さなど感じないかのように鉄蓋を閉じると、エリシスに尋ねる。
「……どうします? また、さっきの店に戻りますか?」
 何も名案が思い浮かばなかったエリシスは、リリーの提案に従う。
「そうね。とりあえず、また、店に行きましょ」
 エリシスとリリーは、再び大通りに面した安酒場に戻った。
 エリシスとリリーは安酒場に戻ると、また同じ席に座る。
 エリシスは、再び店主に同じ酒を頼む。
「へ、へい」
 店主は二人に怯えながら、先ほど二人が飲んでいた酒とグラスを用意する。
 程なく、一人の男がエリシスに話し掛けてくる。
「……アンタ。さっきの男はどうしたんだ?」
 エリシスは、笑顔で答える。
「彼、飲み過ぎたみたいで、先に帰ったわよ」
 エリシスに話し掛けた男の後ろで、もう一人の男が叫ぶ。
「う、嘘だ! 俺は見たぞ! 見たんだ! お前たち、あいつを殺して、下水道に投げ込んだだろう!?」
 エリシスとリリーは、叫んだ男を横目で睨む。
 店の奥から、十人程の男たちがエリシスとリリーの周りに集まり、取り囲む。
 エリシスに話し掛けた男が呟く。
「ウチのモンを|殺《や》ったとあっちゃあ、そのまま帰す訳にはいかねぇなぁ。お姉さん達」
 二人を取り囲んでいる男の一人が口を開く。
「フナムシ一家の|縄張り《シマ》で、ナメた真似しやがって!」
 エリシスに話し掛けた男が口を開く。
「……顔を貸して貰おうか」
 エリシスは、男に微笑み掛ける。
「そうね。ここじゃ、店に迷惑が掛かるわ。そうしましょう。行くわよ。リリー」
「はい」
 フナムシ一家の男たちは、エリシスとリリーを取り囲んだまま、二人を倉庫街にあるフナムシ一家が根城にしている事務所に馬車で連れて行った。
--帝都 倉庫街 フナムシ一家が根城にしている事務所。
 男たちは、馬車の中でエリシスとリリーの両手を荒縄で縛るが、エリシスとリリーは抵抗せず、そのまま両手を縛らせていた。
 半時ほどの後、馬車はフナムシ一家が根城にしている事務所に到着し、男たちはエリシスとリリーを事務所の中に連れ込んだ。
 事務所の奥から幹部らしき二人の男が出てくる。
 幹部らしき男の一人が口を開く。
「なんだ? その二人の女は?」
 男の一人が呟く。 
「ラスタスさん。こいつら、ウチのモンを殺った女達でさぁ。……こいつら、フナムシ一家の根城に連れ込まれたってのに、ビビりやしねぇ」
 ラスタスと呼ばれた男が口を開く。
「こりゃあ、相当、ナメられてるな」
 もう一人の幹部らしき男は、エリシスの顔を見るなり、恐怖に顔を引きつらせて絶叫し、腰を抜かして、その場にへたり込む。
「ヒィイイヤァアアアア! あ、あの女だぁああああ!」
 ラスタスが絶叫した男に話し掛ける。
「どうした、ブリタン? こいつら、知り合いか?」
 ブリタンと呼ばれた男、ハンタ・ブリタンは、十七年前、帝都の安酒場の路地裏でエリシスに麻痺させられた挙句、男性器を引き千切られ、額に呪いの刻印を刻まれていた。
『|玉無し《ノーボール》・|臆病者《チキン》・ブリタン』と。
 ハンタ・ブリタンは、ラスタスに叫ぶように答える。
「オ、オレのタマを引きちぎった女だぁああ!」
 ハンタ・ブリタンの言葉に、ラスタスはエリシスとリリーに対して身構える。
「なんだと!?」
 エリシスがハンタ・ブリタンに微笑みながら話し掛ける。
「あら? 貴方、まだ生きてたの?」
 そう言うと、エリシスとリリーは、自分の両手を縛っている荒縄を引き千切り、両手の白い手袋を外してポケットに仕舞う。
 この二人は、素手になることが戦闘準備であった。
 エリシスは、楽しそうにフナムシ一家の者達に告げる。
「ふふふ。貴方達に出来ることは『祈ること』だけよ」
 両手を縛る荒縄を簡単に引き千切って見せた二人に、フナムシ一家の男たちは、|後退《あとずさ》りする。
 |後退《あとずさ》りする男たちの姿を見たリリーが『フッ』と鼻で笑うと、男の一人がリリーを右手で平手打ちしようとする。
 リリーは、左手の甲で男の平手打ちを受けると、右手で正拳で男の顔を突く。
 リリーの正拳は、男の顔面を砕いて陥没させただけではなく、男の顔にめり込んで両目の眼球が眼窩から飛び出す。
 顔面を砕かれた男は即死し、手足を痙攣させながら床に崩れ落ちる。
 リリーは、自分の右手の拳に付いた男の血を舐めて呟く。
「ふふ。……顔はイマイチでしたが、血の味は良い」
 エリシスがリリーを諭す。
「リリー。簡単に殺しちゃ、つまらないわよ」
「この|女《アマ》が!」
 目の前で仲間が殺された男たちは、|湾曲剣《シミター》や|片手剣《ブロードソード》を手にすると、一斉にエリシスとリリーに斬り掛かる。
 二人に斬り掛かった男たちは、十人であった。
 エリシスとリリーの身体を、それぞれ五本の剣が貫く。
 剣で身体を貫かれた二人は、血を流すことも、苦痛を感じることも無く、平然と立っていた。
 リリーは、両手の爪を伸ばすと、両腕を広げるように自分に剣を突き刺している五人の男たちを伸ばした爪で斬り付けて薙ぎ払う。
 リリーの爪は、鋭利な刃物のように一瞬で五人の男たちの身体をバラバラに切り裂いて、肉片に変えた。
「なっ!?」
 エリシスを剣で突き刺している男たちは、すぐ隣でリリーに一撃で仲間の五人が瞬殺されたことに驚く。
 驚愕する男たちを他所に、リリーは身体に刺さっている剣を引き抜きながらエリシスに答える。
「エリシス。殺戮を楽しむより、情報を聞き出すことが先ですよ」
「五人も瞬殺した貴女が、それを言うの?」
 エリシスは、自分の身体に剣を突き立てている五人の男のうち、左右の手で二人の男の手に触れる。
<|吸収《ドレイン》|接触《・タッチ》>
 |不死王《リッチー》の|技能《スキル》であり、接触した相手の生命力や魔力を奪う|技能《スキル》である。
 エリシスに触れられた男たちは、生命力を吸い取られ、瞬く間に体が干からびていく。
 生命力を全て吸い取られた二人の男たちは、干からびたミイラのような姿になって床に倒れる。
「うわぁああああ!」 
 ミイラのような姿になった仲間の姿を見て、エリシスを剣で突き刺していた残りの三人の男たちは、怯えてエリシスを突き刺していた剣を手放し、エリシスから離れる。
 エリシスは、自分の身体に突き刺さっている剣を一本ずつ抜くと、床に捨てる。
 剣が抜けたエリシスの身体は、みるみる傷口が塞がって元に戻っていく。
 エリシスは、剣を突き刺していた三人のうち、右側の男に手をかざして魔法を唱える。
「|гниль,《グニー、》」
(腐れよ。)
「|Благосло《ブラゴスロ》|вение《ヴェニーイェ・》 |богини《ボギーニ・》 |яда, 《ヤダ、》|болезней《ボレズニェ・》 |и《イ・》 |коррупции《カロッツェ》」
(毒と病気と腐敗の女神ブラグザバスの祝福。)
「|Возвра《ボズラ》|щение《シェーニェ・》 | в《ヴ・》 |почву《フォーチョヴ》」
(土に還れ。)
 エリシスの掌に魔法陣が現れると、男の全身は、たちまち赤黒く変色して化膿し、腐って崩れ落ちていく。
「ぎゃああああ! 助けてくれぇ!」
 エリシスは、サディスティックな笑みを浮かべ、高笑いする。
「あーはははは。生きたまま腐りなさい」