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第百十八話 布告、膝枕

ー/ー



 アレクたちがキャスパーシティに到着し、捜索を開始してから三日。

 懸命に捜索を行っていたものの、アレクたちは、未だにトラキア解放戦線のアジトを摘発する事は出来ずにいた。

 飛行空母の艦橋に、エリシスとリリー、ジカイラ、ヒナの四人はいた。

 エリシスは呟く。

「……この三日間、進展無しね」

 リリーは答える。

「そうですね。一体、どこに隠れているのやら……」

 エリシスは楽しそうに思いついた案を話す。

「こういうのはどうかしら? 帝国不死兵団を召喚して、街中、一軒一軒しらみつぶしに当たるというのは?」

 エリシスの思い付きに、すかさずリリーがダメ出しする。

動死体(ゾンビ)骸骨(スケルトン)に街中を一軒一軒、家探しさせるつもりですか? ……そんな事をしたら、街中、パニックになります! それこそ、敵に、こちら側の動きを教えるようなものです! ダメですよ!」

 エリシスは、次の案を出す。

「……いっそのこと、この街の住人を全部、殺しちゃうのはどう? 楽でいいわよ?」

 リリーは呆れたように答える。

「敵地ならともかく、ここは帝国領です! 関係の無い臣民まで皆殺しにしたら、皇帝陛下から怒られます!」

 リリーにダメ出しされ、エリシスはため息をつくと、再び退屈している顔に戻る。

 二人のやり取りを見ていたジカイラは案を出す。

「伯爵。こういうのはどうでしょう? 街の住民に『付近に不審な者たちが集まっている場所は無いか』と情報提供を呼び掛けるのです」

 ジカイラの案に、すかさずリリーは賛同する。

「中佐、名案ですね。小さな田舎町だから、隣や近所は、皆、顔見知りでしょう。……不審な者たちが集まっていれば、住民が気付くはずです」

 エリシスはジカイラに感心する。

「さすがね、中佐。陛下の信任が厚いだけのことはあるわ。それでいきましょう」

 提案はリリーが手配し、帝国政府の名前でキャスパーシティに情報提供を呼び掛ける布告が出された。

 布告の効果はすぐに表れ、各方面の住民から通報があり、三日後には市内の四か所に捜索対象個所を絞る事ができた。



--帝都 皇宮。 

 ジークは、自分の部屋のベッドで目が覚める。

 アストリッドは、膝枕をしているジークの頭を優しく撫でながら声を掛ける。

「お目覚めですか?」

 ジークはアストリッドに尋ねる。

「……アストリッド、私はどれくらいの時間、眠っていた?」

 アストリッドは、微笑みながら答える。

「二時間くらいです」

「すまない。少し横になるつもりが、熟睡してしまったようだ」

「良いのです。昼食後のお昼寝です。アストリッドと二人きりの時くらい、くつろいで下さい」

 ジークは、膝枕をしているアストリッドの太腿の間に顔を埋めると、アストリッドの温もりを感じる。

「こうしていると、幼い頃、母上に膝枕をして貰った時の事を思い出す」

「……ジーク様」

「弟たちの手前、いつまでも私が母上に甘える訳にはいかなくてな」

 アストリッドは、ジークにキスする。

「……今は、ジーク様とアストリッドの二人きりです。誰も見ていません。好きなだけ甘えて下さい」

「ありがとう。もう充分、癒された。重くなかったか?」

 そう言うとジークは、ベッドで横になっていた身体を起こす。

「大丈夫です。……あの、ジーク様」

「ん? どうした?」

 アストリッドは上目遣いで甘えるようにジークに尋ねる。

「アストリッドも膝枕して良いですか?」

「はは。良いぞ」

 ジークは、ベッドのヘッドボードに大きめのクッションを置いて寄り掛かると、ベッドの上に足を延ばす。

 アストリッドは、ベッドの上に横になり、ジークの太腿の上にちょこんと頭を乗せる。

 ジークは尋ねる。

「男の膝枕など、固いだけではないか?」

「いいえ。とっても気持ち良いです」

「ふふ。そうか」

 ジークは、アストリッドの頭を優しく撫でる。

「それに……」

「それに?」

「……今だけは、アストリッドがジーク様を独り占めしています」

 アストリッドは、悪戯っぽく笑って見せる。

「……そうだな」



 普段、努力家でプライドが高い男ほど、愛する女の膝枕で癒されたいと望む時がある。

 自らの疲れた心と身体に休息を与えようと。




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 アレクたちがキャスパーシティに到着し、捜索を開始してから三日。
 懸命に捜索を行っていたものの、アレクたちは、未だにトラキア解放戦線のアジトを摘発する事は出来ずにいた。
 飛行空母の艦橋に、エリシスとリリー、ジカイラ、ヒナの四人はいた。
 エリシスは呟く。
「……この三日間、進展無しね」
 リリーは答える。
「そうですね。一体、どこに隠れているのやら……」
 エリシスは楽しそうに思いついた案を話す。
「こういうのはどうかしら? 帝国不死兵団を召喚して、街中、一軒一軒しらみつぶしに当たるというのは?」
 エリシスの思い付きに、すかさずリリーがダメ出しする。
「|動死体《ゾンビ》や|骸骨《スケルトン》に街中を一軒一軒、家探しさせるつもりですか? ……そんな事をしたら、街中、パニックになります! それこそ、敵に、こちら側の動きを教えるようなものです! ダメですよ!」
 エリシスは、次の案を出す。
「……いっそのこと、この街の住人を全部、殺しちゃうのはどう? 楽でいいわよ?」
 リリーは呆れたように答える。
「敵地ならともかく、ここは帝国領です! 関係の無い臣民まで皆殺しにしたら、皇帝陛下から怒られます!」
 リリーにダメ出しされ、エリシスはため息をつくと、再び退屈している顔に戻る。
 二人のやり取りを見ていたジカイラは案を出す。
「伯爵。こういうのはどうでしょう? 街の住民に『付近に不審な者たちが集まっている場所は無いか』と情報提供を呼び掛けるのです」
 ジカイラの案に、すかさずリリーは賛同する。
「中佐、名案ですね。小さな田舎町だから、隣や近所は、皆、顔見知りでしょう。……不審な者たちが集まっていれば、住民が気付くはずです」
 エリシスはジカイラに感心する。
「さすがね、中佐。陛下の信任が厚いだけのことはあるわ。それでいきましょう」
 提案はリリーが手配し、帝国政府の名前でキャスパーシティに情報提供を呼び掛ける布告が出された。
 布告の効果はすぐに表れ、各方面の住民から通報があり、三日後には市内の四か所に捜索対象個所を絞る事ができた。
--帝都 皇宮。 
 ジークは、自分の部屋のベッドで目が覚める。
 アストリッドは、膝枕をしているジークの頭を優しく撫でながら声を掛ける。
「お目覚めですか?」
 ジークはアストリッドに尋ねる。
「……アストリッド、私はどれくらいの時間、眠っていた?」
 アストリッドは、微笑みながら答える。
「二時間くらいです」
「すまない。少し横になるつもりが、熟睡してしまったようだ」
「良いのです。昼食後のお昼寝です。アストリッドと二人きりの時くらい、くつろいで下さい」
 ジークは、膝枕をしているアストリッドの太腿の間に顔を埋めると、アストリッドの温もりを感じる。
「こうしていると、幼い頃、母上に膝枕をして貰った時の事を思い出す」
「……ジーク様」
「弟たちの手前、いつまでも私が母上に甘える訳にはいかなくてな」
 アストリッドは、ジークにキスする。
「……今は、ジーク様とアストリッドの二人きりです。誰も見ていません。好きなだけ甘えて下さい」
「ありがとう。もう充分、癒された。重くなかったか?」
 そう言うとジークは、ベッドで横になっていた身体を起こす。
「大丈夫です。……あの、ジーク様」
「ん? どうした?」
 アストリッドは上目遣いで甘えるようにジークに尋ねる。
「アストリッドも膝枕して良いですか?」
「はは。良いぞ」
 ジークは、ベッドのヘッドボードに大きめのクッションを置いて寄り掛かると、ベッドの上に足を延ばす。
 アストリッドは、ベッドの上に横になり、ジークの太腿の上にちょこんと頭を乗せる。
 ジークは尋ねる。
「男の膝枕など、固いだけではないか?」
「いいえ。とっても気持ち良いです」
「ふふ。そうか」
 ジークは、アストリッドの頭を優しく撫でる。
「それに……」
「それに?」
「……今だけは、アストリッドがジーク様を独り占めしています」
 アストリッドは、悪戯っぽく笑って見せる。
「……そうだな」
 普段、努力家でプライドが高い男ほど、愛する女の膝枕で癒されたいと望む時がある。
 自らの疲れた心と身体に休息を与えようと。