第百三話 黒衣の剣士と不死王の討伐任務
ー/ー 燕尾服の女が薄暗い石階段を下へ下へと降りていく。
石階段が終わりに近づくと、部屋の入口から青白い光が石階段に差し込む。
燕尾服の女は石階段から部屋の中へと入っていく。
部屋の中は荘厳な白亜の霊廟であった。
魔法の青白い光を照らし出すシャンデリアが天井からいくつも吊るされている広大な空間に、燕尾服の女が歩く足音が響く。
白亜の霊廟の中央奥には白い大理石の棺が安置されており、一人の女が棺の隣に座って棺にもたれ掛かっている。
女は真紅のイブニングドレスを着ていた。
髪はウェーブの掛かった赤毛だが、肌は透き通るように白い妖艶な美女は、もたれ掛かった大理石の石棺の上に両手を置き頬を付け、目を閉じて佇んでいた。
燕尾服の女はドレスの女の方へ歩いていく。
ドレスの女が目を開け、口を開く。
「リリー。私の幸せなひとときを邪魔しないでくれる?」
リリーと呼ばれた燕尾服の女はドレスの女に答える。
「エリシス。貴女の答えはいつも同じですね」
赤いドレスの女はエリシスと呼ばれた。
「変わらないわ。あの時から何も」
「七百年間、同じですよ」
「そう? これからも変わらないわ」
赤いドレスの女は、帝国南部方面軍 総司令 兼 帝国不死兵団 司令 エリシス・クロフォード伯爵。
アンデッドの頂点である不死王であり、大帝が亡くなってからも、七百年以上、帝室の地下墳墓で大帝の棺の傍らにいた。
リリーと呼ばれた燕尾服の女は、リリー・マルレー。
エリシスの副官 兼 執事であり、理知的なプラチナブロンドの美しい女性だが、真祖吸血鬼であった。
リリーがエリシスに告げる。
「エリシス。陛下がお呼びです」
「……そう」
エリシスは上半身を起こすと、頬を付けていた石棺を愛おしそうに撫でながら、石棺に語り掛ける。
「……死んでいる貴方を愛しているけど、生きている貴方も愛しているの。……ごめんなさい。行くわね」
エリシスの言う『死んでいる貴方』とは、大帝と呼ばれるバレンシュテット帝国初代皇帝の事であり、『生きている貴方』とは、『大帝の生まれ変わり』と称されるラインハルトのことであった。
エリシスとリリーは、それぞれドレスと燕尾服から、帝国軍の高級将校用軍服に着替える。
エリシスがリリーに告げる。
「行くわよ。リリー」
「はい」
エリシスは、手をかざすと魔法を唱える。
「転移門」
エリシスとリリーは、現れた転移門を通って皇宮のラインハルトの元へ向かう。
--皇宮。
ラインハルトに呼び出されたジカイラは、ラインハルトと二人で皇宮の会議室にいた。
ジカイラが口を開く。
「……『トラキア解放戦線』を名乗るテロ組織を探し出して、叩き潰せば良いんだな?」
ラインハルトが答える。
「そうだ。それと、エリシスを付ける。彼女と一緒にやってくれ」
ジカイラは深刻な表情で呟く。
「エリシス伯爵、リリーの二人と一緒にか……」
ジカイラは、七百年以上生きている不老不死の不死者の美女二人に対して、本能的に『底知れぬ恐ろしさ』を感じていた。
(……マスタークラスの暗黒騎士になったが、オレがあの二人のうちの、どちらか一人と戦っても、全く勝てる気がしない)
ジカイラはそう考えていた。
ジカイラは、十七年前、港湾自治都市群の中核都市の一つであるエンクホイゼンで、彼女たちと一緒に戦ったことがあった。
ジカイラの脳裏に十七年前のエリシスの戦いぶりが蘇る。
エリシスは、チンピラ相手に腐敗の魔法を掛けた。
チンピラは、生きたまま全身が腐り落ちていき、泣き叫びながら絶命していく。
エリシスは、そのチンピラの様子を眺め、サディスティックな笑みを浮かべていた。
(※詳しくは『アスカニア大陸戦記 黒衣の剣士と氷の魔女』を参照下さい。)
もし、エリシスがラインハルトや帝国に敵対するトラキア解放戦線の者を捕まえたら、あらゆる苦痛を与え、生きたまま八つ裂きにするであろうことは明らかであった。
ラインハルトは、エリシスの性癖を知っていてトラキア解放戦線の討伐任務に差し向けた。
ジカイラは、ラインハルトがトラキア解放戦線に対して、どれほど激怒しているか察することができた。
程なく会議室に転移門が現れ、軍服姿のエリシスとリリーがやって来る。
「陛下。只今、参上致しました」
エリシスとリリーは、ラインハルトに対して畏まった挨拶をする。
ラインハルトは、二人に告げる。
「エリシス、リリー。ジカイラと一緒に『トラキア解放戦線』を名乗るテロ組織を探し出して、叩き潰せ。皆殺しにしろ」
「畏まりました」
エリシスは、ラインハルトに一礼するとジカイラの方を向いて口を開く。
「よろしくね。ジカイラ中佐」
ジカイラは、エリシスに恭しく頭を下げる。
「よろしくお願いします」
リリーは、ジカイラに微笑む。
「あの『黒衣の剣士』と再び御一緒できるとは光栄ですわ」
「こちらこそ」
石階段が終わりに近づくと、部屋の入口から青白い光が石階段に差し込む。
燕尾服の女は石階段から部屋の中へと入っていく。
部屋の中は荘厳な白亜の霊廟であった。
魔法の青白い光を照らし出すシャンデリアが天井からいくつも吊るされている広大な空間に、燕尾服の女が歩く足音が響く。
白亜の霊廟の中央奥には白い大理石の棺が安置されており、一人の女が棺の隣に座って棺にもたれ掛かっている。
女は真紅のイブニングドレスを着ていた。
髪はウェーブの掛かった赤毛だが、肌は透き通るように白い妖艶な美女は、もたれ掛かった大理石の石棺の上に両手を置き頬を付け、目を閉じて佇んでいた。
燕尾服の女はドレスの女の方へ歩いていく。
ドレスの女が目を開け、口を開く。
「リリー。私の幸せなひとときを邪魔しないでくれる?」
リリーと呼ばれた燕尾服の女はドレスの女に答える。
「エリシス。貴女の答えはいつも同じですね」
赤いドレスの女はエリシスと呼ばれた。
「変わらないわ。あの時から何も」
「七百年間、同じですよ」
「そう? これからも変わらないわ」
赤いドレスの女は、帝国南部方面軍 総司令 兼 帝国不死兵団 司令 エリシス・クロフォード伯爵。
アンデッドの頂点である不死王であり、大帝が亡くなってからも、七百年以上、帝室の地下墳墓で大帝の棺の傍らにいた。
リリーと呼ばれた燕尾服の女は、リリー・マルレー。
エリシスの副官 兼 執事であり、理知的なプラチナブロンドの美しい女性だが、真祖吸血鬼であった。
リリーがエリシスに告げる。
「エリシス。陛下がお呼びです」
「……そう」
エリシスは上半身を起こすと、頬を付けていた石棺を愛おしそうに撫でながら、石棺に語り掛ける。
「……死んでいる貴方を愛しているけど、生きている貴方も愛しているの。……ごめんなさい。行くわね」
エリシスの言う『死んでいる貴方』とは、大帝と呼ばれるバレンシュテット帝国初代皇帝の事であり、『生きている貴方』とは、『大帝の生まれ変わり』と称されるラインハルトのことであった。
エリシスとリリーは、それぞれドレスと燕尾服から、帝国軍の高級将校用軍服に着替える。
エリシスがリリーに告げる。
「行くわよ。リリー」
「はい」
エリシスは、手をかざすと魔法を唱える。
「転移門」
エリシスとリリーは、現れた転移門を通って皇宮のラインハルトの元へ向かう。
--皇宮。
ラインハルトに呼び出されたジカイラは、ラインハルトと二人で皇宮の会議室にいた。
ジカイラが口を開く。
「……『トラキア解放戦線』を名乗るテロ組織を探し出して、叩き潰せば良いんだな?」
ラインハルトが答える。
「そうだ。それと、エリシスを付ける。彼女と一緒にやってくれ」
ジカイラは深刻な表情で呟く。
「エリシス伯爵、リリーの二人と一緒にか……」
ジカイラは、七百年以上生きている不老不死の不死者の美女二人に対して、本能的に『底知れぬ恐ろしさ』を感じていた。
(……マスタークラスの暗黒騎士になったが、オレがあの二人のうちの、どちらか一人と戦っても、全く勝てる気がしない)
ジカイラはそう考えていた。
ジカイラは、十七年前、港湾自治都市群の中核都市の一つであるエンクホイゼンで、彼女たちと一緒に戦ったことがあった。
ジカイラの脳裏に十七年前のエリシスの戦いぶりが蘇る。
エリシスは、チンピラ相手に腐敗の魔法を掛けた。
チンピラは、生きたまま全身が腐り落ちていき、泣き叫びながら絶命していく。
エリシスは、そのチンピラの様子を眺め、サディスティックな笑みを浮かべていた。
(※詳しくは『アスカニア大陸戦記 黒衣の剣士と氷の魔女』を参照下さい。)
もし、エリシスがラインハルトや帝国に敵対するトラキア解放戦線の者を捕まえたら、あらゆる苦痛を与え、生きたまま八つ裂きにするであろうことは明らかであった。
ラインハルトは、エリシスの性癖を知っていてトラキア解放戦線の討伐任務に差し向けた。
ジカイラは、ラインハルトがトラキア解放戦線に対して、どれほど激怒しているか察することができた。
程なく会議室に転移門が現れ、軍服姿のエリシスとリリーがやって来る。
「陛下。只今、参上致しました」
エリシスとリリーは、ラインハルトに対して畏まった挨拶をする。
ラインハルトは、二人に告げる。
「エリシス、リリー。ジカイラと一緒に『トラキア解放戦線』を名乗るテロ組織を探し出して、叩き潰せ。皆殺しにしろ」
「畏まりました」
エリシスは、ラインハルトに一礼するとジカイラの方を向いて口を開く。
「よろしくね。ジカイラ中佐」
ジカイラは、エリシスに恭しく頭を下げる。
「よろしくお願いします」
リリーは、ジカイラに微笑む。
「あの『黒衣の剣士』と再び御一緒できるとは光栄ですわ」
「こちらこそ」
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石階段が終わりに近づくと、部屋の入口から青白い光が石階段に差し込む。
燕尾服の女は石階段から部屋の中へと入っていく。
部屋の中は荘厳な白亜の霊廟であった。
魔法の青白い光を照らし出すシャンデリアが天井からいくつも吊るされている広大な空間に、燕尾服の女が歩く足音が響く。
白亜の霊廟の中央奥には白い大理石の棺が安置されており、一人の女が棺の隣に座って棺にもたれ掛かっている。
女は真紅のイブニングドレスを着ていた。
髪はウェーブの掛かった赤毛だが、肌は透き通るように白い妖艶な美女は、もたれ掛かった大理石の石棺の上に両手を置き頬を付け、目を閉じて佇んでいた。
燕尾服の女はドレスの女の方へ歩いていく。
ドレスの女が目を開け、口を開く。
「リリー。私の幸せなひとときを邪魔しないでくれる?」
リリーと呼ばれた燕尾服の女はドレスの女に答える。
「エリシス。貴女の答えはいつも同じですね」
赤いドレスの女はエリシスと呼ばれた。
「変わらないわ。あの時から何も」
「七百年間、同じですよ」
「そう? これからも変わらないわ」
赤いドレスの女は、帝国南部方面軍 総司令 兼 帝国不死兵団 司令 エリシス・クロフォード伯爵。
アンデッドの頂点である|不死王《リッチー》であり、大帝が亡くなってからも、七百年以上、帝室の地下墳墓で大帝の棺の傍らにいた。
リリーと呼ばれた燕尾服の女は、リリー・マルレー。
エリシスの副官 兼 執事であり、理知的なプラチナブロンドの美しい女性だが、|真祖《トゥルー・》|吸血鬼《ヴァンパイア》であった。
リリーがエリシスに告げる。
「エリシス。陛下がお呼びです」
「……そう」
エリシスは上半身を起こすと、頬を付けていた石棺を愛おしそうに撫でながら、石棺に語り掛ける。
「……|死《・》|ん《・》|で《・》|い《・》|る《・》|貴《・》|方《・》を愛しているけど、|生《・》|き《・》|て《・》|い《・》|る《・》|貴《・》|方《・》も愛しているの。……ごめんなさい。行くわね」
エリシスの言う『|死《・》|ん《・》|で《・》|い《・》|る《・》|貴《・》|方《・》』とは、大帝と呼ばれるバレンシュテット帝国初代皇帝の事であり、『|生《・》|き《・》|て《・》|い《・》|る《・》|貴《・》|方《・》』とは、『大帝の生まれ変わり』と称されるラインハルトのことであった。
エリシスとリリーは、それぞれドレスと燕尾服から、帝国軍の高級将校用軍服に着替える。
エリシスがリリーに告げる。
「行くわよ。リリー」
「はい」
エリシスは、手をかざすと魔法を唱える。
「|転移門《ゲート》」
エリシスとリリーは、現れた|転移門《ゲート》を通って皇宮のラインハルトの元へ向かう。
--皇宮。
ラインハルトに呼び出されたジカイラは、ラインハルトと二人で皇宮の会議室にいた。
ジカイラが口を開く。
「……『トラキア解放戦線』を名乗るテロ組織を探し出して、叩き潰せば良いんだな?」
ラインハルトが答える。
「そうだ。それと、エリシスを付ける。彼女と一緒にやってくれ」
ジカイラは深刻な表情で呟く。
「エリシス伯爵、リリーの二人と一緒にか……」
ジカイラは、七百年以上生きている不老不死の|不死者《アンデッド》の美女二人に対して、本能的に『底知れぬ恐ろしさ』を感じていた。
(……マスタークラスの暗黒騎士になったが、オレがあの二人のうちの、どちらか一人と戦っても、全く勝てる気がしない)
ジカイラはそう考えていた。
ジカイラは、十七年前、港湾自治都市群の中核都市の一つであるエンクホイゼンで、彼女たちと一緒に戦ったことがあった。
ジカイラの脳裏に十七年前のエリシスの戦いぶりが蘇る。
エリシスは、チンピラ相手に腐敗の魔法を掛けた。
チンピラは、生きたまま全身が腐り落ちていき、泣き叫びながら絶命していく。
エリシスは、そのチンピラの様子を眺め、サディスティックな笑みを浮かべていた。
(※詳しくは『アスカニア大陸戦記 黒衣の剣士と氷の魔女』を参照下さい。)
もし、エリシスがラインハルトや帝国に敵対するトラキア解放戦線の者を捕まえたら、あらゆる苦痛を与え、生きたまま八つ裂きにするであろうことは明らかであった。
ラインハルトは、エリシスの性癖を知っていてトラキア解放戦線の討伐任務に差し向けた。
ジカイラは、ラインハルトがトラキア解放戦線に対して、どれほど激怒しているか察することができた。
程なく会議室に|転移門《ゲート》が現れ、軍服姿のエリシスとリリーがやって来る。
「陛下。只今、参上致しました」
エリシスとリリーは、ラインハルトに対して畏まった挨拶をする。
ラインハルトは、二人に告げる。
「エリシス、リリー。ジカイラと一緒に『トラキア解放戦線』を名乗るテロ組織を探し出して、叩き潰せ。皆殺しにしろ」
「畏まりました」
エリシスは、ラインハルトに一礼するとジカイラの方を向いて口を開く。
「よろしくね。ジカイラ中佐」
ジカイラは、エリシスに恭しく頭を下げる。
「よろしくお願いします」
リリーは、ジカイラに微笑む。
「あの『黒衣の剣士』と再び御一緒できるとは光栄ですわ」
「こちらこそ」