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第百六十四話 夏の思い出

ー/ー



--野営訓練 二日目。

 目覚めたアレクたちは、昨夜の夕食の残りのスープと黒パン、スクランブルエッグなどで簡単に朝食を済ませると、再び皆で海で泳ぎ始める。

 昼は、豪快に焼肉で昼食を取る。

 昼食後は昨日に引き続き、トゥルムとドミトリーは酒盛りを始め、ナディアとエルザは日光浴 兼 昼寝。

 ルイーゼとナタリーは、それぞれ自分の彼氏であるアレクとアルを首まで砂に埋めて遊んでいた。



 楽しい時間は、あっという間に過ぎ、陽が傾き始める。

 水平線に沈んでいく太陽は、辺りの景色を朱に染め、時の流れを知らせる。

 アレクは一人、砂浜に座って佇み、水平線に沈んでいく太陽を眺めていた。

 ルイーゼは、アレクの隣に座り話し掛ける。

「……アレク。どうしたの?」

 ルイーゼからの問いにアレクは、微笑みながら答える。

「ん? ……楽しかったなって」
 
 アレクの答えを聞いたルイーゼも笑顔で答える。

「そうね」

「また来年も、皆でこの海に来たいな」

「良いわね。また、皆で泳いで、焼肉食べて、遊んで、泊まって……」

「また、来年、この海に来れると思う?」 

「来れるわよ。二学年も『野営訓練』はあるから」

 夕暮れの砂浜で二人きりになったので、ルイーゼはアレクに甘える。

 ルイーゼは隣に座るアレクの腕を組むと、アレクの肩に寄り掛かり頬ずりする。

 ルイーゼの瞳が上目遣いにアレクを見つめる。

「アレク。……私のこと好き?」

「好きだよ」

「愛してる?」

「愛してる」

 アレクの答えを聞いたルイーゼは、改めてアレクのエメラルドの瞳を見詰める。

「……私もアレクが好き。初めて出会った時から。貴方の澄んだ瞳を見た時から、ずっと」

 ルイーゼの言葉にアレクは照れながら微笑む。

 ルイーゼは続ける。

「私、士官学校での暮らしや、今、この時がずっと続けば良いって思ってる。アレクと一緒にいられるから。皇宮に戻ったら、貴方は皇子で、私はメイド。だから……」

 そこまで言うと、ルイーゼはアレクの胸にすがりつく。

「ルイーゼ」

 アレクは、ルイーゼを優しく抱き締め、頭を撫でる。
 
 アレクはルイーゼに告げる。

「……オレは必ず上級騎士(パラディン)になって、父上から懲罰を解いて貰う。帝国第二皇子に戻って、必ず君を幸せにする。ずっと一緒だ。約束する」

 ルイーゼは、アレクの瞳を見詰めたままアレクの言葉を聞くと、アレクにキスする。

 二人は、砂浜に並んで座ったまま水平線に沈んでいく夕日を眺める。

 二人だけの砂浜にさざ波の音だけが繰り返し響いていた。


 
--夜。

 野営訓練に来ていたのは、アレクたちだけではなく、ルドルフたちグリフォン小隊も野営訓練に参加していた。

 グリフォン小隊の仲間達が、飲んで食べて騒ぐのを他所に、ルドルフは焚火の傍に一人で座っていた。

 下弦の月が星の夜空を照らす中で、一人佇む。

 ルドルフは、天覧試合で知った自分の生い立ちについて悩んでいた。

(まさか、皇帝陛下がオレの父さんだったなんて……)

(『至高にして最強の騎士』。オレはその血を受け継いでいる)

(皇帝や皇太子になろうとは思わない。ただ強くなりたい)

(母さんを守れる強さが欲しい)

 ルドルフが自分の右手を見詰めながら、あれこれと考えていると、魔導師の女の子アンナがルドルフの隣に座って話し掛けて来る。

「どうしたの? そんなに深刻な顔して?」

 ルドルフは、素っ気なく答える。

「別に……」

 アンナはルドルフにツッコミを入れる。

「嘘ばっかり。ルドルフ、天覧試合から変わったわよ? ……何かあったの?」

 ルドルフは、自嘲気味に鼻で笑うと、語り始める。

「フッ……。天覧試合の後、オレの父さんに会ったのさ」

 ルドルフの言葉を聞いたアンナは驚く。

「探していたお父さんに会ったの!?」

 ルドルフは、遠い目をして続ける。

「ああ。……殴り倒してやろうとしたが、まるで歯が立たなかった。母さんが言っていた事は本当だった。お前の父は『至高にして最強の騎士』。確かにその通りだった」

 ルドルフは、握った自分の右手を見詰めながら続ける。

「『至高にして最強の騎士』。オレはその血を受け継いでいる。自分が何者なのか、やっと判ったんだ」

 アンナは、ルドルフの瞳を見詰めたまま、じっと話を聞いていた。

 ルドルフは、隣で自分を見詰めたまま話を聞いているアンナに尋ねる。

「……オレは、上級騎士(パラディン)になれると思うか?」

 アンナは、キッパリと言い切る。

「なれるわ!!」

 ルドルフはアンナの答えに驚く。

 アンナは、黒髪のツインテールを揺らしながら力説する。

「天空を飛ぶ鷹の子は、(カラス)家鴨(アヒル)にはならない。必ず、親と同じ鷹になる。必ず、その翼を広げて親と同じ天空を飛ぶわ!」

 ルドルフは、改めて魔導師の女の子を見詰め返す。

「ルドルフ。貴方には才能があるわ。上級騎士(パラディン)になれる。……私には判る。貴方は一人じゃない。私が貴方の側にいるわ」

 アンナはそう告げると、ルドルフにキスする。

 キスを終えたルドルフは、アンナの肩に手を置いて呟く。

「ありがとう」



 アレクとルイーゼ、アルとナタリー。そしてルドルフ。

 初代ユニコーン小隊の、ラインハルトとナナイ、ジカイラたちの息子たちの暑い夏が過ぎようとしていた。

 アレクたちの、英雄の息子たちの冒険は続く。



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--野営訓練 二日目。
 目覚めたアレクたちは、昨夜の夕食の残りのスープと黒パン、スクランブルエッグなどで簡単に朝食を済ませると、再び皆で海で泳ぎ始める。
 昼は、豪快に焼肉で昼食を取る。
 昼食後は昨日に引き続き、トゥルムとドミトリーは酒盛りを始め、ナディアとエルザは日光浴 兼 昼寝。
 ルイーゼとナタリーは、それぞれ自分の彼氏であるアレクとアルを首まで砂に埋めて遊んでいた。
 楽しい時間は、あっという間に過ぎ、陽が傾き始める。
 水平線に沈んでいく太陽は、辺りの景色を朱に染め、時の流れを知らせる。
 アレクは一人、砂浜に座って佇み、水平線に沈んでいく太陽を眺めていた。
 ルイーゼは、アレクの隣に座り話し掛ける。
「……アレク。どうしたの?」
 ルイーゼからの問いにアレクは、微笑みながら答える。
「ん? ……楽しかったなって」
 アレクの答えを聞いたルイーゼも笑顔で答える。
「そうね」
「また来年も、皆でこの海に来たいな」
「良いわね。また、皆で泳いで、焼肉食べて、遊んで、泊まって……」
「また、来年、この海に来れると思う?」 
「来れるわよ。二学年も『野営訓練』はあるから」
 夕暮れの砂浜で二人きりになったので、ルイーゼはアレクに甘える。
 ルイーゼは隣に座るアレクの腕を組むと、アレクの肩に寄り掛かり頬ずりする。
 ルイーゼの瞳が上目遣いにアレクを見つめる。
「アレク。……私のこと好き?」
「好きだよ」
「愛してる?」
「愛してる」
 アレクの答えを聞いたルイーゼは、改めてアレクのエメラルドの瞳を見詰める。
「……私もアレクが好き。初めて出会った時から。貴方の澄んだ瞳を見た時から、ずっと」
 ルイーゼの言葉にアレクは照れながら微笑む。
 ルイーゼは続ける。
「私、士官学校での暮らしや、今、この時がずっと続けば良いって思ってる。アレクと一緒にいられるから。皇宮に戻ったら、貴方は皇子で、私はメイド。だから……」
 そこまで言うと、ルイーゼはアレクの胸にすがりつく。
「ルイーゼ」
 アレクは、ルイーゼを優しく抱き締め、頭を撫でる。
 アレクはルイーゼに告げる。
「……オレは必ず|上級騎士《パラディン》になって、父上から懲罰を解いて貰う。帝国第二皇子に戻って、必ず君を幸せにする。ずっと一緒だ。約束する」
 ルイーゼは、アレクの瞳を見詰めたままアレクの言葉を聞くと、アレクにキスする。
 二人は、砂浜に並んで座ったまま水平線に沈んでいく夕日を眺める。
 二人だけの砂浜にさざ波の音だけが繰り返し響いていた。
--夜。
 野営訓練に来ていたのは、アレクたちだけではなく、ルドルフたちグリフォン小隊も野営訓練に参加していた。
 グリフォン小隊の仲間達が、飲んで食べて騒ぐのを他所に、ルドルフは焚火の傍に一人で座っていた。
 下弦の月が星の夜空を照らす中で、一人佇む。
 ルドルフは、天覧試合で知った自分の生い立ちについて悩んでいた。
(まさか、皇帝陛下がオレの父さんだったなんて……)
(『至高にして最強の騎士』。オレはその血を受け継いでいる)
(皇帝や皇太子になろうとは思わない。ただ強くなりたい)
(母さんを守れる強さが欲しい)
 ルドルフが自分の右手を見詰めながら、あれこれと考えていると、魔導師の女の子アンナがルドルフの隣に座って話し掛けて来る。
「どうしたの? そんなに深刻な顔して?」
 ルドルフは、素っ気なく答える。
「別に……」
 アンナはルドルフにツッコミを入れる。
「嘘ばっかり。ルドルフ、天覧試合から変わったわよ? ……何かあったの?」
 ルドルフは、自嘲気味に鼻で笑うと、語り始める。
「フッ……。天覧試合の後、オレの父さんに会ったのさ」
 ルドルフの言葉を聞いたアンナは驚く。
「探していたお父さんに会ったの!?」
 ルドルフは、遠い目をして続ける。
「ああ。……殴り倒してやろうとしたが、まるで歯が立たなかった。母さんが言っていた事は本当だった。お前の父は『至高にして最強の騎士』。確かにその通りだった」
 ルドルフは、握った自分の右手を見詰めながら続ける。
「『至高にして最強の騎士』。オレはその血を受け継いでいる。自分が何者なのか、やっと判ったんだ」
 アンナは、ルドルフの瞳を見詰めたまま、じっと話を聞いていた。
 ルドルフは、隣で自分を見詰めたまま話を聞いているアンナに尋ねる。
「……オレは、|上級騎士《パラディン》になれると思うか?」
 アンナは、キッパリと言い切る。
「なれるわ!!」
 ルドルフはアンナの答えに驚く。
 アンナは、黒髪のツインテールを揺らしながら力説する。
「天空を飛ぶ鷹の子は、|烏《カラス》や|家鴨《アヒル》にはならない。必ず、親と同じ鷹になる。必ず、その翼を広げて親と同じ天空を飛ぶわ!」
 ルドルフは、改めて魔導師の女の子を見詰め返す。
「ルドルフ。貴方には才能があるわ。|上級騎士《パラディン》になれる。……私には判る。貴方は一人じゃない。私が貴方の側にいるわ」
 アンナはそう告げると、ルドルフにキスする。
 キスを終えたルドルフは、アンナの肩に手を置いて呟く。
「ありがとう」
 アレクとルイーゼ、アルとナタリー。そしてルドルフ。
 初代ユニコーン小隊の、ラインハルトとナナイ、ジカイラたちの息子たちの暑い夏が過ぎようとしていた。
 アレクたちの、英雄の息子たちの冒険は続く。