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第百六話 飛行空母ユニコーン・ゼロ

ー/ー



--翌日、正午。

 アレクたちユニコーン小隊の他、グリフォン、セイレーン、フェンリルの各小隊は、士官学校に併設されている飛行場に集合する。

 飛行場には、既に飛行空母ユニコーン・ゼロが停泊していた。

 飛行空母の乗船タラップの傍に立っていた士官がアレクたちの元にやって来て話し掛ける。

「ジカイラ中佐は艦内でお待ちです。どうぞ、こちらへ」

 士官の案内でアレクたちは、飛行空母に乗艦する。



 ジカイラは、飛行空母ユニコーン・ゼロの艦内通路を格納庫へ向けて歩いていた。

 歩きながら天井や周囲を見回す。

 見覚えのある通路や天井の艦内設備が、記憶の奥底に眠っていた懐かしい思い出を蘇らせる。

(……懐かしい。変わってないな。……何もかも十七年前のままだ)

 ジカイラは、十七年前の革命戦役の際、ラインハルトやナナイ、ヒナ、ハリッシュ、クリシュナ、ケニー達と共に、この飛行空母ユニコーン・ゼロに乗って帝国各地を巡り転戦していた。

(※詳細は『アスカニア大陸戦記 亡国の皇太子』を参照)

 飛行空母ユニコーン・ゼロは、革命戦役の後、『皇帝座乗記念艦』として帝国軍で大切に保管されていた。



 ラインハルトは、トラキア解放戦線の討伐任務をジカイラとエリシス伯爵に命じたが、エリシスの隷下である帝国南部方面軍に飛行空母は無かった。

 飛行空母や飛行戦艦からなる帝国飛行艦隊は、帝国東部方面軍の所属であり、ヒマジン伯爵の隷下であった。

 そこでラインハルトは、記念艦として保管されていた飛行空母ユニコーン・ゼロを引っ張り出し、今回の任務に当てたのであった。

 無論、作戦行動のため飛空艇も搭載していた。
 


 士官は、アレクたちをジカイラのいる格納庫に案内する。

 ジカイラは、アレクたちの到着を確認すると口を開く。

「……揃ったな。今回の任務は、この飛行空母ユニコーン・ゼロで作戦行動に当たる。帝都まで数時間だ。各自、到着まで休むと良い」

 ジカイラは案内した士官の方を向く。

「彼らを部屋に案内してやってくれ」

「了解しました」

 士官は、アレクたちを部屋割り表に従って、順番に案内する。

 部屋の前まで来た士官がアレクに告げる。

「アレク中尉。どうぞこちらへ」

「え!? 個室なんですか?」

「そうです」

 アレクは、一人一部屋、個室が割り当てられていたことに驚く。

 部屋は、ヒマジン伯爵隷下の飛行空母に負けず劣らず、高級ホテルのような豪華な造りであった。

 こうして各人、それぞれ部屋が割り当てられていった。

 アレクが部屋に荷物を置き一息ついていると、アルがアレクの部屋を覗き込んで話し掛ける。

「アレク。ちょっとオレの部屋に来いよ。見せたい物があるんだ!」

「見せたい物?」

 アレクはアルの部屋を訪れ、一緒に部屋の中に入る。

「これ! 凄いだろ!」

 アルが手のひらで指し示す先には陳列棚があり、そこには、孔雀の羽などの装飾の付いた鉄兜が小綺麗に並べられ飾られていた。

 アレクはアルに尋ねる。

「これって?」

 アルは、アレクに自慢げに話す。

「オレも不思議に思って、案内してくれた士官の人に聞いたんだ。そしたら『革命戦役の時に、帝国と戦ったメオス王国軍の隊長や将軍達が使っていた鉄兜で、ジカイラ中佐の戦利品です』だって! 凄いだろ!」

 アレクは、思わず口から感嘆が漏れる。

「凄い……。戦利品がこんなに……」

 アルの部屋は、かつてジカイラが使っていた部屋であった。

 アレクとアルは、ジカイラの戦利品を眺めながら、それぞれの両親が戦った革命戦役に想いを馳せる。



 アレクたちは部屋に荷物を置くと、ラウンジに集まる。

 各小隊の女の子たちは、ラウンジのカウンターでデザートを頼んで食べ始める。

 ルイーゼとナタリーは、他の小隊の女の子たちからアレクとアルのことについて質問攻めにあい、他の女の子たちと喧々諤々の議論を繰り広げていた。

 アレクとアルは、離れたところから、その女の子たちの議論の様子を眺めていた。

 アルがアレクに話し掛ける。

「……なんか、凄いことになってるな」

 アレクは苦笑いしながら答える。

「そうみたいだね」
 
 一夫一婦制の国ならば、目当ての男性に交際している女性や妻がいるなら、その男性に交際を申し込もうと考えていた女性は、諦めるだろう。

 しかし、バレンシュテット帝国は、一夫多妻制であった。

 目当ての男性に、女性の恋人や妻が何人いても問題になることは無く、問題なのは、その『男性に対する女性(自分)の優先順位(妃の序列)』であり、このことが事態を複雑にしていた。



 アレクは、ラウンジの喧噪を避けて自分の部屋に戻ると、服を着たままベッドに横になる。

 ベッドに横になったアレクの目の前にベッドのヘッドボードがあった。

 ベッドのヘッドボードには、収納が付いており、引き戸が付いていた。

 寝転がったアレクは何気なく、収納の引き戸を開けてみる。

 すると、収納の奥の壁に何かが書いてあることに気が付く。

(なんだ? これ?)

 アレクは目を凝らして、書かれているものを良く見る。

 奥の壁には、大きなハートマークが描かれ、その中にアレクの母ナナイの文字で名前が書かれていた。

『ラインハルト&ナナイ 739』と。

「まさか!? この部屋って?」

 アレクの部屋は、かつてラインハルトが使っていた部屋であった。



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--翌日、正午。
 アレクたちユニコーン小隊の他、グリフォン、セイレーン、フェンリルの各小隊は、士官学校に併設されている飛行場に集合する。
 飛行場には、既に飛行空母ユニコーン・ゼロが停泊していた。
 飛行空母の乗船タラップの傍に立っていた士官がアレクたちの元にやって来て話し掛ける。
「ジカイラ中佐は艦内でお待ちです。どうぞ、こちらへ」
 士官の案内でアレクたちは、飛行空母に乗艦する。
 ジカイラは、飛行空母ユニコーン・ゼロの艦内通路を格納庫へ向けて歩いていた。
 歩きながら天井や周囲を見回す。
 見覚えのある通路や天井の艦内設備が、記憶の奥底に眠っていた懐かしい思い出を蘇らせる。
(……懐かしい。変わってないな。……何もかも十七年前のままだ)
 ジカイラは、十七年前の革命戦役の際、ラインハルトやナナイ、ヒナ、ハリッシュ、クリシュナ、ケニー達と共に、この飛行空母ユニコーン・ゼロに乗って帝国各地を巡り転戦していた。
(※詳細は『アスカニア大陸戦記 亡国の皇太子』を参照)
 飛行空母ユニコーン・ゼロは、革命戦役の後、『皇帝座乗記念艦』として帝国軍で大切に保管されていた。
 ラインハルトは、トラキア解放戦線の討伐任務をジカイラとエリシス伯爵に命じたが、エリシスの隷下である帝国南部方面軍に飛行空母は無かった。
 飛行空母や飛行戦艦からなる帝国飛行艦隊は、帝国東部方面軍の所属であり、ヒマジン伯爵の隷下であった。
 そこでラインハルトは、記念艦として保管されていた飛行空母ユニコーン・ゼロを引っ張り出し、今回の任務に当てたのであった。
 無論、作戦行動のため飛空艇も搭載していた。
 士官は、アレクたちをジカイラのいる格納庫に案内する。
 ジカイラは、アレクたちの到着を確認すると口を開く。
「……揃ったな。今回の任務は、この飛行空母ユニコーン・ゼロで作戦行動に当たる。帝都まで数時間だ。各自、到着まで休むと良い」
 ジカイラは案内した士官の方を向く。
「彼らを部屋に案内してやってくれ」
「了解しました」
 士官は、アレクたちを部屋割り表に従って、順番に案内する。
 部屋の前まで来た士官がアレクに告げる。
「アレク中尉。どうぞこちらへ」
「え!? 個室なんですか?」
「そうです」
 アレクは、一人一部屋、個室が割り当てられていたことに驚く。
 部屋は、ヒマジン伯爵隷下の飛行空母に負けず劣らず、高級ホテルのような豪華な造りであった。
 こうして各人、それぞれ部屋が割り当てられていった。
 アレクが部屋に荷物を置き一息ついていると、アルがアレクの部屋を覗き込んで話し掛ける。
「アレク。ちょっとオレの部屋に来いよ。見せたい物があるんだ!」
「見せたい物?」
 アレクはアルの部屋を訪れ、一緒に部屋の中に入る。
「これ! 凄いだろ!」
 アルが手のひらで指し示す先には陳列棚があり、そこには、孔雀の羽などの装飾の付いた鉄兜が小綺麗に並べられ飾られていた。
 アレクはアルに尋ねる。
「これって?」
 アルは、アレクに自慢げに話す。
「オレも不思議に思って、案内してくれた士官の人に聞いたんだ。そしたら『革命戦役の時に、帝国と戦ったメオス王国軍の隊長や将軍達が使っていた鉄兜で、ジカイラ中佐の戦利品です』だって! 凄いだろ!」
 アレクは、思わず口から感嘆が漏れる。
「凄い……。戦利品がこんなに……」
 アルの部屋は、かつてジカイラが使っていた部屋であった。
 アレクとアルは、ジカイラの戦利品を眺めながら、それぞれの両親が戦った革命戦役に想いを馳せる。
 アレクたちは部屋に荷物を置くと、ラウンジに集まる。
 各小隊の女の子たちは、ラウンジのカウンターでデザートを頼んで食べ始める。
 ルイーゼとナタリーは、他の小隊の女の子たちからアレクとアルのことについて質問攻めにあい、他の女の子たちと喧々諤々の議論を繰り広げていた。
 アレクとアルは、離れたところから、その女の子たちの議論の様子を眺めていた。
 アルがアレクに話し掛ける。
「……なんか、凄いことになってるな」
 アレクは苦笑いしながら答える。
「そうみたいだね」
 一夫一婦制の国ならば、目当ての男性に交際している女性や妻がいるなら、その男性に交際を申し込もうと考えていた女性は、諦めるだろう。
 しかし、バレンシュテット帝国は、一夫多妻制であった。
 目当ての男性に、女性の恋人や妻が何人いても問題になることは無く、問題なのは、その『男性に対する女性(自分)の優先順位(妃の序列)』であり、このことが事態を複雑にしていた。
 アレクは、ラウンジの喧噪を避けて自分の部屋に戻ると、服を着たままベッドに横になる。
 ベッドに横になったアレクの目の前にベッドのヘッドボードがあった。
 ベッドのヘッドボードには、収納が付いており、引き戸が付いていた。
 寝転がったアレクは何気なく、収納の引き戸を開けてみる。
 すると、収納の奥の壁に何かが書いてあることに気が付く。
(なんだ? これ?)
 アレクは目を凝らして、書かれているものを良く見る。
 奥の壁には、大きなハートマークが描かれ、その中にアレクの母ナナイの文字で名前が書かれていた。
『ラインハルト&ナナイ 739』と。
「まさか!? この部屋って?」
 アレクの部屋は、かつてラインハルトが使っていた部屋であった。