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奪われた幼馴染

ー/ー



 ゴールデンウイークが明けた朝、沙希は真斗を迎えに来なかった。
 具合いが悪くて今日は休むのかもと思い、メッセージを送ったが既読にならない。
 真斗は沙希の家のインターホンを鳴らす。
「真斗くん? あれ、沙希ならとっくに出て行ったけど?」
 沙希の母が言う。朝学校で用事でもあったのだろうか?
 保育園の時から高校まで二人で登校するのが当たり前の日課になっていた。
 一人で登校する真斗の胸が微かに騒めいていた。
 ガヤガヤとしている教室に入ると、クラスの皆が急に沈黙し、皆の視線が真斗に集中した。
「おはよう」
 声をかける真斗に誰も返事をしない。自分の席に向かうと、皆はそれぞれの相手との話に戻っていった。
(俺、何かしたのかな?)
 クラスの皆の態度が不審だ。真斗はゴールデンウイークのあいだ塾の講習に通っていただけで、何も思い当たる節はない。
 その時、教室に智也が入ってきた。皆と明るく挨拶を交わしている。
 少し遅れて沙希が入ってきた。
 いつもの沙希とは様子が違う。伏し目がちで顔がほんのり紅い。
 ちらちらとクラスの皆の視線が真斗と沙希に向けられる。一体どうしたって言うのだろうか?

 休み時間にトイレに行った帰りの廊下で、中学時代の親友が声をかけてきた。
「真斗、沙希ちゃんが佐野智也と付き合ってるって本当か?」
「は?」
 真斗は驚く。
「朝、二人で登校して来たらしいぜ……」
 クラスの皆の不審な態度の理由がわかった。
 真斗はどうして沙希が智也と付き合うことになったのか、頭の中で思考をぐるぐる回した。
 沙希は智也に告白された、と報告してきた。
 だが真斗は沙希の意思で決めろ、と突き放してしまう。
 その後、沙希からは何の報告もなく、何度か部屋で勉強を教えたりもした。
 沙希から智也の話題が出ることはなかったので、真斗は多分告白を断ったのではないか、と思う。
 沙希が何も言ってこないのに、こちらから尋ねるのは不自然だと思い、真斗はあえて智也の話題に触れなかった。
 そしてゴールデンウイークに入ってからは塾の講習に集中して、沙希と会う事はなかった。
 この連休の間に、何らかの進展が二人の間であったのだろうか?

 家に帰って真斗は部屋のベッドに身体を投げ出した。
 幼い頃から育んできた二人の間の親密な関係は、たまたま隣に住み同い年だったからで、特に真斗に魅力があったというわけではなかった。
 沙希との親密さは恋愛の親密さとは別物だったのだ。恋愛するのなら、自分のようなパッとしない地味な男より、明るくイケメンの智也を選ぶのは当然だとも言えた。
 智也が沙希と付き合っているのか、と訊いてきた時、嘘でも付き合っていると牽制しておくべきだった、と真斗は後悔する。
 そもそも勇気を出して沙希に告白しなかったのが間違いだった。照れと幼馴染としての関係を壊してしまう怖れから、沙希に恋愛感情、いや劣情を抱きながら現在の親密な関係に甘えていた。
 智也は正々堂々と告白して沙希を射止めたのだ。真斗には智也を責める筋合いはない。
 気が付くと部屋は真っ暗になっていた。向かいの沙希の部屋から灯りが漏れている。
 確か今夜は沙希の母が夜勤の日だったはずだ。いつもなら真斗の家で夕食を共にするのだが、沙希からは何の申し出もなかった。
 身体を起こし、沙希の部屋の窓を見た。カーテンが微かに開いている。
 その隙間を人影がよぎる。残像が肌色をしていた。
(裸?)
 真斗は身を乗り出して隣の窓を見る。
 今度は上下に揺れる乳房が現れた。
(えっ、沙希?)
 カーテンの隙間を揺れる乳房がよぎった。
 沙希の部屋の窓際はベッドだった。真斗はそっと窓を開けた。
(ぁっ……ぁっ……ぁぁっ……)
 微かに声がする。
 揺れる乳房が下から伸びて来た手に掴まれた。
 これって、沙希がセックスしているのだろうか? 誰と?
 その相手は智也に違いなかった。
 付き合い始めたばかりなのに、沙希は既に肉体(からだ)を許しているのだ。
 真斗の眼の前で一緒に勉強しながら、たまに誘惑するように肉体を揺らしていた沙希。
 手を伸ばせば触れられたかもしれない沙希の肌が、別の男に貪られている。
 たった三メートル先で、沙希が智也と裸でつながっていた。 
 騎乗位で沙希が智也に下から突き上げられているのだろう。
 人影が消え、しばらくすると、ぴん、と伸びた沙希の足が見えた。
 そこに浅黒い胴体が現れる。智也だろうか?
 前後に動く胴体の動きに合わせて、白い足が揺れている。正常位で突かれているのだろうか?
「あんっ……ああんっ!」
 ひときわ大きな沙希の嬌声が耳に届いた。
 真斗のペニスが一瞬にして硬直した。今までオナニーをしてきたが沙希をネタにすることを必死で避けていた。
 だが、たった三メートル先で、その沙希が裸でハメられている。
 カーテンの隙間から沙希の姿が消えた。
 しばらくすると円く白い尻が現れた。浅黒い腕も見える。
「あんっ、あんっ、あんっ、ああんっ!」
 リズミカルな沙希の喘ぎに合わせて尻の肉が波打っている。
 微かに肉の当たるぱんぱんという音も聞こえてくる。
 沙希が後背位で智也に突き上げられているのだ。
 硬直して猛り狂った剛直に、真斗は手を伸ばした。
 カーテンの隙間から部分的にしか見えない裸の沙希。真斗の想像力は二人のセックスを脳内で鮮明に再現していた。
「ああっ、いいっ、いいのっ!」
 真斗は猛然とペニスを扱いた。ミルクのように白い沙希の尻に赤黒い陰茎が抜き差しされている。
「あっ、やんっ! イっ、イクっ!」
 ひときわ高い沙希の嬌声で揺れていた尻の動きが止まる。
 智也が沙希に射精したのだろう。
 同時に、真斗は窓に向かって濃い精液を放った。


 窓の向こう、たった三メートル先で幼馴染の沙希が転校生の智也とセックスしていた。
 幼い頃からお互いの好意を育んできた真斗と沙希。
 沙希が女の体付きになってきて、真斗も年相応の性欲の対象として沙希を見るようになった。
 だが、互いの親密な関係を、沙希に欲情を吐露すると壊してしまうのでは、という怖れが真斗にはあった。
 中学、高校の同級生たちは真斗と沙希の間に漂う親密な空気に割って入ることはなかった。
 だが、転校生の智也はそんな空気を読まずに沙希に告白した。
 真斗は、長い年月で育んできた沙希との関係性が、つい最近やって来た転校生が告白したくらいでは壊れることはないだろう、と希望的観測をしていた。
 だが、それは甘い考えだった。
 真斗は沙希との関係に甘えて何のアプローチもしなかったが、智也はきちんと告白した上で沙希のハートを射止めたのだ。
 もし、真斗が沙希に告白していたら、どうだったのだろう?
 沙希が真斗を受け入れてくれたかどうかは、今となっては分からない。
 沙希が向けてくれた好意は、幼馴染としてのもので、恋人としては考えられない、と言われたかもしれない。
 全ては後の祭りで、自分がしなかったことを後悔しても、何も変えることはできない。

 暗い部屋で何度射精しても硬度を保っているペニスを勃てながら、真斗は涙を流し続けた。
 階段を上がる足音がして、ドアがノックされた。
「真斗、いるのか?」
 父の義之が帰ってきたのだ。
 沙希のセックスを見てしまったショックで呆然としてしまい、夕食の準備を忘れていた。
 曝け出している股間をしまって、真斗は声を出した。
「父さん、ごめん。体調が悪くて寝ていた」
「大丈夫か?」
「うん」

 義之が簡単な食事を作ってくれた。
 今ではほとんど真斗が食事の準備をしているが、真斗が幼い頃は義之が食事を作っていた。
 義之は個人で不動産投資をしていて、既存の物件の管理をしたり、新しい物件を探したりしている。
 忙しい義之に迷惑をかけてしまった。だが真斗は全く食欲がなかった。
 義之はそんな真斗に気を遣ってくれたのか、何も言わなかった。
 

 結局ゴールデンウイーク明けの週末まで、真斗は学校を休んだ。
 クラスの同級生は長年沙希と親密な関係を見せつけてきた真斗が、転校生の智也にあっさり沙希を奪われたことをどう思っているだろう?
 軽蔑か、嘲笑か、失望か?
 そんなことをベッドに横たわって真斗は漠然と考えていた。
 それよりも、ちらりと沙希の裸を覗いたことで、生々しく肉体を絡ませている智也と沙希のセックスの妄想が脳裏にこびりついていた。
 精液が枯れるまで、真斗は連続してオナニーを続けた。
 体調不良で学校を休んだ時、沙希は必ず見舞いに来てくれたのだが、今回休んでいる真斗の部屋に沙希は来なかった。


 真斗が吹っ切れたように普段と同じ態度で学校に通い始めると、クラスの皆の関心も自然と離れていった。
 沙希とはただのクラスメイトになった。なるべく近づかないように意識して距離を取った。
 それでも真斗は制服の胸を押し上げている沙希の巨乳を見ると、智也とのセックスで揺れていた乳房を思い起こしてしまう。
 毎晩、気が狂いそうになるほど、沙希をネタにオナニーをしていた。
 昼間に正気を保つためには、そうするしかなかった。
 沙希を奪われた衝撃が、時間とともに徐々に薄れていってくれることを真斗は願う。
 沙希を奪った智也とは挨拶を交わすくらいで、特に話をしていない。
 悔しいが智也を恨んだりするのは違う、と真斗は思っている。
 
 夕食後、部屋で勉強しようとしていると、スマホが光った。
 智也からのメッセージだった。
 それを開いた真斗は驚きで眼を剥いた。
 裸の女性がハメられている画像だった。
 仰向けで横に流れている巨乳。濃いめの陰毛に覆われた股間に陰茎が差し込まれている。
 腕で眼を隠しているが、横を向いた口元にあるホクロで、画像の女性が沙希であることがわかる。
 真斗のペニスが瞬間的に硬直した。
 あの日、カーテンの隙間からチラリと見えた沙希の裸身で妄想を膨らませていた真斗に、リアルにハメられている沙希の画像が刺さる。
 股間にハマっているペニスを自分のものに置き換え、真斗は陰茎を剥き出しにして擦りあげた。
 沙希の生の乳房は、脳内で作ったイメージ以上の大きさだった。
 画像からは、ペニスを差し込まれて喘ぐ沙希の声が聞こえて来そうだった。
 熱く濃い精液が迸る。
 真斗の眼は画像に釘付けになり、硬度を保った肉棒を何度も何度も扱いた。
 
 連続六回、真斗は射精して、ようやく扱く腕を止めた。
 智也はどんな意図でこのようなプライベートな画像を送ってきたのだろう?
 沙希の許可は当然得ていないはずだ。
 真斗から沙希を奪っただけでは物足りず、沙希に対する真斗の想いを完膚なきまでぶち壊そうとしているのだろうか?
 智也に対する静かな怒りが湧いてくると同時に、真斗は沙希のハメ撮り画像から眼が離せなくなっていた。
 

 翌日の教室で、真斗は沙希の姿を盗み見してしまう。
 胸を押し上げている巨乳を寝不足の眼で辿った。
 ブラジャーから解放された乳房と淡い桜色の乳首をどうしても思い起こしてしまう。
 智也はその巨乳を思いのまま揉み込み、唇で吸って舐めまわしているのだろう。
 そして、そのお零れの画像でサルのようにオナニーをしまくっている自分が惨めだった。
 
 その日の夕食後、勉強する気になれず、ベッドに倒れ込んだ真斗は沙希のハメ撮り画像を再び開いてしまう。
 その時、再び智也からメッセージが送られてきた。
 衝撃的な画像が現れた。
 今度はバックからのハメ撮り画像だった。
 画面にミルクのように白く円い尻が拡がっている。そこに赤黒い陰茎が差し込まれていた。 
 これも沙希に違いない、と真斗は思う。
 肛門まで晒して後ろから智也にハメられている沙希。
 真斗のペニスが猛り狂ったように反り上がり、手で扱く前に射精していた。

 真斗は思う。
 智也はきちんと告白した上で沙希と恋人になった。
 愛し合っているのなら、肉体を求め合うのは自然なことだ。
 だが、それは二人だけの秘密の空間であり時間であるはずだ。
 それを他人である真斗に晒していいものだろうか?
 沙希がそれに同意しているとは当然思えない。
 勝手に智也がやっていることだ。
 沙希は自分がハメられている画像など、絶対他人に見られたくないはずだ。
 

 次の日の放課後、真斗は智也を特別棟の廊下に呼び出した。
 過去に智也が真斗に沙希との関係を問うた場所だ。
「何? 真斗くん……」
 智也が爽やかな笑顔で伏し目がちな真斗を見る。
 勝ち負けではないと思いたいが、沙希をめぐって敗れたという負い目が真斗の態度を卑屈にさせてしまう。
「送って来た画像のことだけど……」
 意を決して真斗が顔を上げて智也を睨む。
「沙希はあんな画像見られたくないと思う……」
 智也が、ふっ、と息を漏らして口角を曲げて笑う。
「じゃあ、見ないで消せば?」
 智也が真斗を射抜くような視線で言った。
「まさか、『使って』ないよね?」
 ひっ、と息を呑み込んで真斗が呼吸を止める。
「使ったんだ……」
 真斗の反応を見て勝手に結論づける智也に、反論はできなかった。
「嫌なら見なければいいし、俺のことブロックすればいい」
 智也は背を向けて去って行った。

 深夜、真斗はスマホに保存してある沙希のハメ撮り画像を開くことを躊躇った。
 智也を責める資格など自分にはない。画像を見た直後に真斗はそれを「使って」しまったからだ。
(画像を消さなければ……) 
 削除するため沙希の画像にチェックを入れようと、スマホの画面に軽く触れたつもりが、画面いっぱいに開いてしまった。
 艶めかしい乳房とペニスが刺さっている股間を見て、真斗の陰茎がまたしても硬直してしまう。
(俺って、最低だ……)
 沙希に対する思いやりがあるのなら、こんな画像を持ち続けるべきではない。
 正面とバックからのハメ撮り画像を真斗は思い切って消去した。
 だが硬く反り上がった陰茎に流れ込んだ血流は治まりそうにない。
 眼を閉じると、先ほど消した画像が脳内で鮮明に再生される。
 沙希の裸身が真斗の眼に焼き付いている。
(ダメだ! ここで抜いちゃダメだ!)
 股間に伸びそうになる手を真斗は意志の力で必死に抑える。
 
 その時スマホが鳴ってメッセージが届く。
 智也からだった。
 ブロックをする前に新たな画像が送られてしまった。 
(見ちゃダメだ……)
 スマホの前で真斗は人差し指を震わせていた。
(すぐ消すから……)
 真斗は誘惑に抗えず、タップしてしまった。
『あんっ、あんっ、ああんっ!』
 いきなり沙希の喘ぎ声が耳を刺す。
 今度はハメ撮り動画だった。
 顔を両腕で隠している沙希が上下に肉体を揺らしている。
 結合部から漏れる、ぬちゃっ、ぬちゃっ、と愛液が捏ねられる淫らな音に合わせて巨乳がぶるんぶるんと艶めかしく揺れている。
 『ああっ……いいっ、いいのおっ!』
 濃いめの陰毛に覆われた股間を智也の赤黒い陰茎がずぽずぽと出入りしている。
 真斗の自制心は一気に崩れ去り、反り上がった肉棒を猛然と扱いていた。
 どぷっ、どぷっ、と濃厚な精液が連続して放射される。

 動物的な唸り声をあげて、真斗は何度も何度も動画を再生して淫欲の汁を吐き出し続けた。
 もう何回射精したのかわからなくなった頃、ようやく精液が枯れた。
 
 


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 ゴールデンウイークが明けた朝、沙希は真斗を迎えに来なかった。
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 沙希の母が言う。朝学校で用事でもあったのだろうか?
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 一人で登校する真斗の胸が微かに騒めいていた。
 ガヤガヤとしている教室に入ると、クラスの皆が急に沈黙し、皆の視線が真斗に集中した。
「おはよう」
 声をかける真斗に誰も返事をしない。自分の席に向かうと、皆はそれぞれの相手との話に戻っていった。
(俺、何かしたのかな?)
 クラスの皆の態度が不審だ。真斗はゴールデンウイークのあいだ塾の講習に通っていただけで、何も思い当たる節はない。
 その時、教室に智也が入ってきた。皆と明るく挨拶を交わしている。
 少し遅れて沙希が入ってきた。
 いつもの沙希とは様子が違う。伏し目がちで顔がほんのり紅い。
 ちらちらとクラスの皆の視線が真斗と沙希に向けられる。一体どうしたって言うのだろうか?
 休み時間にトイレに行った帰りの廊下で、中学時代の親友が声をかけてきた。
「真斗、沙希ちゃんが佐野智也と付き合ってるって本当か?」
「は?」
 真斗は驚く。
「朝、二人で登校して来たらしいぜ……」
 クラスの皆の不審な態度の理由がわかった。
 真斗はどうして沙希が智也と付き合うことになったのか、頭の中で思考をぐるぐる回した。
 沙希は智也に告白された、と報告してきた。
 だが真斗は沙希の意思で決めろ、と突き放してしまう。
 その後、沙希からは何の報告もなく、何度か部屋で勉強を教えたりもした。
 沙希から智也の話題が出ることはなかったので、真斗は多分告白を断ったのではないか、と思う。
 沙希が何も言ってこないのに、こちらから尋ねるのは不自然だと思い、真斗はあえて智也の話題に触れなかった。
 そしてゴールデンウイークに入ってからは塾の講習に集中して、沙希と会う事はなかった。
 この連休の間に、何らかの進展が二人の間であったのだろうか?
 家に帰って真斗は部屋のベッドに身体を投げ出した。
 幼い頃から育んできた二人の間の親密な関係は、たまたま隣に住み同い年だったからで、特に真斗に魅力があったというわけではなかった。
 沙希との親密さは恋愛の親密さとは別物だったのだ。恋愛するのなら、自分のようなパッとしない地味な男より、明るくイケメンの智也を選ぶのは当然だとも言えた。
 智也が沙希と付き合っているのか、と訊いてきた時、嘘でも付き合っていると牽制しておくべきだった、と真斗は後悔する。
 そもそも勇気を出して沙希に告白しなかったのが間違いだった。照れと幼馴染としての関係を壊してしまう怖れから、沙希に恋愛感情、いや劣情を抱きながら現在の親密な関係に甘えていた。
 智也は正々堂々と告白して沙希を射止めたのだ。真斗には智也を責める筋合いはない。
 気が付くと部屋は真っ暗になっていた。向かいの沙希の部屋から灯りが漏れている。
 確か今夜は沙希の母が夜勤の日だったはずだ。いつもなら真斗の家で夕食を共にするのだが、沙希からは何の申し出もなかった。
 身体を起こし、沙希の部屋の窓を見た。カーテンが微かに開いている。
 その隙間を人影がよぎる。残像が肌色をしていた。
(裸?)
 真斗は身を乗り出して隣の窓を見る。
 今度は上下に揺れる乳房が現れた。
(えっ、沙希?)
 カーテンの隙間を揺れる乳房がよぎった。
 沙希の部屋の窓際はベッドだった。真斗はそっと窓を開けた。
(ぁっ……ぁっ……ぁぁっ……)
 微かに声がする。
 揺れる乳房が下から伸びて来た手に掴まれた。
 これって、沙希がセックスしているのだろうか? 誰と?
 その相手は智也に違いなかった。
 付き合い始めたばかりなのに、沙希は既に|肉体《からだ》を許しているのだ。
 真斗の眼の前で一緒に勉強しながら、たまに誘惑するように肉体を揺らしていた沙希。
 手を伸ばせば触れられたかもしれない沙希の肌が、別の男に貪られている。
 たった三メートル先で、沙希が智也と裸でつながっていた。 
 騎乗位で沙希が智也に下から突き上げられているのだろう。
 人影が消え、しばらくすると、ぴん、と伸びた沙希の足が見えた。
 そこに浅黒い胴体が現れる。智也だろうか?
 前後に動く胴体の動きに合わせて、白い足が揺れている。正常位で突かれているのだろうか?
「あんっ……ああんっ!」
 ひときわ大きな沙希の嬌声が耳に届いた。
 真斗のペニスが一瞬にして硬直した。今までオナニーをしてきたが沙希をネタにすることを必死で避けていた。
 だが、たった三メートル先で、その沙希が裸でハメられている。
 カーテンの隙間から沙希の姿が消えた。
 しばらくすると円く白い尻が現れた。浅黒い腕も見える。
「あんっ、あんっ、あんっ、ああんっ!」
 リズミカルな沙希の喘ぎに合わせて尻の肉が波打っている。
 微かに肉の当たるぱんぱんという音も聞こえてくる。
 沙希が後背位で智也に突き上げられているのだ。
 硬直して猛り狂った剛直に、真斗は手を伸ばした。
 カーテンの隙間から部分的にしか見えない裸の沙希。真斗の想像力は二人のセックスを脳内で鮮明に再現していた。
「ああっ、いいっ、いいのっ!」
 真斗は猛然とペニスを扱いた。ミルクのように白い沙希の尻に赤黒い陰茎が抜き差しされている。
「あっ、やんっ! イっ、イクっ!」
 ひときわ高い沙希の嬌声で揺れていた尻の動きが止まる。
 智也が沙希に射精したのだろう。
 同時に、真斗は窓に向かって濃い精液を放った。
 窓の向こう、たった三メートル先で幼馴染の沙希が転校生の智也とセックスしていた。
 幼い頃からお互いの好意を育んできた真斗と沙希。
 沙希が女の体付きになってきて、真斗も年相応の性欲の対象として沙希を見るようになった。
 だが、互いの親密な関係を、沙希に欲情を吐露すると壊してしまうのでは、という怖れが真斗にはあった。
 中学、高校の同級生たちは真斗と沙希の間に漂う親密な空気に割って入ることはなかった。
 だが、転校生の智也はそんな空気を読まずに沙希に告白した。
 真斗は、長い年月で育んできた沙希との関係性が、つい最近やって来た転校生が告白したくらいでは壊れることはないだろう、と希望的観測をしていた。
 だが、それは甘い考えだった。
 真斗は沙希との関係に甘えて何のアプローチもしなかったが、智也はきちんと告白した上で沙希のハートを射止めたのだ。
 もし、真斗が沙希に告白していたら、どうだったのだろう?
 沙希が真斗を受け入れてくれたかどうかは、今となっては分からない。
 沙希が向けてくれた好意は、幼馴染としてのもので、恋人としては考えられない、と言われたかもしれない。
 全ては後の祭りで、自分がしなかったことを後悔しても、何も変えることはできない。
 暗い部屋で何度射精しても硬度を保っているペニスを勃てながら、真斗は涙を流し続けた。
 階段を上がる足音がして、ドアがノックされた。
「真斗、いるのか?」
 父の義之が帰ってきたのだ。
 沙希のセックスを見てしまったショックで呆然としてしまい、夕食の準備を忘れていた。
 曝け出している股間をしまって、真斗は声を出した。
「父さん、ごめん。体調が悪くて寝ていた」
「大丈夫か?」
「うん」
 義之が簡単な食事を作ってくれた。
 今ではほとんど真斗が食事の準備をしているが、真斗が幼い頃は義之が食事を作っていた。
 義之は個人で不動産投資をしていて、既存の物件の管理をしたり、新しい物件を探したりしている。
 忙しい義之に迷惑をかけてしまった。だが真斗は全く食欲がなかった。
 義之はそんな真斗に気を遣ってくれたのか、何も言わなかった。
 結局ゴールデンウイーク明けの週末まで、真斗は学校を休んだ。
 クラスの同級生は長年沙希と親密な関係を見せつけてきた真斗が、転校生の智也にあっさり沙希を奪われたことをどう思っているだろう?
 軽蔑か、嘲笑か、失望か?
 そんなことをベッドに横たわって真斗は漠然と考えていた。
 それよりも、ちらりと沙希の裸を覗いたことで、生々しく肉体を絡ませている智也と沙希のセックスの妄想が脳裏にこびりついていた。
 精液が枯れるまで、真斗は連続してオナニーを続けた。
 体調不良で学校を休んだ時、沙希は必ず見舞いに来てくれたのだが、今回休んでいる真斗の部屋に沙希は来なかった。
 真斗が吹っ切れたように普段と同じ態度で学校に通い始めると、クラスの皆の関心も自然と離れていった。
 沙希とはただのクラスメイトになった。なるべく近づかないように意識して距離を取った。
 それでも真斗は制服の胸を押し上げている沙希の巨乳を見ると、智也とのセックスで揺れていた乳房を思い起こしてしまう。
 毎晩、気が狂いそうになるほど、沙希をネタにオナニーをしていた。
 昼間に正気を保つためには、そうするしかなかった。
 沙希を奪われた衝撃が、時間とともに徐々に薄れていってくれることを真斗は願う。
 沙希を奪った智也とは挨拶を交わすくらいで、特に話をしていない。
 悔しいが智也を恨んだりするのは違う、と真斗は思っている。
 夕食後、部屋で勉強しようとしていると、スマホが光った。
 智也からのメッセージだった。
 それを開いた真斗は驚きで眼を剥いた。
 裸の女性がハメられている画像だった。
 仰向けで横に流れている巨乳。濃いめの陰毛に覆われた股間に陰茎が差し込まれている。
 腕で眼を隠しているが、横を向いた口元にあるホクロで、画像の女性が沙希であることがわかる。
 真斗のペニスが瞬間的に硬直した。
 あの日、カーテンの隙間からチラリと見えた沙希の裸身で妄想を膨らませていた真斗に、リアルにハメられている沙希の画像が刺さる。
 股間にハマっているペニスを自分のものに置き換え、真斗は陰茎を剥き出しにして擦りあげた。
 沙希の生の乳房は、脳内で作ったイメージ以上の大きさだった。
 画像からは、ペニスを差し込まれて喘ぐ沙希の声が聞こえて来そうだった。
 熱く濃い精液が迸る。
 真斗の眼は画像に釘付けになり、硬度を保った肉棒を何度も何度も扱いた。
 連続六回、真斗は射精して、ようやく扱く腕を止めた。
 智也はどんな意図でこのようなプライベートな画像を送ってきたのだろう?
 沙希の許可は当然得ていないはずだ。
 真斗から沙希を奪っただけでは物足りず、沙希に対する真斗の想いを完膚なきまでぶち壊そうとしているのだろうか?
 智也に対する静かな怒りが湧いてくると同時に、真斗は沙希のハメ撮り画像から眼が離せなくなっていた。
 翌日の教室で、真斗は沙希の姿を盗み見してしまう。
 胸を押し上げている巨乳を寝不足の眼で辿った。
 ブラジャーから解放された乳房と淡い桜色の乳首をどうしても思い起こしてしまう。
 智也はその巨乳を思いのまま揉み込み、唇で吸って舐めまわしているのだろう。
 そして、そのお零れの画像でサルのようにオナニーをしまくっている自分が惨めだった。
 その日の夕食後、勉強する気になれず、ベッドに倒れ込んだ真斗は沙希のハメ撮り画像を再び開いてしまう。
 その時、再び智也からメッセージが送られてきた。
 衝撃的な画像が現れた。
 今度はバックからのハメ撮り画像だった。
 画面にミルクのように白く円い尻が拡がっている。そこに赤黒い陰茎が差し込まれていた。 
 これも沙希に違いない、と真斗は思う。
 肛門まで晒して後ろから智也にハメられている沙希。
 真斗のペニスが猛り狂ったように反り上がり、手で扱く前に射精していた。
 真斗は思う。
 智也はきちんと告白した上で沙希と恋人になった。
 愛し合っているのなら、肉体を求め合うのは自然なことだ。
 だが、それは二人だけの秘密の空間であり時間であるはずだ。
 それを他人である真斗に晒していいものだろうか?
 沙希がそれに同意しているとは当然思えない。
 勝手に智也がやっていることだ。
 沙希は自分がハメられている画像など、絶対他人に見られたくないはずだ。
 次の日の放課後、真斗は智也を特別棟の廊下に呼び出した。
 過去に智也が真斗に沙希との関係を問うた場所だ。
「何? 真斗くん……」
 智也が爽やかな笑顔で伏し目がちな真斗を見る。
 勝ち負けではないと思いたいが、沙希をめぐって敗れたという負い目が真斗の態度を卑屈にさせてしまう。
「送って来た画像のことだけど……」
 意を決して真斗が顔を上げて智也を睨む。
「沙希はあんな画像見られたくないと思う……」
 智也が、ふっ、と息を漏らして口角を曲げて笑う。
「じゃあ、見ないで消せば?」
 智也が真斗を射抜くような視線で言った。
「まさか、『使って』ないよね?」
 ひっ、と息を呑み込んで真斗が呼吸を止める。
「使ったんだ……」
 真斗の反応を見て勝手に結論づける智也に、反論はできなかった。
「嫌なら見なければいいし、俺のことブロックすればいい」
 智也は背を向けて去って行った。
 深夜、真斗はスマホに保存してある沙希のハメ撮り画像を開くことを躊躇った。
 智也を責める資格など自分にはない。画像を見た直後に真斗はそれを「使って」しまったからだ。
(画像を消さなければ……) 
 削除するため沙希の画像にチェックを入れようと、スマホの画面に軽く触れたつもりが、画面いっぱいに開いてしまった。
 艶めかしい乳房とペニスが刺さっている股間を見て、真斗の陰茎がまたしても硬直してしまう。
(俺って、最低だ……)
 沙希に対する思いやりがあるのなら、こんな画像を持ち続けるべきではない。
 正面とバックからのハメ撮り画像を真斗は思い切って消去した。
 だが硬く反り上がった陰茎に流れ込んだ血流は治まりそうにない。
 眼を閉じると、先ほど消した画像が脳内で鮮明に再生される。
 沙希の裸身が真斗の眼に焼き付いている。
(ダメだ! ここで抜いちゃダメだ!)
 股間に伸びそうになる手を真斗は意志の力で必死に抑える。
 その時スマホが鳴ってメッセージが届く。
 智也からだった。
 ブロックをする前に新たな画像が送られてしまった。 
(見ちゃダメだ……)
 スマホの前で真斗は人差し指を震わせていた。
(すぐ消すから……)
 真斗は誘惑に抗えず、タップしてしまった。
『あんっ、あんっ、ああんっ!』
 いきなり沙希の喘ぎ声が耳を刺す。
 今度はハメ撮り動画だった。
 顔を両腕で隠している沙希が上下に肉体を揺らしている。
 結合部から漏れる、ぬちゃっ、ぬちゃっ、と愛液が捏ねられる淫らな音に合わせて巨乳がぶるんぶるんと艶めかしく揺れている。
 『ああっ……いいっ、いいのおっ!』
 濃いめの陰毛に覆われた股間を智也の赤黒い陰茎がずぽずぽと出入りしている。
 真斗の自制心は一気に崩れ去り、反り上がった肉棒を猛然と扱いていた。
 どぷっ、どぷっ、と濃厚な精液が連続して放射される。
 動物的な唸り声をあげて、真斗は何度も何度も動画を再生して淫欲の汁を吐き出し続けた。
 もう何回射精したのかわからなくなった頃、ようやく精液が枯れた。