三話 ビキニのおっぱいは嫌い?
ー/ー「見てー、イツロー! すごいよー、この絶景!」
「尻餅とかつかないよう気をつけろよ、すみれ! せっかくの新品ツナギが傷ついちゃうぞ」
革なんて傷ついてなんぼよ、などと大声で怒鳴り返しながら、溶岩流跡の上で異世界ごっこに興ずるすみれは、めちゃくちゃ楽しそう。てか、子どもか。はたまた、犬か。
ここは焼走り溶岩流。
三百年ほど前に起こった大噴火による溶岩流の固まったものだそうな。高さ十メートルを優に越える分厚い溶岩流の壁を登り切ると、そこは遥か数キロ先まで広がるただただ黒く冷えた溶岩の平原。黒々と広がった荒地のへりから向こうに見える緑溢れる樹林との対比が不自然過ぎる。たしかにこれは、この世の風景じゃない。
「クリストファー・ノーランは、なんでここを使わなかったんだろうね」
のたのたと降りてきたすみれは、ぜいぜい息を切らしながらそんなことを言う。『インターステラー』のことらしい。
「不勉強だったんだろ。そうでなきゃ、怪我しそうだってキャストからNG出されたとか」
「ありえるー。ここは危険だわ。お尻はつかなかったけど、手袋がこんなんなっちゃった」
すみれが突き出してきたライダーグローブの手のひらには、細かい傷がたくさんついていた。でも当のすみれはまったく気にしていない様子だった。
「ギアなんて、使ってなんぼだもんね」
それより暑い、と言いつつ手袋を外すと、逸郎の目の前で革ツナギのファスナーを一気にへそまで下ろした。そのまま両腕を抜き、ツナギの上半身を脱いでしまう。まろび出たのは前と同じ白のビキニに包まれた豊満なバスト。ただ前回と違うのは汗だくで赤みを帯びた素肌だ。空調の効いた室内でのコスプレとは違い、炎天下を小一時間走ってきたので、掻いた汗の量も半端ではない。白い布地が肌に張り付き、地色を映している。ていうか、まさかこれ、インナーパッド外してない?
「気持ちいぃーーー!」
狼狽える逸郎に構わず、声を上げて思い切り伸びをするすみれ。尖った胸の先端が、白い布地を押し上げてぷっくりと浮き上がっている。
挙動不審な逸郎の視線に、どしたの? と無邪気に尋ね、顔を覗き込んでくる。こいつ、確信犯だな。逸郎は胸の中で慄いていた。
「すみれ、人に見られたらマズイよ」
「え? どして? 人なんて、ここには私の他はイツローしかいないよ。それともイツロー、私のビキニのおっぱいは嫌い?」
「……嫌いなわけ、ないじゃん」
もごもごして視線を外す逸郎ににっこり微笑んだすみれは、じゃ、問題ないよね、と明るく応えた。
焼走りを発ち、パノラマラインを快走するころには逸郎の混乱も収まっていた。すみれの奴、本気で攻めてきてるな。あのおっぱいはマジで劇薬だ。
逸郎にだって性欲が無いわけではない。絶倫とまでは言わなくても、人並みにちゃんと欲情もする。研究室で目の当たりにしたすみれの半裸やデートの時に押し当てられた腕への感触をおかずにしたことも、一度ならずある。同様に、ヤリスちゃんねるでの弥生の嬌態にも何度となく欲情し、ネタにしてきた。下着のひとつもつけていないYシャツ姿の弥生を、自分が槍須に成り代わって悦ばせたい。そんな妄想を何度描いたことか。でもそれらは彼女たちを汚す行為だ、と思ってしまう自分も確固としている。さっき見た水着に浮いたすみれの乳首の影だって、今夜のおかずになるかもしれない。それはきっと恥ずかしいことだと、逸郎は思ってしまう。
そうは言っても――。
これは俺も、そろそろ心を決めないといけないよな。でも、いつ、どうやって? どんなタイミングで?
邪念で頭がいっぱいの初心者ライダーのスロットルなど、自然と緩んでくるのが常である。斜め後ろを追走していたはずのVストロームが横に並んできた。すみれが赤いジェットヘルの中から大声で叫んでいる。
「ヘイヘイ! エッチなこと考えながら乗ってると、置いてっちゃうよぉ!」
ご丁寧に、左手で胸を持ち上げて見せつけてくる。
くっそー、負けねぇぞ。次は俺が主導権取ってやる!
逸郎はアクセルを開き、運転に集中した。
樹海ラインに入ってしばらくしたところで車止めを見つけた逸郎は、ブレーキランプで停止の合図をした。
「さすがに緊張しっぱなしで一時間走ると、ちょっと疲れたね」
「うーん。疲れてないと思ってたけど、こうやってバイク降りると、背中の痛みがお姉さんにもわかるわ」
朝の残りのコッペパンを齧りながら、すみれはまたもファスナーを下す。ただし今度は胸の間まで。抑え込まれていた双丘が峡谷を開く。間に溜まっていた汗が水滴となってスーツの内側に流れていく。これはこれで、充分にエロい。
パンを食べる手を止めて、流れていった雫を目で追っている逸郎。それに気づいたすみれは、わざと独り言をする。
「上から流れる汗って、全部ショーツに吸い込まれちゃうのよね。おかげでショーツはぐしょぐしょ」
ぎょっとして顔を上げる逸郎に、すみれは精一杯の妖艶な笑顔を向け、見てみる? と振ってきた。
ここが反撃のしどころだ、と逸郎は気合を入れた。
「そんなに汗掻いたんなら、この先たぶん一時間くらいのところにいい温泉があるらしいんだけど、寄ってみる?」
「尻餅とかつかないよう気をつけろよ、すみれ! せっかくの新品ツナギが傷ついちゃうぞ」
革なんて傷ついてなんぼよ、などと大声で怒鳴り返しながら、溶岩流跡の上で異世界ごっこに興ずるすみれは、めちゃくちゃ楽しそう。てか、子どもか。はたまた、犬か。
ここは焼走り溶岩流。
三百年ほど前に起こった大噴火による溶岩流の固まったものだそうな。高さ十メートルを優に越える分厚い溶岩流の壁を登り切ると、そこは遥か数キロ先まで広がるただただ黒く冷えた溶岩の平原。黒々と広がった荒地のへりから向こうに見える緑溢れる樹林との対比が不自然過ぎる。たしかにこれは、この世の風景じゃない。
「クリストファー・ノーランは、なんでここを使わなかったんだろうね」
のたのたと降りてきたすみれは、ぜいぜい息を切らしながらそんなことを言う。『インターステラー』のことらしい。
「不勉強だったんだろ。そうでなきゃ、怪我しそうだってキャストからNG出されたとか」
「ありえるー。ここは危険だわ。お尻はつかなかったけど、手袋がこんなんなっちゃった」
すみれが突き出してきたライダーグローブの手のひらには、細かい傷がたくさんついていた。でも当のすみれはまったく気にしていない様子だった。
「ギアなんて、使ってなんぼだもんね」
それより暑い、と言いつつ手袋を外すと、逸郎の目の前で革ツナギのファスナーを一気にへそまで下ろした。そのまま両腕を抜き、ツナギの上半身を脱いでしまう。まろび出たのは前と同じ白のビキニに包まれた豊満なバスト。ただ前回と違うのは汗だくで赤みを帯びた素肌だ。空調の効いた室内でのコスプレとは違い、炎天下を小一時間走ってきたので、掻いた汗の量も半端ではない。白い布地が肌に張り付き、地色を映している。ていうか、まさかこれ、インナーパッド外してない?
「気持ちいぃーーー!」
狼狽える逸郎に構わず、声を上げて思い切り伸びをするすみれ。尖った胸の先端が、白い布地を押し上げてぷっくりと浮き上がっている。
挙動不審な逸郎の視線に、どしたの? と無邪気に尋ね、顔を覗き込んでくる。こいつ、確信犯だな。逸郎は胸の中で慄いていた。
「すみれ、人に見られたらマズイよ」
「え? どして? 人なんて、ここには私の他はイツローしかいないよ。それともイツロー、私のビキニのおっぱいは嫌い?」
「……嫌いなわけ、ないじゃん」
もごもごして視線を外す逸郎ににっこり微笑んだすみれは、じゃ、問題ないよね、と明るく応えた。
焼走りを発ち、パノラマラインを快走するころには逸郎の混乱も収まっていた。すみれの奴、本気で攻めてきてるな。あのおっぱいはマジで劇薬だ。
逸郎にだって性欲が無いわけではない。絶倫とまでは言わなくても、人並みにちゃんと欲情もする。研究室で目の当たりにしたすみれの半裸やデートの時に押し当てられた腕への感触をおかずにしたことも、一度ならずある。同様に、ヤリスちゃんねるでの弥生の嬌態にも何度となく欲情し、ネタにしてきた。下着のひとつもつけていないYシャツ姿の弥生を、自分が槍須に成り代わって悦ばせたい。そんな妄想を何度描いたことか。でもそれらは彼女たちを汚す行為だ、と思ってしまう自分も確固としている。さっき見た水着に浮いたすみれの乳首の影だって、今夜のおかずになるかもしれない。それはきっと恥ずかしいことだと、逸郎は思ってしまう。
そうは言っても――。
これは俺も、そろそろ心を決めないといけないよな。でも、いつ、どうやって? どんなタイミングで?
邪念で頭がいっぱいの初心者ライダーのスロットルなど、自然と緩んでくるのが常である。斜め後ろを追走していたはずのVストロームが横に並んできた。すみれが赤いジェットヘルの中から大声で叫んでいる。
「ヘイヘイ! エッチなこと考えながら乗ってると、置いてっちゃうよぉ!」
ご丁寧に、左手で胸を持ち上げて見せつけてくる。
くっそー、負けねぇぞ。次は俺が主導権取ってやる!
逸郎はアクセルを開き、運転に集中した。
樹海ラインに入ってしばらくしたところで車止めを見つけた逸郎は、ブレーキランプで停止の合図をした。
「さすがに緊張しっぱなしで一時間走ると、ちょっと疲れたね」
「うーん。疲れてないと思ってたけど、こうやってバイク降りると、背中の痛みがお姉さんにもわかるわ」
朝の残りのコッペパンを齧りながら、すみれはまたもファスナーを下す。ただし今度は胸の間まで。抑え込まれていた双丘が峡谷を開く。間に溜まっていた汗が水滴となってスーツの内側に流れていく。これはこれで、充分にエロい。
パンを食べる手を止めて、流れていった雫を目で追っている逸郎。それに気づいたすみれは、わざと独り言をする。
「上から流れる汗って、全部ショーツに吸い込まれちゃうのよね。おかげでショーツはぐしょぐしょ」
ぎょっとして顔を上げる逸郎に、すみれは精一杯の妖艶な笑顔を向け、見てみる? と振ってきた。
ここが反撃のしどころだ、と逸郎は気合を入れた。
「そんなに汗掻いたんなら、この先たぶん一時間くらいのところにいい温泉があるらしいんだけど、寄ってみる?」
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ここは焼走り溶岩流。
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三百年ほど前に起こった大噴火による溶岩流の固まったものだそうな。高さ十メートルを優に越える分厚い溶岩流の壁を登り切ると、そこは遥か数キロ先まで広がるただただ黒く冷えた溶岩の平原。黒々と広がった荒地のへりから向こうに見える緑溢れる樹林との対比が不自然過ぎる。たしかにこれは、この世の風景じゃない。
「クリストファー・ノーランは、なんでここを使わなかったんだろうね」
のたのたと降りてきたすみれは、ぜいぜい息を切らしながらそんなことを言う。『インターステラー』のことらしい。
「不勉強だったんだろ。そうでなきゃ、怪我しそうだってキャストからNG出されたとか」
「ありえるー。ここは危険だわ。お尻はつかなかったけど、手袋がこんなんなっちゃった」
すみれが突き出してきたライダーグローブの手のひらには、細かい傷がたくさんついていた。でも当のすみれはまったく気にしていない様子だった。
「ギアなんて、使ってなんぼだもんね」
それより暑い、と言いつつ手袋を外すと、逸郎の目の前で革ツナギのファスナーを一気にへそまで下ろした。そのまま両腕を抜き、ツナギの上半身を脱いでしまう。まろび出たのは前と同じ白のビキニに包まれた豊満なバスト。ただ前回と違うのは汗だくで赤みを帯びた素肌だ。空調の効いた室内でのコスプレとは違い、炎天下を小一時間走ってきたので、掻いた汗の量も半端ではない。白い布地が肌に張り付き、地色を映している。ていうか、まさかこれ、インナーパッド外してない?
「気持ちいぃーーー!」
狼狽える逸郎に構わず、声を上げて思い切り伸びをするすみれ。尖った胸の先端が、白い布地を押し上げてぷっくりと浮き上がっている。
挙動不審な逸郎の視線に、どしたの? と無邪気に尋ね、顔を覗き込んでくる。こいつ、確信犯だな。逸郎は胸の中で慄いていた。
挙動不審な逸郎の視線に、どしたの? と無邪気に尋ね、顔を覗き込んでくる。こいつ、確信犯だな。逸郎は胸の中で慄いていた。
「すみれ、人に見られたらマズイよ」
「え? どして? 人なんて、ここには私の他はイツローしかいないよ。それともイツロー、私のビキニのおっぱいは嫌い?」
「……嫌いなわけ、ないじゃん」
もごもごして視線を外す逸郎ににっこり微笑んだすみれは、じゃ、問題ないよね、と明るく応えた。
焼走りを発ち、パノラマラインを快走するころには逸郎の混乱も収まっていた。すみれの奴、本気で攻めてきてるな。あのおっぱいはマジで劇薬だ。
逸郎にだって性欲が無いわけではない。絶倫とまでは言わなくても、人並みにちゃんと欲情もする。研究室で目の当たりにしたすみれの半裸やデートの時に押し当てられた腕への感触をおかずにしたことも、一度ならずある。同様に、ヤリスちゃんねるでの弥生の嬌態にも何度となく欲情し、ネタにしてきた。下着のひとつもつけていないYシャツ姿の弥生を、自分が槍須に成り代わって悦ばせたい。そんな妄想を何度描いたことか。でもそれらは彼女たちを汚す行為だ、と思ってしまう自分も確固としている。さっき見た水着に浮いたすみれの乳首の影だって、今夜のおかずになるかもしれない。それはきっと恥ずかしいことだと、逸郎は思ってしまう。
そうは言っても――。
そうは言っても――。
これは俺も、そろそろ心を決めないといけないよな。でも、いつ、どうやって? どんなタイミングで?
邪念で頭がいっぱいの初心者ライダーのスロットルなど、自然と緩んでくるのが常である。斜め後ろを追走していたはずのVストロームが横に並んできた。すみれが赤いジェットヘルの中から大声で叫んでいる。
邪念で頭がいっぱいの初心者ライダーのスロットルなど、自然と緩んでくるのが常である。斜め後ろを追走していたはずのVストロームが横に並んできた。すみれが赤いジェットヘルの中から大声で叫んでいる。
「ヘイヘイ! エッチなこと考えながら乗ってると、置いてっちゃうよぉ!」
ご丁寧に、左手で胸を持ち上げて見せつけてくる。
くっそー、負けねぇぞ。次は俺が主導権取ってやる!
逸郎はアクセルを開き、運転に集中した。
くっそー、負けねぇぞ。次は俺が主導権取ってやる!
逸郎はアクセルを開き、運転に集中した。
樹海ラインに入ってしばらくしたところで車止めを見つけた逸郎は、ブレーキランプで停止の合図をした。
「さすがに緊張しっぱなしで一時間走ると、ちょっと疲れたね」
「うーん。疲れてないと思ってたけど、こうやってバイク降りると、背中の痛みがお姉さんにもわかるわ」
朝の残りのコッペパンを齧りながら、すみれはまたもファスナーを下す。ただし今度は胸の間まで。抑え込まれていた双丘が峡谷を開く。間に溜まっていた汗が水滴となってスーツの内側に流れていく。これはこれで、充分にエロい。
パンを食べる手を止めて、流れていった雫を目で追っている逸郎。それに気づいたすみれは、わざと独り言をする。
パンを食べる手を止めて、流れていった雫を目で追っている逸郎。それに気づいたすみれは、わざと独り言をする。
「上から流れる汗って、全部ショーツに吸い込まれちゃうのよね。おかげでショーツはぐしょぐしょ」
ぎょっとして顔を上げる逸郎に、すみれは精一杯の妖艶な笑顔を向け、見てみる? と振ってきた。
ここが反撃のしどころだ、と逸郎は気合を入れた。
ここが反撃のしどころだ、と逸郎は気合を入れた。
「そんなに汗掻いたんなら、この先たぶん一時間くらいのところにいい温泉があるらしいんだけど、寄ってみる?」