第二百二話 ゴズフレズ戦士勲章、帰って来たキャスパー・ヨーイチ三世
ー/ー 陽が昇る頃には、ティティスを巡る戦闘は終息し、ゴズフレズ軍の勝利に終わる。
総崩れとなったカスパニア軍は、船舶を使って海路で退却したものの、ティティス沖に現れたスベリエ王国軍の大艦隊による攻撃で大きな被害を受けた。
スベリエ王国軍の艦隊は、ティティス港に入港する。
アレクたち教導大隊は、飛行空母ユニコーン・ゼロに帰還する。
帰還したジカイラは、ヒナとアレクたち一学年平民組の四個小隊を連れ、ゴズフレズ王国のハロルド王に謁見するため揚陸艇でティティスへと降下する。
ジカイラは、格納庫の窓からティティス港に停泊するスベリエ王国艦隊を見下ろすと、ぼやく。
「スベリエ王国軍が今頃になっておでましか」
傍らのヒナがジカイラに答える。
「……何か、思惑があるのかも?」
ジカイラは苦笑いしながらヒナに告げる。
「……キナ臭くなってきたな」
ジカイラたちの乗る揚陸艇がティティスの市庁舎前に着陸すると、ナディアが召喚した巨大なストーンゴーレムは、何もせず立ったまま、立ち尽くしていた。
カスパニア軍が敗走してティティス市内からいなくなり、攻撃する目標が無くなったため、ストーンゴーレムは市庁舎前の広場で動きを止めていたのであった。
アレクたちは、揚陸艇を降りると十二メートル級のストーンゴーレムを見上げる。
アルは軽口を叩く。
「しかし、デカいな。コイツ。カスパニア軍から、あれだけ大砲の集中砲火を浴びていたのに、何とも無さそうだ」
アレクは答える。
「まぁ、ストーンゴーレムの頑丈さは有名だから」
アルは、右手を軽く握って立てた親指でストーンゴーレムを指し示しながらアレクに尋ねる。
「アレク。コイツ、どうするんだ?」
アレクは考えながら答える。
「うーん。せっかくナディアが作ったのに、壊してしまうのはもったいない気がする。……とりあえず、ゴズフレズの王様に聞いてみよう」
「……そうだな。何か使い道があるかも」
アルは、アレクの答えに納得したようであった。
アレクたちは、ジカイラの後に付いてティティスの市庁舎へ行く。
ジカイラとアレクたちは、市庁舎の市長室でハロルド王に謁見する。
ジカイラたちが市長室へと案内されると、ハロルド王は座っていた席を立ち、すぐにジカイラたちの元に歩み寄って来る。
「黒い剣士殿! 御助力、感謝する! おかげでティティスを奪還する事ができた! このハロルド、一生の恩に着ますぞ!」
「陛下。我々は、バレンシュテット帝国から軍事顧問団として参りました。ゴズフレズ軍の勇戦あればこその勝利です」
ハロルド王は、謙遜しながら答えるジカイラの傍らにいるアレクに目を止める。
「おぉ、少年! その方、見事な働きであったぞ!」
ハロルド王は称賛しながら、両手でアレクの両手を握る。
アレクは、少し照れながらハロルド王に自分の名前を名乗り自己紹介する。
「恐れ入ります、陛下。自分は、アレキサンダー・ヘーゲル中尉と申します」
「ヘーゲル中尉か。……あい判った! 覚えておこう!」
ハロルド王は上機嫌でアレクに告げると、直ぐにネルトン将軍を呼びつける。
「ネルトン! 勲章を用意しろ! アレキサンダー・ヘーゲル中尉たちを叙勲する!」
「ははっ」
程なくネルトンが金属製のお盆の上に並べられた勲章を持って戻って来ると、急遽、市長室でアレクたちの叙勲式が行われる。
ハロルド王はアレクに告げる。
「『ゴズフレズ戦士勲章』だ。ティティス奪還戦における、その方らの活躍、見事であった。……略式で申し訳ないが、是非、叙勲を受けてくれ。ヘーゲル中尉」
そう告げながらハロルド王は、市長室に並んだアレクたち一人一人の胸に、両刃の戦斧を意匠化した『ゴズフレズ戦士勲章』を付けて握手していく。
ジカイラとヒナは、ハロルド王からアレクたちが叙勲される様子を微笑ましく眺めていた。
略式の叙勲式が終わると、アレクはハロルド王に尋ねる。
「陛下。市庁舎の前にあるストーンゴーレムは如何しましょうか?」
ハロルド王は、上機嫌でアレクに答える。
「あのゴーレムは、あのまま置いて良い。我々がカスパニア軍を蹴散らした勝利の記念碑だ! ハハハハ!」
アレクにそう答えると、ハロルド王は豪快に笑い声を上げた。
叙勲式が終わり、一息ついて落ち着いた頃、ネルトンはジカイラに話し掛ける。
「折り入って、ジカイラ殿に是非、確認していただきたいことがありまして」
「何でしょう?」
「実は、ティティスを奪回した際に、『自分は帝国貴族だ』と名乗る者を見世物小屋で保護致しまして。帝国の黒い剣士であるジカイラ殿なら、事の真偽が判ると思いましたので、確認して頂きたく」
「見世物小屋?」
ネルトンの言葉にジカイラは小首を傾げる。
ネルトンの言葉を聞いて心当たりがあるナディアとエルザは、『ハッ』としたような顔をする。
「ここへ」
ネルトンの目配せでゴズフレズ軍の兵士たちはドアを開け、廊下から台車を市長室に引き入れて来る。
台車には、全裸の男が四つん這いの姿勢で固定されていた。
その男を見てジカイラとヒナ、そしてアレクたちは驚く。
「キャスパー!?」
四つん這いに台車に固定された全裸の男は、カスパニアの傭兵団に捕まったキャスパー・ヨーイチ三世であった。
キャスパーは、全裸の自分を衆目の前に引き出したゴズフレズ軍の兵士たちに悪態を突く。
「お前らぁ! 皆に会わせるなら、せめて台車から外してからにしろ! 何か着る物をよこせ!」
ジカイラは口を開く。
「キャスパー! お前、生きていたのか!?」
キャスパーは涙目で答える。
「……中佐。私は、生きていました」
ルイーゼやナタリーなどの女の子たちは、台車に固定されたまま引き出されてきた、全裸で四つん這いのキャスパーの姿を見て、軽い悲鳴を上げると恥じらって両手で顔を覆う。
一方、アルやナディア、エルザは、台車に全裸で四つん這いの姿で固定されているキャスパーを見て、噴き出す笑いを堪えるのに必死であった。
トゥルムとドミトリーは、呆れて物も言えない様子であった。
アレクは、キャスパーに素朴な疑問を尋ねる。
「キャスパー。なんで全裸で四つん這いに台車に固定されているんだ? それに、見世物小屋にいたって?」
「うるさい! お前には関係ない!」
エルザは、口元を手で押さえて噴き出す笑いを堪えつつ、アレクの傍らまで歩いて来ると、アレクに悪態を突くキャスパーを横目で見ながら、アレクたちに解説する。
「プププ……キャスパー君、捕まったカスパニアの傭兵団から見世物小屋に売られて、その姿でお尻の穴にバターを塗られて犬に舐められて、その後、犬に犯されていたのよね?」
「見世物になっていたのか?」
「犬と犯ってたって!?」
エルザの解説に、キャスパーを除いたその場にいる者たちは、堪え切れずに一斉に笑い出す。
「あははははは!」
キャスパーは叫ぶ。
「うるさい! 笑うなぁ!」
ネルトンも失笑を隠しきれず、笑みを浮かべたまま、ジカイラに尋ねる。
「プププッ…… こやつ、ジカイラ殿の知り合いでしたか?」
ジカイラは、苦笑いしながらネルトンに答える。
「知り合いというか、貴族組の生徒です。……そちらの手を煩わせて、申し訳ない」
「判りました。そちらの揚陸艇に運ばせます。……お前たち、そいつを揚陸艇に運べ」
ジカイラの答えを聞いたネルトンがゴズフレズ兵たちに指示を出すと、兵士たちは四人掛かりで台車ごとキャスパーを担いで揚陸艇へ運んで行く。
「おい、待て! お前ら! この姿のまま、揚陸艇に運んで行くつもりか!? 台車から降ろせ! 降ろしてくれ! 生き恥だぁあああ!」
市長室から四人の兵士に担がれて運ばれていくキャスパーの叫び声は、しだいに小さくなっていった。
ジカイラはアレクたちに告げる。
「オレとヒナは、今後の作戦方針の打ち合わせがある。お前たちは、もう解散して良いぞ」
「わかりました」
アレクたちは、ティティスの市庁舎を後にする。
総崩れとなったカスパニア軍は、船舶を使って海路で退却したものの、ティティス沖に現れたスベリエ王国軍の大艦隊による攻撃で大きな被害を受けた。
スベリエ王国軍の艦隊は、ティティス港に入港する。
アレクたち教導大隊は、飛行空母ユニコーン・ゼロに帰還する。
帰還したジカイラは、ヒナとアレクたち一学年平民組の四個小隊を連れ、ゴズフレズ王国のハロルド王に謁見するため揚陸艇でティティスへと降下する。
ジカイラは、格納庫の窓からティティス港に停泊するスベリエ王国艦隊を見下ろすと、ぼやく。
「スベリエ王国軍が今頃になっておでましか」
傍らのヒナがジカイラに答える。
「……何か、思惑があるのかも?」
ジカイラは苦笑いしながらヒナに告げる。
「……キナ臭くなってきたな」
ジカイラたちの乗る揚陸艇がティティスの市庁舎前に着陸すると、ナディアが召喚した巨大なストーンゴーレムは、何もせず立ったまま、立ち尽くしていた。
カスパニア軍が敗走してティティス市内からいなくなり、攻撃する目標が無くなったため、ストーンゴーレムは市庁舎前の広場で動きを止めていたのであった。
アレクたちは、揚陸艇を降りると十二メートル級のストーンゴーレムを見上げる。
アルは軽口を叩く。
「しかし、デカいな。コイツ。カスパニア軍から、あれだけ大砲の集中砲火を浴びていたのに、何とも無さそうだ」
アレクは答える。
「まぁ、ストーンゴーレムの頑丈さは有名だから」
アルは、右手を軽く握って立てた親指でストーンゴーレムを指し示しながらアレクに尋ねる。
「アレク。コイツ、どうするんだ?」
アレクは考えながら答える。
「うーん。せっかくナディアが作ったのに、壊してしまうのはもったいない気がする。……とりあえず、ゴズフレズの王様に聞いてみよう」
「……そうだな。何か使い道があるかも」
アルは、アレクの答えに納得したようであった。
アレクたちは、ジカイラの後に付いてティティスの市庁舎へ行く。
ジカイラとアレクたちは、市庁舎の市長室でハロルド王に謁見する。
ジカイラたちが市長室へと案内されると、ハロルド王は座っていた席を立ち、すぐにジカイラたちの元に歩み寄って来る。
「黒い剣士殿! 御助力、感謝する! おかげでティティスを奪還する事ができた! このハロルド、一生の恩に着ますぞ!」
「陛下。我々は、バレンシュテット帝国から軍事顧問団として参りました。ゴズフレズ軍の勇戦あればこその勝利です」
ハロルド王は、謙遜しながら答えるジカイラの傍らにいるアレクに目を止める。
「おぉ、少年! その方、見事な働きであったぞ!」
ハロルド王は称賛しながら、両手でアレクの両手を握る。
アレクは、少し照れながらハロルド王に自分の名前を名乗り自己紹介する。
「恐れ入ります、陛下。自分は、アレキサンダー・ヘーゲル中尉と申します」
「ヘーゲル中尉か。……あい判った! 覚えておこう!」
ハロルド王は上機嫌でアレクに告げると、直ぐにネルトン将軍を呼びつける。
「ネルトン! 勲章を用意しろ! アレキサンダー・ヘーゲル中尉たちを叙勲する!」
「ははっ」
程なくネルトンが金属製のお盆の上に並べられた勲章を持って戻って来ると、急遽、市長室でアレクたちの叙勲式が行われる。
ハロルド王はアレクに告げる。
「『ゴズフレズ戦士勲章』だ。ティティス奪還戦における、その方らの活躍、見事であった。……略式で申し訳ないが、是非、叙勲を受けてくれ。ヘーゲル中尉」
そう告げながらハロルド王は、市長室に並んだアレクたち一人一人の胸に、両刃の戦斧を意匠化した『ゴズフレズ戦士勲章』を付けて握手していく。
ジカイラとヒナは、ハロルド王からアレクたちが叙勲される様子を微笑ましく眺めていた。
略式の叙勲式が終わると、アレクはハロルド王に尋ねる。
「陛下。市庁舎の前にあるストーンゴーレムは如何しましょうか?」
ハロルド王は、上機嫌でアレクに答える。
「あのゴーレムは、あのまま置いて良い。我々がカスパニア軍を蹴散らした勝利の記念碑だ! ハハハハ!」
アレクにそう答えると、ハロルド王は豪快に笑い声を上げた。
叙勲式が終わり、一息ついて落ち着いた頃、ネルトンはジカイラに話し掛ける。
「折り入って、ジカイラ殿に是非、確認していただきたいことがありまして」
「何でしょう?」
「実は、ティティスを奪回した際に、『自分は帝国貴族だ』と名乗る者を見世物小屋で保護致しまして。帝国の黒い剣士であるジカイラ殿なら、事の真偽が判ると思いましたので、確認して頂きたく」
「見世物小屋?」
ネルトンの言葉にジカイラは小首を傾げる。
ネルトンの言葉を聞いて心当たりがあるナディアとエルザは、『ハッ』としたような顔をする。
「ここへ」
ネルトンの目配せでゴズフレズ軍の兵士たちはドアを開け、廊下から台車を市長室に引き入れて来る。
台車には、全裸の男が四つん這いの姿勢で固定されていた。
その男を見てジカイラとヒナ、そしてアレクたちは驚く。
「キャスパー!?」
四つん這いに台車に固定された全裸の男は、カスパニアの傭兵団に捕まったキャスパー・ヨーイチ三世であった。
キャスパーは、全裸の自分を衆目の前に引き出したゴズフレズ軍の兵士たちに悪態を突く。
「お前らぁ! 皆に会わせるなら、せめて台車から外してからにしろ! 何か着る物をよこせ!」
ジカイラは口を開く。
「キャスパー! お前、生きていたのか!?」
キャスパーは涙目で答える。
「……中佐。私は、生きていました」
ルイーゼやナタリーなどの女の子たちは、台車に固定されたまま引き出されてきた、全裸で四つん這いのキャスパーの姿を見て、軽い悲鳴を上げると恥じらって両手で顔を覆う。
一方、アルやナディア、エルザは、台車に全裸で四つん這いの姿で固定されているキャスパーを見て、噴き出す笑いを堪えるのに必死であった。
トゥルムとドミトリーは、呆れて物も言えない様子であった。
アレクは、キャスパーに素朴な疑問を尋ねる。
「キャスパー。なんで全裸で四つん這いに台車に固定されているんだ? それに、見世物小屋にいたって?」
「うるさい! お前には関係ない!」
エルザは、口元を手で押さえて噴き出す笑いを堪えつつ、アレクの傍らまで歩いて来ると、アレクに悪態を突くキャスパーを横目で見ながら、アレクたちに解説する。
「プププ……キャスパー君、捕まったカスパニアの傭兵団から見世物小屋に売られて、その姿でお尻の穴にバターを塗られて犬に舐められて、その後、犬に犯されていたのよね?」
「見世物になっていたのか?」
「犬と犯ってたって!?」
エルザの解説に、キャスパーを除いたその場にいる者たちは、堪え切れずに一斉に笑い出す。
「あははははは!」
キャスパーは叫ぶ。
「うるさい! 笑うなぁ!」
ネルトンも失笑を隠しきれず、笑みを浮かべたまま、ジカイラに尋ねる。
「プププッ…… こやつ、ジカイラ殿の知り合いでしたか?」
ジカイラは、苦笑いしながらネルトンに答える。
「知り合いというか、貴族組の生徒です。……そちらの手を煩わせて、申し訳ない」
「判りました。そちらの揚陸艇に運ばせます。……お前たち、そいつを揚陸艇に運べ」
ジカイラの答えを聞いたネルトンがゴズフレズ兵たちに指示を出すと、兵士たちは四人掛かりで台車ごとキャスパーを担いで揚陸艇へ運んで行く。
「おい、待て! お前ら! この姿のまま、揚陸艇に運んで行くつもりか!? 台車から降ろせ! 降ろしてくれ! 生き恥だぁあああ!」
市長室から四人の兵士に担がれて運ばれていくキャスパーの叫び声は、しだいに小さくなっていった。
ジカイラはアレクたちに告げる。
「オレとヒナは、今後の作戦方針の打ち合わせがある。お前たちは、もう解散して良いぞ」
「わかりました」
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総崩れとなったカスパニア軍は、船舶を使って海路で退却したものの、ティティス沖に現れたスベリエ王国軍の大艦隊による攻撃で大きな被害を受けた。
スベリエ王国軍の艦隊は、ティティス港に入港する。
アレクたち教導大隊は、飛行空母ユニコーン・ゼロに帰還する。
帰還したジカイラは、ヒナとアレクたち一学年平民組の四個小隊を連れ、ゴズフレズ王国のハロルド王に謁見するため揚陸艇でティティスへと降下する。
ジカイラは、格納庫の窓からティティス港に停泊するスベリエ王国艦隊を見下ろすと、ぼやく。
「スベリエ王国軍が今頃になっておでましか」
傍らのヒナがジカイラに答える。
「……何か、思惑があるのかも?」
ジカイラは苦笑いしながらヒナに告げる。
「……キナ臭くなってきたな」
ジカイラたちの乗る揚陸艇がティティスの市庁舎前に着陸すると、ナディアが召喚した巨大なストーンゴーレムは、何もせず立ったまま、立ち尽くしていた。
カスパニア軍が敗走してティティス市内からいなくなり、攻撃する目標が無くなったため、ストーンゴーレムは市庁舎前の広場で動きを止めていたのであった。
アレクたちは、揚陸艇を降りると十二メートル級のストーンゴーレムを見上げる。
アルは軽口を叩く。
「しかし、デカいな。コイツ。カスパニア軍から、あれだけ大砲の集中砲火を浴びていたのに、何とも無さそうだ」
アレクは答える。
「まぁ、ストーンゴーレムの頑丈さは有名だから」
アルは、右手を軽く握って立てた親指でストーンゴーレムを指し示しながらアレクに尋ねる。
「アレク。コイツ、どうするんだ?」
アレクは考えながら答える。
「うーん。せっかくナディアが作ったのに、壊してしまうのはもったいない気がする。……とりあえず、ゴズフレズの王様に聞いてみよう」
「……そうだな。何か使い道があるかも」
アルは、アレクの答えに納得したようであった。
アレクたちは、ジカイラの後に付いてティティスの市庁舎へ行く。
ジカイラとアレクたちは、市庁舎の市長室でハロルド王に謁見する。
ジカイラたちが市長室へと案内されると、ハロルド王は座っていた席を立ち、すぐにジカイラたちの元に歩み寄って来る。
「黒い剣士殿! 御助力、感謝する! おかげでティティスを奪還する事ができた! このハロルド、一生の恩に着ますぞ!」
「陛下。我々は、バレンシュテット帝国から軍事顧問団として参りました。ゴズフレズ軍の勇戦あればこその勝利です」
ハロルド王は、謙遜しながら答えるジカイラの傍らにいるアレクに目を止める。
「おぉ、少年! その方、見事な働きであったぞ!」
ハロルド王は称賛しながら、両手でアレクの両手を握る。
アレクは、少し照れながらハロルド王に自分の名前を名乗り自己紹介する。
「恐れ入ります、陛下。自分は、アレキサンダー・ヘーゲル中尉と申します」
「ヘーゲル中尉か。……あい判った! 覚えておこう!」
ハロルド王は上機嫌でアレクに告げると、直ぐにネルトン将軍を呼びつける。
「ネルトン! 勲章を用意しろ! アレキサンダー・ヘーゲル中尉たちを叙勲する!」
「ははっ」
程なくネルトンが金属製のお盆の上に並べられた勲章を持って戻って来ると、急遽、市長室でアレクたちの叙勲式が行われる。
ハロルド王はアレクに告げる。
「『ゴズフレズ戦士勲章』だ。ティティス奪還戦における、その方らの活躍、見事であった。……略式で申し訳ないが、是非、叙勲を受けてくれ。ヘーゲル中尉」
そう告げながらハロルド王は、市長室に並んだアレクたち一人一人の胸に、両刃の戦斧を意匠化した『ゴズフレズ戦士勲章』を付けて握手していく。
ジカイラとヒナは、ハロルド王からアレクたちが叙勲される様子を微笑ましく眺めていた。
略式の叙勲式が終わると、アレクはハロルド王に尋ねる。
「陛下。市庁舎の前にあるストーンゴーレムは如何しましょうか?」
ハロルド王は、上機嫌でアレクに答える。
「あのゴーレムは、あのまま置いて良い。我々がカスパニア軍を蹴散らした勝利の記念碑だ! ハハハハ!」
アレクにそう答えると、ハロルド王は豪快に笑い声を上げた。
叙勲式が終わり、一息ついて落ち着いた頃、ネルトンはジカイラに話し掛ける。
「折り入って、ジカイラ殿に是非、確認していただきたいことがありまして」
「何でしょう?」
「実は、ティティスを奪回した際に、『自分は帝国貴族だ』と名乗る者を見世物小屋で保護致しまして。帝国の黒い剣士であるジカイラ殿なら、事の真偽が判ると思いましたので、確認して頂きたく」
「見世物小屋?」
ネルトンの言葉にジカイラは小首を傾げる。
ネルトンの言葉を聞いて心当たりがあるナディアとエルザは、『ハッ』としたような顔をする。
「ここへ」
ネルトンの目配せでゴズフレズ軍の兵士たちはドアを開け、廊下から台車を市長室に引き入れて来る。
台車には、全裸の男が四つん這いの姿勢で固定されていた。
その男を見てジカイラとヒナ、そしてアレクたちは驚く。
「キャスパー!?」
四つん這いに台車に固定された全裸の男は、カスパニアの傭兵団に捕まったキャスパー・ヨーイチ三世であった。
キャスパーは、全裸の自分を衆目の前に引き出したゴズフレズ軍の兵士たちに悪態を突く。
「お前らぁ! 皆に会わせるなら、せめて台車から外してからにしろ! 何か着る物をよこせ!」
ジカイラは口を開く。
「キャスパー! お前、生きていたのか!?」
キャスパーは涙目で答える。
「……中佐。私は、生きていました」
ルイーゼやナタリーなどの女の子たちは、台車に固定されたまま引き出されてきた、全裸で四つん這いのキャスパーの姿を見て、軽い悲鳴を上げると恥じらって両手で顔を覆う。
一方、アルやナディア、エルザは、台車に全裸で四つん這いの姿で固定されているキャスパーを見て、噴き出す笑いを堪えるのに必死であった。
トゥルムとドミトリーは、呆れて物も言えない様子であった。
アレクは、キャスパーに素朴な疑問を尋ねる。
「キャスパー。なんで全裸で四つん這いに台車に固定されているんだ? それに、見世物小屋にいたって?」
「うるさい! お前には関係ない!」
エルザは、口元を手で押さえて噴き出す笑いを堪えつつ、アレクの傍らまで歩いて来ると、アレクに悪態を突くキャスパーを横目で見ながら、アレクたちに解説する。
「プププ……キャスパー君、捕まったカスパニアの傭兵団から見世物小屋に売られて、その姿でお尻の穴にバターを塗られて犬に舐められて、その後、犬に犯されていたのよね?」
「見世物になっていたのか?」
「犬と|犯《や》ってたって!?」
エルザの解説に、キャスパーを除いたその場にいる者たちは、堪え切れずに一斉に笑い出す。
「あははははは!」
キャスパーは叫ぶ。
「うるさい! 笑うなぁ!」
ネルトンも失笑を隠しきれず、笑みを浮かべたまま、ジカイラに尋ねる。
「プププッ…… こやつ、ジカイラ殿の|知《・》|り《・》|合《・》|い《・》でしたか?」
ジカイラは、苦笑いしながらネルトンに答える。
「|知《・》|り《・》|合《・》|い《・》というか、貴族組の|生《・》|徒《・》です。……そちらの手を煩わせて、申し訳ない」
「判りました。そちらの揚陸艇に運ばせます。……お前たち、そいつを揚陸艇に運べ」
ジカイラの答えを聞いたネルトンがゴズフレズ兵たちに指示を出すと、兵士たちは四人掛かりで台車ごとキャスパーを担いで揚陸艇へ運んで行く。
「おい、待て! お前ら! この姿のまま、揚陸艇に運んで行くつもりか!? 台車から降ろせ! 降ろしてくれ! 生き恥だぁあああ!」
市長室から四人の兵士に担がれて運ばれていくキャスパーの叫び声は、しだいに小さくなっていった。
ジカイラはアレクたちに告げる。
「オレとヒナは、今後の作戦方針の打ち合わせがある。お前たちは、もう解散して良いぞ」
「わかりました」
アレクたちは、ティティスの市庁舎を後にする。