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第二百三話 王都ハフニアにて ジークとカリン

ー/ー



--ゴズフレズ王国 王都ハフニア 王城。

 ハロルド王率いるゴズフレズ王国軍が勝利し、カスパニアから北部の城塞都市ティティスを奪還したことは、フクロウ便によって即日、ゴズフレズ王国の王都ハフニアに知らされる。

 そして、『ゴズフレズ王国軍勝利、ティティス奪還』の報は、王都ハフニアにいるジークの耳にも入る。

 ジークは、王城を訪れてカリンに謁見する。

 カリンは、出征中の父ハロルド王の代理として玉座に座り、ジークに謁見していた。

「この度のゴズフレズ王国軍の勝利により、ティティス奪還に成功したとのこと。お慶び申し上げます」

「ありがとうございます。帝国の御助力があればこそです」

 互いに形式的な儀礼を取っているが、カリンはジークに会うと照れて頬が赤く染まる。

 ジークは続ける。

「つきましては、カリン王女の主催ということで『祝勝会』を開きたいと思います。必要なものは全てこちらで用意しますので、また、城のホールをお借りしたいのですが」

「ホールでしたら、どうぞ。ご自由にお使い下さい。お心遣い感謝します」

 カリンは、微笑みながら答える。

 カリンの答えを聞いたジークは、自分の乗艦である飛行戦艦ニーベルンゲンに戻ろうと謁見の間の入り口の方へ振り向く。

「それでは、これで失礼致します」

「あの! ジーク様!」

「はい?」

 カリンがジークを呼び止め、ジークはカリンの方を振り向く。

「……また、踊って頂けますか?」

 カリンからの問いに、ジークは笑顔で答える。

「もちろん。喜んで」

 カリンは、顔だけでなく耳まで赤くなってジークにお礼を述べる。

「……ありがとうございます」

 ジークは、ゴズフレズに滞在するに当たり、ゴズフレズ王国の貴族や政府役人、外国の大使たちを招いてバレンシュテット帝国の力を見せ付けるように、適当に理由を作って頻繁に豪華な舞踏会や晩餐会を開催していた。

 その甲斐あって、ゴズフレズ王国の貴族や政府役人たちは、宗主国であるスベリエ王国よりも、有り余る富と力を誇示するバレンシュテット帝国に肩入れして、次代の皇帝であるジークにあやかろうとする者が増えていた。



--夜。

 カリン王女主催の祝勝会が開催される。

 宮廷舞踏会と同様に主催者のカリンによる開催の挨拶によって、祝勝会が始まる。

「ゴズフレズ王国とハロルド王の勝利に!」

「乾杯!」

 乾杯の後、オープニングセレモニーとしてジークとソフィアがファーストダンスを務める。

 ジークがソフィアの手を取り、二人がホールの中央に歩み出ると、ホールの片隅に陣取る楽団が演奏し始める。

 奏でられる円舞曲に合わせて、ジークとソフィアの二人が踊る。

 二人が一曲踊り終えると、次はジークとカリンが踊る順番になる。

 ジークはカリンの手を取ると、手の甲にキスしてホールの中央へエスコートする。

 ジークとカリンがホールの中央に揃ったところで、二曲目の円舞曲の演奏が始まる。

 ジークは、カリンをリードしながらダンスを踊る。

 カリンは頬を赤らめ、うっとりと長身のジークの顔を見上げながら、ジークのリードに合わせて踊っていた。



 二曲目が終わると、他の参加者も踊ることが出来るダンスタイムとなり、踊らない者はテーブルに座り、食事やお酒を楽しみながらダンスを鑑賞し始める。

 頻繁に開催される舞踏会や晩餐会の度に二人はダンスを踊っており、その様子を知るゴズフレズ王国の貴族や政府役人たちにとって、カリンの初恋の相手がジークであることは『公然の秘密』となっていた。

 参加者たちは、祝勝会に用意された豪華な料理や帝国各地から取り寄せた果物を食べながら、会場のあちこちに数人で集まり、ゴズフレズ王国の国内外を取り巻く昨今の情勢について、まことしやかに(ささや)き始める。

「……この分だと、年を越す前にカスパニアをゴズフレズから撃退できるのでは?」

「我が国はスベリエに従属するのを改め、帝国と組んだ方が良いのではないか?」

「あの超大国バレンシュテット帝国が、我が国など相手にするはずが無かろう!」

「だが、有り余る富を持つ豊かな帝国ならば、我々が従属したところで重税を課してくることも無いだろう」

「……どうやら、カリン王女の初恋の相手は、ジークフリート殿下のようだ。卿らはどう思う?」

「……いっそのこと、お二人が一緒になられたら良い。カリン王女の婚姻の相手として皇太子殿下は、この上ない相手だ。王女と皇太子。家柄的にも身分的にも申し分無い。良縁だと思わないか?」



 ジークが繰り返し開催する晩餐会や舞踏会などの催事の度に、貴族や政府役人などのゴズフレズ指導層の世論は『スベリエ寄り』から『帝国推し』に傾いていった。

 祝勝会の会場の片隅で、ジークとソフィア、カリンの三人の周囲に人集りが出来て愉しげに歓談している、その光景を苦々しく見ている人物がいた。

 スベリエ王国ゴズフレズ駐在大使ヒッター子爵であった。

 ヒッター子爵は、一人で酒を飲みながら焦燥に駆られていた。

(マズい。マズいぞ。……このままでは、ゴズフレズが帝国に併呑されてしまう)

(ゴズフレズ海峡を失えば、我がスベリエ王国は内海に閉じ込められ、列強の座から降りざるを得なくなる。国家存亡の危機だ)

(皇太子め! 武力を用いず、帝国の経済力と文化力を見せ付け、国の指導層である貴族や役人たちを籠絡するとは。あの若さで……侮れん)

(……もはや強行手段もやむを得まい)

 ヒッター子爵は祝勝会の会場を後にすると、スベリエ本国に書簡をしたためた。




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--ゴズフレズ王国 王都ハフニア 王城。
 ハロルド王率いるゴズフレズ王国軍が勝利し、カスパニアから北部の城塞都市ティティスを奪還したことは、フクロウ便によって即日、ゴズフレズ王国の王都ハフニアに知らされる。
 そして、『ゴズフレズ王国軍勝利、ティティス奪還』の報は、王都ハフニアにいるジークの耳にも入る。
 ジークは、王城を訪れてカリンに謁見する。
 カリンは、出征中の父ハロルド王の代理として玉座に座り、ジークに謁見していた。
「この度のゴズフレズ王国軍の勝利により、ティティス奪還に成功したとのこと。お慶び申し上げます」
「ありがとうございます。帝国の御助力があればこそです」
 互いに形式的な儀礼を取っているが、カリンはジークに会うと照れて頬が赤く染まる。
 ジークは続ける。
「つきましては、カリン王女の主催ということで『祝勝会』を開きたいと思います。必要なものは全てこちらで用意しますので、また、城のホールをお借りしたいのですが」
「ホールでしたら、どうぞ。ご自由にお使い下さい。お心遣い感謝します」
 カリンは、微笑みながら答える。
 カリンの答えを聞いたジークは、自分の乗艦である飛行戦艦ニーベルンゲンに戻ろうと謁見の間の入り口の方へ振り向く。
「それでは、これで失礼致します」
「あの! ジーク様!」
「はい?」
 カリンがジークを呼び止め、ジークはカリンの方を振り向く。
「……また、踊って頂けますか?」
 カリンからの問いに、ジークは笑顔で答える。
「もちろん。喜んで」
 カリンは、顔だけでなく耳まで赤くなってジークにお礼を述べる。
「……ありがとうございます」
 ジークは、ゴズフレズに滞在するに当たり、ゴズフレズ王国の貴族や政府役人、外国の大使たちを招いてバレンシュテット帝国の力を見せ付けるように、適当に理由を作って頻繁に豪華な舞踏会や晩餐会を開催していた。
 その甲斐あって、ゴズフレズ王国の貴族や政府役人たちは、宗主国であるスベリエ王国よりも、有り余る富と力を誇示するバレンシュテット帝国に肩入れして、次代の皇帝であるジークにあやかろうとする者が増えていた。
--夜。
 カリン王女主催の祝勝会が開催される。
 宮廷舞踏会と同様に主催者のカリンによる開催の挨拶によって、祝勝会が始まる。
「ゴズフレズ王国とハロルド王の勝利に!」
「乾杯!」
 乾杯の後、オープニングセレモニーとしてジークとソフィアがファーストダンスを務める。
 ジークがソフィアの手を取り、二人がホールの中央に歩み出ると、ホールの片隅に陣取る楽団が演奏し始める。
 奏でられる円舞曲に合わせて、ジークとソフィアの二人が踊る。
 二人が一曲踊り終えると、次はジークとカリンが踊る順番になる。
 ジークはカリンの手を取ると、手の甲にキスしてホールの中央へエスコートする。
 ジークとカリンがホールの中央に揃ったところで、二曲目の円舞曲の演奏が始まる。
 ジークは、カリンをリードしながらダンスを踊る。
 カリンは頬を赤らめ、うっとりと長身のジークの顔を見上げながら、ジークのリードに合わせて踊っていた。
 二曲目が終わると、他の参加者も踊ることが出来るダンスタイムとなり、踊らない者はテーブルに座り、食事やお酒を楽しみながらダンスを鑑賞し始める。
 頻繁に開催される舞踏会や晩餐会の度に二人はダンスを踊っており、その様子を知るゴズフレズ王国の貴族や政府役人たちにとって、カリンの初恋の相手がジークであることは『公然の秘密』となっていた。
 参加者たちは、祝勝会に用意された豪華な料理や帝国各地から取り寄せた果物を食べながら、会場のあちこちに数人で集まり、ゴズフレズ王国の国内外を取り巻く昨今の情勢について、まことしやかに|囁《ささや》き始める。
「……この分だと、年を越す前にカスパニアをゴズフレズから撃退できるのでは?」
「我が国はスベリエに従属するのを改め、帝国と組んだ方が良いのではないか?」
「あの超大国バレンシュテット帝国が、我が国など相手にするはずが無かろう!」
「だが、有り余る富を持つ豊かな帝国ならば、我々が従属したところで重税を課してくることも無いだろう」
「……どうやら、カリン王女の初恋の相手は、ジークフリート殿下のようだ。卿らはどう思う?」
「……いっそのこと、お二人が一緒になられたら良い。カリン王女の婚姻の相手として皇太子殿下は、この上ない相手だ。王女と皇太子。家柄的にも身分的にも申し分無い。良縁だと思わないか?」
 ジークが繰り返し開催する晩餐会や舞踏会などの催事の度に、貴族や政府役人などのゴズフレズ指導層の世論は『スベリエ寄り』から『帝国推し』に傾いていった。
 祝勝会の会場の片隅で、ジークとソフィア、カリンの三人の周囲に人集りが出来て愉しげに歓談している、その光景を苦々しく見ている人物がいた。
 スベリエ王国ゴズフレズ駐在大使ヒッター子爵であった。
 ヒッター子爵は、一人で酒を飲みながら焦燥に駆られていた。
(マズい。マズいぞ。……このままでは、ゴズフレズが帝国に併呑されてしまう)
(ゴズフレズ海峡を失えば、我がスベリエ王国は内海に閉じ込められ、列強の座から降りざるを得なくなる。国家存亡の危機だ)
(皇太子め! 武力を用いず、帝国の経済力と文化力を見せ付け、国の指導層である貴族や役人たちを籠絡するとは。あの若さで……侮れん)
(……もはや強行手段もやむを得まい)
 ヒッター子爵は祝勝会の会場を後にすると、スベリエ本国に書簡をしたためた。