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第二百話 夜間飛行

ー/ー



 アレクは司令部を後にすると、小隊の仲間たちのテントを巡り、ハロルド王が率いるゴズフレズ軍がティティスに夜襲を仕掛けること、自分たち教導大隊がその支援に当たることを連絡して回る。

 アレクは、飛空艇で出撃することを知った小隊の女の子たちから、出撃する時間まで、ゴズフレズ軍の本営ではなく、飛行空母ユニコーン・ゼロで休息することを求められる。

 他の小隊が地上で休息している中、アレクたちユニコーン小隊は、飛空艇で飛行空母ユニコーン・ゼロに戻って来た。

 ユニコーン・ゼロは、ゴズフレズ軍の本営の上空に進出して滞空しており、飛空艇で飛べば僅かな時間で帰還することが出来た。

 ユニコーン・ゼロへの帰還を一番喜んでいたのは、エルザであった。

「きゃっほ~! 戻ってきたわ! さぁ、お風呂よ! お風呂!」

 アルは、エルザのはしゃぐ姿に呆れる。

「なぁ~んだ。風呂に入りたかったのか」

 エルザはアルに語る。

「そうよ! 子猫のような可愛らしい乙女は、お肌も綺麗に磨いておかないとね!」

 ナディアは、エルザをからかう。

「きっと、人狩りやカスパニア兵が喜ぶわね」

 エルザは、ナディアの言葉を全力で否定する。

「ち・が・う・わ・よ! あんな連中のためじゃなく、アレクよ! アレク! アレクのために綺麗でいないとね!」

 アレクは、エルザの言葉を聞いた苦笑いしていたが、エルザはアレクの腕を取ると、顔を近づけて耳元で(ささや)く。

「ねぇ、アレク。アレクなら、一緒にお風呂に入っても良いわよ? エルザちゃん、サービスしちゃうから!」

 ルイーゼは、話を聞いてエルザをたしなめる。

「ユニコーン・ゼロは、規則で混浴できないわよ。軍艦だから」

「ちぇ~、つまんないの。……ま、次の機会でいいか!」

 エルザは不服そうに告げると、浴場に向かって歩いて行った。

 小隊の女の子たちも、エルザの後に続いて浴場へ向かう。



 アレクやアルたちも入浴を済ませてると、飛行空母のラウンジのいつもの席で寛ぐ。

 アルは、傍らのアレクに尋ねる。

「なぁ、アレク。今回は出なくても良かったんじゃね?」

 アレクは、答える。

「そうだけど、自分たちのしたことを見届けないとね」

「そっか。……ま、オレは、お前が行くって言うなら、どこでもついていくけどさ」

 アルは、アレクの答えに納得したようであった。

 入浴を済ませた小隊の女の子たちもラウンジに集まり、入浴後のデザートを食べながら寛ぐ。



 やがて、出撃の時間が来る。

 アレクは口を開く。

「出撃の時間だ」

 アルは答える。

「良い時間だな」

 アレクは続ける。

「出撃準備が出来たら、皆、格納庫に集まってくれ」

「了解!」



 ほどなく出撃準備を済ませたユニコーン小隊は、格納庫に集まると自分たちの飛空艇に乗り込む。

 アレクは、小隊全員が飛空艇に乗り込んだ事を確認すると整備員に告げる。

「ユニコーン小隊、出撃します!」

「了解!」

 整備員は、同僚と共にアレクたちが乗る四機の飛空艇をエレベーターに押して乗せると、同僚の整備員に向かって叫ぶ。

「ユニコーンが出る! エレベーターを上げろ!」

 整備員が動力を切り替えると、飛行甲板に向けてアレクたちが搭乗する四機の飛空艇は、エレベーターで上昇していく。

 程なく、アレクたちが搭乗する四機の飛空艇は、飛行甲板に出る。 



 星の瞬く夜空に雲は無く、下弦の月が空母の甲板を照らしていた。

 飛行甲板は、魔導石による誘導灯が青白い光を放ちながら一列に並んで灯り、飛空艇の夜間離陸を誘導する。

 高度の高い上空の冷たい風がアレクの顔を撫でる。

 晴れた夜空のヒンヤリとした空気の感触にアレクの表情が引き締まる。

 アレクは、伝声管でルイーゼに告げる。

「行くよ。ルイーゼ」

「うん」

発動機始動(モータリングスタート)!」

 アレクは、掛け声と共に魔導発動機(エンジン)の起動ボタンを押す。

 魔導発動機(エンジン)の音が響く。

 ルイーゼが続く。

飛行前点検(プリフライトチェック)開始(スタート)!」

 ルイーゼは掛け声の後、スイッチを操作して機能を確認する。

発動機(エンジン)航法計器(エアーデータ)浮遊水晶(クリスタル)降着装置(ギア)昇降舵(フラップ)全て異常無し(オールグリーン)!」

 ルイーゼからの報告を受け、アレクは浮遊(フローティング)水晶(クリスタル)に魔力を加えるバルブを開く。

「ユニコーン・リーダー、離陸(テイクオフ)!」

 アレクの声の後、大きな団扇(うちわ)を扇いだような音と共に機体が浮かび上がる。

発進(ゴー)!」

 アレクは、クラッチをゆっくりと繋ぎ、スロットルを開ける。

 プロペラの回転数が上がり、風切り音が大きくなると、アレクとルイーゼの乗る機体ユニコーン・リーダーは、加速しながら飛行甲板の上を進む。

 やがて飛行甲板の終わりまでくると、二人の乗るユニコーン・リーダーは夜空へと舞い上がった。
 


 二人の乗るユニコーン・リーダーは飛行空母ユニコーン・ゼロの上を旋回して、小隊の仲間が離陸してくるのを待つ。

 直ぐにアルとナタリーが乗るユニコーン二号機が飛行空母を発進し、上昇してくる。

 続いて、ドミトリーとナディアが乗るユニコーン三号機とエルザとトゥルムが乗るユニコーン四号機が飛行空母から発進して上昇してくる。

 四機全てが揃ったユニコーン小隊は編隊を組むと、目標である城塞都市ティティスを目指して夜空を飛んで行った。



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 アレクは司令部を後にすると、小隊の仲間たちのテントを巡り、ハロルド王が率いるゴズフレズ軍がティティスに夜襲を仕掛けること、自分たち教導大隊がその支援に当たることを連絡して回る。
 アレクは、飛空艇で出撃することを知った小隊の女の子たちから、出撃する時間まで、ゴズフレズ軍の本営ではなく、飛行空母ユニコーン・ゼロで休息することを求められる。
 他の小隊が地上で休息している中、アレクたちユニコーン小隊は、飛空艇で飛行空母ユニコーン・ゼロに戻って来た。
 ユニコーン・ゼロは、ゴズフレズ軍の本営の上空に進出して滞空しており、飛空艇で飛べば僅かな時間で帰還することが出来た。
 ユニコーン・ゼロへの帰還を一番喜んでいたのは、エルザであった。
「きゃっほ~! 戻ってきたわ! さぁ、お風呂よ! お風呂!」
 アルは、エルザのはしゃぐ姿に呆れる。
「なぁ~んだ。風呂に入りたかったのか」
 エルザはアルに語る。
「そうよ! 子猫のような可愛らしい乙女は、お肌も綺麗に磨いておかないとね!」
 ナディアは、エルザをからかう。
「きっと、人狩りやカスパニア兵が喜ぶわね」
 エルザは、ナディアの言葉を全力で否定する。
「ち・が・う・わ・よ! あんな連中のためじゃなく、アレクよ! アレク! アレクのために綺麗でいないとね!」
 アレクは、エルザの言葉を聞いた苦笑いしていたが、エルザはアレクの腕を取ると、顔を近づけて耳元で|囁《ささや》く。
「ねぇ、アレク。アレクなら、一緒にお風呂に入っても良いわよ? エルザちゃん、サービスしちゃうから!」
 ルイーゼは、話を聞いてエルザをたしなめる。
「ユニコーン・ゼロは、規則で混浴できないわよ。軍艦だから」
「ちぇ~、つまんないの。……ま、次の機会でいいか!」
 エルザは不服そうに告げると、浴場に向かって歩いて行った。
 小隊の女の子たちも、エルザの後に続いて浴場へ向かう。
 アレクやアルたちも入浴を済ませてると、飛行空母のラウンジのいつもの席で寛ぐ。
 アルは、傍らのアレクに尋ねる。
「なぁ、アレク。今回は出なくても良かったんじゃね?」
 アレクは、答える。
「そうだけど、自分たちのしたことを見届けないとね」
「そっか。……ま、オレは、お前が行くって言うなら、どこでもついていくけどさ」
 アルは、アレクの答えに納得したようであった。
 入浴を済ませた小隊の女の子たちもラウンジに集まり、入浴後のデザートを食べながら寛ぐ。
 やがて、出撃の時間が来る。
 アレクは口を開く。
「出撃の時間だ」
 アルは答える。
「良い時間だな」
 アレクは続ける。
「出撃準備が出来たら、皆、格納庫に集まってくれ」
「了解!」
 ほどなく出撃準備を済ませたユニコーン小隊は、格納庫に集まると自分たちの飛空艇に乗り込む。
 アレクは、小隊全員が飛空艇に乗り込んだ事を確認すると整備員に告げる。
「ユニコーン小隊、出撃します!」
「了解!」
 整備員は、同僚と共にアレクたちが乗る四機の飛空艇をエレベーターに押して乗せると、同僚の整備員に向かって叫ぶ。
「ユニコーンが出る! エレベーターを上げろ!」
 整備員が動力を切り替えると、飛行甲板に向けてアレクたちが搭乗する四機の飛空艇は、エレベーターで上昇していく。
 程なく、アレクたちが搭乗する四機の飛空艇は、飛行甲板に出る。 
 星の瞬く夜空に雲は無く、下弦の月が空母の甲板を照らしていた。
 飛行甲板は、魔導石による誘導灯が青白い光を放ちながら一列に並んで灯り、飛空艇の夜間離陸を誘導する。
 高度の高い上空の冷たい風がアレクの顔を撫でる。
 晴れた夜空のヒンヤリとした空気の感触にアレクの表情が引き締まる。
 アレクは、伝声管でルイーゼに告げる。
「行くよ。ルイーゼ」
「うん」
「|発動機始動《モータリングスタート》!」
 アレクは、掛け声と共に|魔導発動機《エンジン》の起動ボタンを押す。
 |魔導発動機《エンジン》の音が響く。
 ルイーゼが続く。
「|飛行前点検《プリフライトチェック》、|開始《スタート》!」
 ルイーゼは掛け声の後、スイッチを操作して機能を確認する。
「|発動機《エンジン》、|航法計器《エアーデータ》、|浮遊水晶《クリスタル》、|降着装置《ギア》、|昇降舵《フラップ》、|全て異常無し《オールグリーン》!」
 ルイーゼからの報告を受け、アレクは|浮遊《フローティング》|水晶《クリスタル》に魔力を加えるバルブを開く。
「ユニコーン・リーダー、|離陸《テイクオフ》!」
 アレクの声の後、大きな|団扇《うちわ》を扇いだような音と共に機体が浮かび上がる。
「|発進《ゴー》!」
 アレクは、クラッチをゆっくりと繋ぎ、スロットルを開ける。
 プロペラの回転数が上がり、風切り音が大きくなると、アレクとルイーゼの乗る機体ユニコーン・リーダーは、加速しながら飛行甲板の上を進む。
 やがて飛行甲板の終わりまでくると、二人の乗るユニコーン・リーダーは夜空へと舞い上がった。
 二人の乗るユニコーン・リーダーは飛行空母ユニコーン・ゼロの上を旋回して、小隊の仲間が離陸してくるのを待つ。
 直ぐにアルとナタリーが乗るユニコーン二号機が飛行空母を発進し、上昇してくる。
 続いて、ドミトリーとナディアが乗るユニコーン三号機とエルザとトゥルムが乗るユニコーン四号機が飛行空母から発進して上昇してくる。
 四機全てが揃ったユニコーン小隊は編隊を組むと、目標である城塞都市ティティスを目指して夜空を飛んで行った。