第百七話 半グレ集団『腹筋同盟』
ー/ー アレクは、部屋から出て格納庫に向かう。
アレクの両親は革命戦役で、この飛行空母ユニコーン・ゼロに乗り込んで帝国各地を巡り、明日をも知れぬ戦場を戦い抜き、戦いのさなかに、互いを想い、愛を育んでいた。
(……父上……母上)
アレクは、そのことに想いを巡らせる。
それに比べ、皇宮で何不自由無く自堕落に暮らし、メイドたちに悪戯していた過去の自分が恥ずかしくなる。
鼠人との戦いに勝利し、父ラインハルトから帝国騎士十字章を授与されて『良くやった』と褒められた。アレク自身、嬉しかったし、『少しは自分もマシになったのではないか』とも思う。
格納庫では、アルが愛用している斧槍を両手で持ちながら、その斧槍を睨んでいた。
アレクはアルに話し掛ける。
「どうしたんだ?」
「いや、今度の戦闘は酒場だろ? 屋内戦だよな?」
「そうだろうね」
「だとしたら、この斧槍じゃ、リーチが長すぎるよな……って」
「そうだな」
アルの言う通りであった。
戦場が広い屋外での野戦ならともかく、屋内戦では、斧槍は長過ぎて使い勝手が悪いことが想像できた。
「コイツの出番だな!」
アルはそう言うと、腰の鞘から海賊剣を抜き、一通り振り回すと、正眼に構えて見せる。
アレクはアルが構えた剣について尋ねる。
「その剣は……?」
アルは、自慢気にアレクに語る。
「へへ。父さんから貰った海賊剣さ。父さんは、この海賊剣で革命戦役を戦ったんだ」
アルの自慢にアレクは素直に感心する。
「へぇ~。それは凄いな」
「コイツなら、屋内戦も船の中の戦いも、両方イケるだろ?」
「そうだね」
アレクはアルとは違い、まだ両親から自分が使っていた武器や道具を貰ったことなど無く、素直にアルが羨ましく思えた。
アレクとアルが格納庫で屋内戦について話し合っていると、トゥルムとドミトリーも格納庫にやって来る。
トゥルムもアルと同じ悩みを抱えていた。
「私も屋内戦は、三叉槍では長過ぎると思っていたんだ」
トゥルムは槍術士であり、武器は三叉槍を使用していた。
しかし、狭い屋内戦に向いていないことは明らかであった。
ドミトリーがトゥルムに話し掛ける。
「男子たるもの、鍛え上げた自らの肉体こそ武器であろう!」
拳を握って構えを見せるドミトリーは、素手で戦う修道僧であった。
「ううむ……」
ドミトリーの言葉に真面目なトゥルムは考え込んでしまう。
そこにユニコーン小隊の女の子たちが格納庫にやって来る。
トゥルムの悩みを聞いたナディアが口を開く。
「なら、コレを使ったら?」
ナディアは自分の腰から戦槌を取り出すと、トゥルムに見せる。
「おぉ! 済まないな。早速、借りるとしよう!」
槍術士のトゥルムにとって、戦槌は専門外の武器であったが、蜥蜴人であり、体格も腕力もあるため、扱うことは出来た。
--夕刻。
程なくアレクたちの乗る飛行空母ユニコーン・ゼロは、帝都上空に到着。
ジカイラをはじめ、各小隊は格納庫に集合すると、ジカイラは地図を広げて作戦行動を説明し始める。
「傾注せよ。これより作戦について説明する。……オレとお前達四個小隊で、帝都の繁華街ジェノバ通にある『エインヘリアル』という酒場に突入し、半グレ集団『腹筋同盟』を襲撃する。……首領であるヴィッキー・ジントックを逮捕することが目的だ。正面からオレとユニコーン、グリフォンの二個小隊が突入する。セイレーン、フェンリルの二個小隊は裏口へ回れ」
「了解しました」
ジカイラが続ける。
「作戦行動の開始は今から三十分後だ。各員揚陸艇に乗り込んで待機しろ。以上だ」
ジカイラの説明を聞いたユニコーン、グリフォン、セイレーン、フェンリルの四個小隊は、格納庫の揚陸艇に乗り込んでいく。
--帝都 繁華街 ジェノバ通にある酒場『エインヘリアル』。
ランタンが室内を照らす薄暗い場末の酒場に、柄の悪い者たちがたむろしていた。
しょぼくれた店員が店の壁に飲食店組合のポスターを張り出す。
店員が『奉祝 皇太子ジークフリート殿下 御成婚』と皇太子と三人の妃たちの肖像が大きく描かれたポスターを張り終えると、店の奥から大男が歩いてやってくる。
大きな角の付いた兜を被り、バイキングメイルを着込んだその大男は、店員が張り出したポスターの端を掴むと一気に壁から引き剥がして破り捨てる。
しょぼくれた店員は、大男を恐れて店の奥に逃げるように去って行く。
大男は吐き捨てるように呟く。
「……皇太子に股を開いて命乞いをした売女め!」
売女とは、トラキアの王族であり皇太子第三妃となったフェリシアのことであった。
ポスターを破り捨てた大男の名はヴィッキー・ジントック。
半グレ集団『腹筋同盟』の首領であり、トラキア人であった。
ジントック自身は、思想的に独立派であったが、トラキア解放戦線に参加してはいなかった。
ジントックは、ポスターを破り捨てると、再び店の奥の自分のお気に入りの席に戻る。
勢い良く店の扉が開けられる。
漆黒の鎧に身を包んだ屈強な大男が入り口で声を張り上げる。
「皇帝陛下の勅命により、お前ら全員を逮捕する! 武器を捨てて、投降しろ!」
ジカイラであった。
ジカイラの宣言の後、直ぐに武装したアレクたちユニコーン小隊とルドルフ達グリフォン小隊が店の中に駆け込んで来る。
酒場の中は、カウンターのあるホールと、いくつかの区切られた部屋に分かれていた。
ホールにいた腹筋同盟のチンピラたちがダガーやナイフを手にアレクたちに襲い掛かる。
ルドルフ達グリフォン小隊がホールにいたチンピラたちと近接戦を繰り広げる。
ホールにいたチンピラの一人がダガーを抜き、アレクに襲い掛かってくる。
「おらぁ!」
アレクは、冷静にチンピラの動きを見ていた。
(……鼠人より遅い。ド素人だ)
アレクは、構えていた騎士剣の背で思い切りチンピラの頭を横殴りに殴りつける。
鈍い音と共にアレクに殴られたチンピラが倒れる。
(……弱い。こんなものか)
ルイーゼは、倒れたチンピラに後ろ手に手枷を付けると、アレクに微笑み掛ける。
「楽勝ね!」
アレクもルイーゼに微笑み返す。
「そうだね」
アルとナタリーは、区切られた小部屋に踏み込む。
小部屋にいた四人のチンピラたちはダガーやナイフを手に立ち上がろうとする。
アルは、構えた抜き身の海賊剣をチンピラたちの鼻先に突き付けながらチンピラたちに告げる。
「おおっと! ……止めといたほうが、お前達の身のためだぜ?」
アルの言葉にチンピラたちは一瞬、互いに顔を見合わせる。
次の瞬間、ナタリーが小部屋の中に顔を出して魔法を唱える。
「睡眠雲!」
小部屋にいたチンピラたちは、睡眠雲に包まれ、一斉に机に突っ伏して眠りこける。
アルが満面の笑みでナタリーに告げる。
「さすが、ナタリー!」
ナタリーも笑顔でアルに答える。
「任せて!」
トゥルムとドミトリーも区切られた小部屋に踏み込む。
小部屋の中には二人のチンピラがいた。
トゥルムは手にした戦槌でチンピラを殴りつける。
「ふんっ!」
トゥルムの戦槌は、鈍い音を立ててチンピラの頭に当たり、チンピラは白目を剥いて気絶する。
「くそっ!」
もう一人のチンピラは部屋から逃げ出そうとするが、ドミトリーが立ち塞がる。
「せいやぁ!」
ドミトリーの放った地獄突きがチンピラの顎下に炸裂し、チンピラは白目を剥いて卒倒した。
トゥルムはドミトリーに告げる。
「半グレとは、こんなものか」
ドミトリーは、手のひらでツルツルの自分の頭を撫でながら答える。
「うむ。こやつらは修行が足りんな」
エルザとナディアも区切られた小部屋に踏み込む。
小部屋の中では、一組の半裸の男女が睦あっていた。
半裸の男は、女を膝の上に乗せたまま叫ぶ。
「なんだ!? テメェら?」
「このぉ!」
エルザは、手加減無しに両手剣の背で男の顔を殴りつける。
「ごふっ!」
エルザの両手剣は男の顔面に炸裂し、男はそのまま痙攣して動かなくなった。
女は、男の膝の上に跨り、胸を開けたまま叫ぶ。
女は、男の膝の上に跨って胸を開けたまま叫ぶ。
「チョット! 何なの!? アンタたち!」
ナディアは、光の聖霊を召還すると女に差し向ける。
「来たれ、光の聖霊!」
ナディアが召還した光の聖霊は、女にぶつかると、光を放って砕け散る。
「ちょっと! まぁアアアッ!」
光の聖霊がぶつかった女は、感電して悲鳴を上げながら気絶し、男の膝の上から床の上にずり落ちた。
エルザとナディアは、気絶した男の顕になったままの男性器を覗き込む。
エルザは、机の上にあったスプーンで気絶した男の男性器をツンツンと突っ突き、検分しながら呟く。
「……小っちゃいわね~。アレクのと比べると」
ナディアも同意する。
「……ホント。まさに粗品ね」
ジカイラの声は、店の奥にいたジントックにも聞こえた。
ジントックは、立ち上がって呟く。
「ガサ入れだと!? 当局がここまで嗅ぎつけて来たのか!」
ジントックは、傍らにいた酒場女を押し退けて逃げ出そうとする。
逃げ出そうとするジントックの前にジカイラが立ち塞がる。
「ジントックだな? 投降しろ」
「クッ!」
ジントックはジカイラに殴り掛るが、ジカイラはジントックの拳を避けて、殴り返す。
ジカイラの拳がジントックの顔面に炸裂する。
「グハッ!」
ジントックは、席の横に置いてある自分の戦斧を取り出してジカイラに斬り付けようと振り上げる。
ジカイラは、素早く魔剣シグルドリーヴァを抜剣すると、戦斧を振り上げるジントックの喉元に突き付ける。
ジカイラは、喉元に剣先を突き付けられ戦斧を振り上げたまま動けないジントックを睨みつけて告げる。
「……鈍いんだよ。お前は」
ジカイラに剣を突き付けられ、動けずに固まるジントックを店の裏口から突入してきたセイレーン、フェンリルの各小隊の面々が手枷を付けて拘束する。
ユニコーン、グリフォン、セイレーン、フェンリルの各小隊長は、ジカイラの元に集まって来る。
アレクが各小隊を代表してジカイラに報告する。
「店にいた全員を拘束、逮捕しました。逃亡者はいません」
ジカイラが笑顔で答える。
「良くやった。上出来だ」
ジカイラと腕利きの四個小隊の襲撃作戦は、一人の犠牲も出さずに半グレ集団『腹筋同盟』を一網打尽にすることに成功したのであった。
アレクの両親は革命戦役で、この飛行空母ユニコーン・ゼロに乗り込んで帝国各地を巡り、明日をも知れぬ戦場を戦い抜き、戦いのさなかに、互いを想い、愛を育んでいた。
(……父上……母上)
アレクは、そのことに想いを巡らせる。
それに比べ、皇宮で何不自由無く自堕落に暮らし、メイドたちに悪戯していた過去の自分が恥ずかしくなる。
鼠人との戦いに勝利し、父ラインハルトから帝国騎士十字章を授与されて『良くやった』と褒められた。アレク自身、嬉しかったし、『少しは自分もマシになったのではないか』とも思う。
格納庫では、アルが愛用している斧槍を両手で持ちながら、その斧槍を睨んでいた。
アレクはアルに話し掛ける。
「どうしたんだ?」
「いや、今度の戦闘は酒場だろ? 屋内戦だよな?」
「そうだろうね」
「だとしたら、この斧槍じゃ、リーチが長すぎるよな……って」
「そうだな」
アルの言う通りであった。
戦場が広い屋外での野戦ならともかく、屋内戦では、斧槍は長過ぎて使い勝手が悪いことが想像できた。
「コイツの出番だな!」
アルはそう言うと、腰の鞘から海賊剣を抜き、一通り振り回すと、正眼に構えて見せる。
アレクはアルが構えた剣について尋ねる。
「その剣は……?」
アルは、自慢気にアレクに語る。
「へへ。父さんから貰った海賊剣さ。父さんは、この海賊剣で革命戦役を戦ったんだ」
アルの自慢にアレクは素直に感心する。
「へぇ~。それは凄いな」
「コイツなら、屋内戦も船の中の戦いも、両方イケるだろ?」
「そうだね」
アレクはアルとは違い、まだ両親から自分が使っていた武器や道具を貰ったことなど無く、素直にアルが羨ましく思えた。
アレクとアルが格納庫で屋内戦について話し合っていると、トゥルムとドミトリーも格納庫にやって来る。
トゥルムもアルと同じ悩みを抱えていた。
「私も屋内戦は、三叉槍では長過ぎると思っていたんだ」
トゥルムは槍術士であり、武器は三叉槍を使用していた。
しかし、狭い屋内戦に向いていないことは明らかであった。
ドミトリーがトゥルムに話し掛ける。
「男子たるもの、鍛え上げた自らの肉体こそ武器であろう!」
拳を握って構えを見せるドミトリーは、素手で戦う修道僧であった。
「ううむ……」
ドミトリーの言葉に真面目なトゥルムは考え込んでしまう。
そこにユニコーン小隊の女の子たちが格納庫にやって来る。
トゥルムの悩みを聞いたナディアが口を開く。
「なら、コレを使ったら?」
ナディアは自分の腰から戦槌を取り出すと、トゥルムに見せる。
「おぉ! 済まないな。早速、借りるとしよう!」
槍術士のトゥルムにとって、戦槌は専門外の武器であったが、蜥蜴人であり、体格も腕力もあるため、扱うことは出来た。
--夕刻。
程なくアレクたちの乗る飛行空母ユニコーン・ゼロは、帝都上空に到着。
ジカイラをはじめ、各小隊は格納庫に集合すると、ジカイラは地図を広げて作戦行動を説明し始める。
「傾注せよ。これより作戦について説明する。……オレとお前達四個小隊で、帝都の繁華街ジェノバ通にある『エインヘリアル』という酒場に突入し、半グレ集団『腹筋同盟』を襲撃する。……首領であるヴィッキー・ジントックを逮捕することが目的だ。正面からオレとユニコーン、グリフォンの二個小隊が突入する。セイレーン、フェンリルの二個小隊は裏口へ回れ」
「了解しました」
ジカイラが続ける。
「作戦行動の開始は今から三十分後だ。各員揚陸艇に乗り込んで待機しろ。以上だ」
ジカイラの説明を聞いたユニコーン、グリフォン、セイレーン、フェンリルの四個小隊は、格納庫の揚陸艇に乗り込んでいく。
--帝都 繁華街 ジェノバ通にある酒場『エインヘリアル』。
ランタンが室内を照らす薄暗い場末の酒場に、柄の悪い者たちがたむろしていた。
しょぼくれた店員が店の壁に飲食店組合のポスターを張り出す。
店員が『奉祝 皇太子ジークフリート殿下 御成婚』と皇太子と三人の妃たちの肖像が大きく描かれたポスターを張り終えると、店の奥から大男が歩いてやってくる。
大きな角の付いた兜を被り、バイキングメイルを着込んだその大男は、店員が張り出したポスターの端を掴むと一気に壁から引き剥がして破り捨てる。
しょぼくれた店員は、大男を恐れて店の奥に逃げるように去って行く。
大男は吐き捨てるように呟く。
「……皇太子に股を開いて命乞いをした売女め!」
売女とは、トラキアの王族であり皇太子第三妃となったフェリシアのことであった。
ポスターを破り捨てた大男の名はヴィッキー・ジントック。
半グレ集団『腹筋同盟』の首領であり、トラキア人であった。
ジントック自身は、思想的に独立派であったが、トラキア解放戦線に参加してはいなかった。
ジントックは、ポスターを破り捨てると、再び店の奥の自分のお気に入りの席に戻る。
勢い良く店の扉が開けられる。
漆黒の鎧に身を包んだ屈強な大男が入り口で声を張り上げる。
「皇帝陛下の勅命により、お前ら全員を逮捕する! 武器を捨てて、投降しろ!」
ジカイラであった。
ジカイラの宣言の後、直ぐに武装したアレクたちユニコーン小隊とルドルフ達グリフォン小隊が店の中に駆け込んで来る。
酒場の中は、カウンターのあるホールと、いくつかの区切られた部屋に分かれていた。
ホールにいた腹筋同盟のチンピラたちがダガーやナイフを手にアレクたちに襲い掛かる。
ルドルフ達グリフォン小隊がホールにいたチンピラたちと近接戦を繰り広げる。
ホールにいたチンピラの一人がダガーを抜き、アレクに襲い掛かってくる。
「おらぁ!」
アレクは、冷静にチンピラの動きを見ていた。
(……鼠人より遅い。ド素人だ)
アレクは、構えていた騎士剣の背で思い切りチンピラの頭を横殴りに殴りつける。
鈍い音と共にアレクに殴られたチンピラが倒れる。
(……弱い。こんなものか)
ルイーゼは、倒れたチンピラに後ろ手に手枷を付けると、アレクに微笑み掛ける。
「楽勝ね!」
アレクもルイーゼに微笑み返す。
「そうだね」
アルとナタリーは、区切られた小部屋に踏み込む。
小部屋にいた四人のチンピラたちはダガーやナイフを手に立ち上がろうとする。
アルは、構えた抜き身の海賊剣をチンピラたちの鼻先に突き付けながらチンピラたちに告げる。
「おおっと! ……止めといたほうが、お前達の身のためだぜ?」
アルの言葉にチンピラたちは一瞬、互いに顔を見合わせる。
次の瞬間、ナタリーが小部屋の中に顔を出して魔法を唱える。
「睡眠雲!」
小部屋にいたチンピラたちは、睡眠雲に包まれ、一斉に机に突っ伏して眠りこける。
アルが満面の笑みでナタリーに告げる。
「さすが、ナタリー!」
ナタリーも笑顔でアルに答える。
「任せて!」
トゥルムとドミトリーも区切られた小部屋に踏み込む。
小部屋の中には二人のチンピラがいた。
トゥルムは手にした戦槌でチンピラを殴りつける。
「ふんっ!」
トゥルムの戦槌は、鈍い音を立ててチンピラの頭に当たり、チンピラは白目を剥いて気絶する。
「くそっ!」
もう一人のチンピラは部屋から逃げ出そうとするが、ドミトリーが立ち塞がる。
「せいやぁ!」
ドミトリーの放った地獄突きがチンピラの顎下に炸裂し、チンピラは白目を剥いて卒倒した。
トゥルムはドミトリーに告げる。
「半グレとは、こんなものか」
ドミトリーは、手のひらでツルツルの自分の頭を撫でながら答える。
「うむ。こやつらは修行が足りんな」
エルザとナディアも区切られた小部屋に踏み込む。
小部屋の中では、一組の半裸の男女が睦あっていた。
半裸の男は、女を膝の上に乗せたまま叫ぶ。
「なんだ!? テメェら?」
「このぉ!」
エルザは、手加減無しに両手剣の背で男の顔を殴りつける。
「ごふっ!」
エルザの両手剣は男の顔面に炸裂し、男はそのまま痙攣して動かなくなった。
女は、男の膝の上に跨り、胸を開けたまま叫ぶ。
女は、男の膝の上に跨って胸を開けたまま叫ぶ。
「チョット! 何なの!? アンタたち!」
ナディアは、光の聖霊を召還すると女に差し向ける。
「来たれ、光の聖霊!」
ナディアが召還した光の聖霊は、女にぶつかると、光を放って砕け散る。
「ちょっと! まぁアアアッ!」
光の聖霊がぶつかった女は、感電して悲鳴を上げながら気絶し、男の膝の上から床の上にずり落ちた。
エルザとナディアは、気絶した男の顕になったままの男性器を覗き込む。
エルザは、机の上にあったスプーンで気絶した男の男性器をツンツンと突っ突き、検分しながら呟く。
「……小っちゃいわね~。アレクのと比べると」
ナディアも同意する。
「……ホント。まさに粗品ね」
ジカイラの声は、店の奥にいたジントックにも聞こえた。
ジントックは、立ち上がって呟く。
「ガサ入れだと!? 当局がここまで嗅ぎつけて来たのか!」
ジントックは、傍らにいた酒場女を押し退けて逃げ出そうとする。
逃げ出そうとするジントックの前にジカイラが立ち塞がる。
「ジントックだな? 投降しろ」
「クッ!」
ジントックはジカイラに殴り掛るが、ジカイラはジントックの拳を避けて、殴り返す。
ジカイラの拳がジントックの顔面に炸裂する。
「グハッ!」
ジントックは、席の横に置いてある自分の戦斧を取り出してジカイラに斬り付けようと振り上げる。
ジカイラは、素早く魔剣シグルドリーヴァを抜剣すると、戦斧を振り上げるジントックの喉元に突き付ける。
ジカイラは、喉元に剣先を突き付けられ戦斧を振り上げたまま動けないジントックを睨みつけて告げる。
「……鈍いんだよ。お前は」
ジカイラに剣を突き付けられ、動けずに固まるジントックを店の裏口から突入してきたセイレーン、フェンリルの各小隊の面々が手枷を付けて拘束する。
ユニコーン、グリフォン、セイレーン、フェンリルの各小隊長は、ジカイラの元に集まって来る。
アレクが各小隊を代表してジカイラに報告する。
「店にいた全員を拘束、逮捕しました。逃亡者はいません」
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ジカイラの説明を聞いたユニコーン、グリフォン、セイレーン、フェンリルの四個小隊は、格納庫の揚陸艇に乗り込んでいく。
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ホールにいた腹筋同盟のチンピラたちがダガーやナイフを手にアレクたちに襲い掛かる。
ルドルフ達グリフォン小隊がホールにいたチンピラたちと近接戦を繰り広げる。
ホールにいたチンピラの一人がダガーを抜き、アレクに襲い掛かってくる。
「おらぁ!」
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鈍い音と共にアレクに殴られたチンピラが倒れる。
(……弱い。こんなものか)
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「楽勝ね!」
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小部屋にいた四人のチンピラたちはダガーやナイフを手に立ち上がろうとする。
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「|睡眠《スリープ・》|雲《クラウド》!」
小部屋にいたチンピラたちは、|睡眠《スリープ・》|雲《クラウド》に包まれ、一斉に机に突っ伏して眠りこける。
アルが満面の笑みでナタリーに告げる。
「さすが、ナタリー!」
ナタリーも笑顔でアルに答える。
「任せて!」
トゥルムとドミトリーも区切られた小部屋に踏み込む。
小部屋の中には二人のチンピラがいた。
トゥルムは手にした|戦槌《メイス》でチンピラを殴りつける。
「ふんっ!」
トゥルムの|戦槌《メイス》は、鈍い音を立ててチンピラの頭に当たり、チンピラは白目を剥いて気絶する。
「くそっ!」
もう一人のチンピラは部屋から逃げ出そうとするが、ドミトリーが立ち塞がる。
「せいやぁ!」
ドミトリーの放った地獄突きがチンピラの顎下に炸裂し、チンピラは白目を剥いて卒倒した。
トゥルムはドミトリーに告げる。
「半グレとは、こんなものか」
ドミトリーは、手のひらでツルツルの自分の頭を撫でながら答える。
「うむ。こやつらは修行が足りんな」
エルザとナディアも区切られた小部屋に踏み込む。
小部屋の中では、一組の半裸の男女が睦あっていた。
半裸の男は、女を膝の上に乗せたまま叫ぶ。
「なんだ!? テメェら?」
「このぉ!」
エルザは、手加減無しに両手剣の背で男の顔を殴りつける。
「ごふっ!」
エルザの両手剣は男の顔面に炸裂し、男はそのまま痙攣して動かなくなった。
女は、男の膝の上に跨り、胸を|開《はだ》けたまま叫ぶ。
女は、男の膝の上に|跨《またが》って胸を|開《はだ》けたまま叫ぶ。
「チョット! 何なの!? アンタたち!」
ナディアは、|光の《ウィル・オー・》|聖霊《ウィスプ》を召還すると女に差し向ける。
「|来たれ《サモン》、|光の《ウィル・オー・》|聖霊《ウィスプ》!」
ナディアが召還した|光の《ウィル・オー・》|聖霊《ウィスプ》は、女にぶつかると、光を放って砕け散る。
「ちょっと! まぁアアアッ!」
|光の《ウィル・オー・》|聖霊《ウィスプ》がぶつかった女は、感電して悲鳴を上げながら気絶し、男の膝の上から床の上にずり落ちた。
エルザとナディアは、気絶した男の|顕《あらわ》になったままの男性器を覗き込む。
エルザは、机の上にあったスプーンで気絶した男の男性器をツンツンと突っ突き、検分しながら呟く。
「……小っちゃいわね~。アレクのと比べると」
ナディアも同意する。
「……ホント。まさに粗品ね」
ジカイラの声は、店の奥にいたジントックにも聞こえた。
ジントックは、立ち上がって呟く。
「ガサ入れだと!? 当局がここまで嗅ぎつけて来たのか!」
ジントックは、傍らにいた酒場女を押し退けて逃げ出そうとする。
逃げ出そうとするジントックの前にジカイラが立ち塞がる。
「ジントックだな? 投降しろ」
「クッ!」
ジントックはジカイラに殴り掛るが、ジカイラはジントックの拳を避けて、殴り返す。
ジカイラの拳がジントックの顔面に炸裂する。
「グハッ!」
ジントックは、席の横に置いてある自分の戦斧を取り出してジカイラに斬り付けようと振り上げる。
ジカイラは、素早く魔剣シグルドリーヴァを抜剣すると、戦斧を振り上げるジントックの喉元に突き付ける。
ジカイラは、喉元に剣先を突き付けられ戦斧を振り上げたまま動けないジントックを睨みつけて告げる。
「……|鈍《ニブ》いんだよ。お前は」
ジカイラに剣を突き付けられ、動けずに固まるジントックを店の裏口から突入してきたセイレーン、フェンリルの各小隊の面々が手枷を付けて拘束する。
ユニコーン、グリフォン、セイレーン、フェンリルの各小隊長は、ジカイラの元に集まって来る。
アレクが各小隊を代表してジカイラに報告する。
「店にいた全員を拘束、逮捕しました。逃亡者はいません」
ジカイラが笑顔で答える。
「良くやった。上出来だ」
ジカイラと腕利きの四個小隊の襲撃作戦は、一人の犠牲も出さずに半グレ集団『腹筋同盟』を一網打尽にすることに成功したのであった。