第百六十六話 クラスチェンジ
ー/ー ジカイラに呼び出され、勅命の説明を受けたアレクは、寮に戻る。
寮では、アレクの帰りを待たずに小隊メンバー達が夕食を取っていた。
アルが返ってきたアレクに声を掛ける。
「帰って来たか。お疲れ~」
アレクはアルに答えると、食堂の自分の席に着く。
「ただいま」
ルイーゼは、アレクが帰ってきたことを知り、アレクの夕食を用意する。
「お帰りなさい。お腹空いたでしょ? すぐ用意するね」
「うん」
アルはアレクに尋ねる。
「ジカイラ中佐は、なんて言ってたんだ?」
アレクはルイーゼが用意した夕食を食べながら、ジカイラとの話の内容を小隊メンバー達に説明した。
再び飛行空母ユニコーン・ゼロに乗れると知ったエルザは大喜びする。
「いいね! また、飛行空母で遠征だね!」
アルはアレクに聞き返す。
「ゴズフレズ王国に行くのは、一週間後だったな?」
「そうだけど」
アルは、アレクの答えを聞いて提案する。
「実は、オレ、中堅職に転職しようと考えているんだ」
アレクとアルの話にトゥルムも関心を示す。
「ほう? 中堅職に転職か」
ドミトリーも関心を示す。
「中堅職に転職とは。ゴズフレズ王国に行く前に、できるなら中堅職に転職して、小隊の戦力を増強しておくのが望ましいのではないか?」
アレクは、アルに同意する。
「オレもアルや皆が中堅職へ転職するのは、良いと思う」
アルはアレクを冷やかす。
「アレク。お前、ひょっとしたら上級騎士に転職できるんじゃないか?」
アルの言葉にアレクは驚く。
「オレが……、上級騎士に!?」
アレクは士官学校に入学してから、ずっと上級騎士になる事を目指して、懸命に努力していた。
父である皇帝ラインハルトや、兄である皇太子ジークフリートが上級騎士になったように。
アルは、驚いているアレクに告げる。
「アレク。明日、皆で士官学校に行って、学校の登録水晶で転職できるか、試してみようぜ?」
「そうだな……」
仲間達と夕食を囲む食卓で話し、ゴズフレズ王国に行く前に、小隊の皆で転職しようという事でまとまった。
--翌日。
アレクたちは士官学校へ行き、登録水晶のある窓口へ向かう。
アルは口を開く。
「登録水晶を見るのも入学式以来だな。……早速、試してみるか!」
アルは、軍隊手帳の職業のページを開いて窓口の隣にある登録水晶の下に置き、水晶に手をかざす。
水晶に職業の名称の文字が浮かび上がる。
「オレが転職出来るのは、高地戦士か、剣闘士か」
窓口の係員が説明する。
「高地戦士は両手持ちの大剣使い、剣闘士は武器はほぼ全て扱えますね」
アルは口を開く。
「オレの父さんも、戦士から剣闘士になった! 剣闘士で!」
登録水晶は輝き出し、水晶からの光線がアルの剣闘士への転職を手帳に記入した。
アルは、ガッツポーズをしながら大喜びでアレクたちに告げる。
「うぉおおお! やったぁ! 中堅職だ! 剣闘士になったぜ!」
ナタリーや小隊の仲間達はアルを祝福する。
「おめでとう! アル!」
「おめでとう!」
「やったな!」
トゥルムもアルと同じ中堅職の剣闘士に転職。
ナタリーは、中堅職の魔導師に転職。
ナディアは、中堅職の召喚士に転職。
エルザは、中堅職の高地戦士に転職。
ドミトリーは、中堅職の武僧に転職。
ルイーゼは、緊張した面持ちで登録水晶に手をかざす。
水晶に選択できる職業の名称の文字が浮かび上がり、ルイーゼが選択して読み上げる。
「忍者で」
登録水晶からの光線がルイーゼの忍者への転職を手帳に記入した。
ルイーゼが読み上げた職業を聞いたエルザが驚く。
「え!? ルイーゼが忍者に?」
忍者と聞いてナディアも驚く。
「忍者!? それって、上級職じゃない?」
驚く小隊のメンバー達に、ルイーゼは可愛らしい笑顔で答える。
忍者は、斥候系・盗賊系の最上位に位置する、隠密活動や狭い屋内などでの至近距離の戦闘や一撃必殺に特化した非常に強力な上級職であった。
最後にアレクが登録水晶に手をかざす。
登録水晶は他の誰の時よりも強い光を放ち、その眩しさのあまり、アレクの周囲は白い光に包まれる。
ひと呼吸の後、登録水晶は発光を収めて青白く蓄光し、翼を広げた鳥の紋章を表面に描き出していた。
係員は、登録水晶が示した紋章に驚愕して動けなくなる。
「……こ、これは!? 『千年の光鷹』! 大帝の紋章が!?」
アレクの身体に流れている、父である皇帝ラインハルトの血、初代バレンシュテット大帝の血脈がその能力を覚醒させたことを登録水晶は感じ取ったのであった。
登録水晶は、表面に紋章から変わって選択できる職業の名称の文字が浮かび上がる。
アレクは、まじまじと水晶に浮かび上がった文字を見詰め、職業の名称を確認する。
水晶に浮かび上がった職業の名称には、アレクが渇望していた職業の名称が確かにあった。
『上級騎士』
アレクは、ためらいなく希望する職業の名称を読み上げる。
「上級騎士で」
登録水晶からの光線がアレクの上級騎士への転職を手帳に記入した。
アルは、アレクに話し掛ける。
「アレク。なんか、水晶が光っていたけど、上級騎士へ転職できたのか?」
「ああ」
自分の軍隊手帳を見詰めながら、アレクはアルに素っ気無く答える答える。
自分の軍隊手帳を見詰め続けるアレクの様子を訝しんだアルが、アレクの顔を覗き込む。
「アレク……?」
アレクは、軍隊手帳を持ったまま、声を殺して男泣きに泣いていた。
士官学校に入学して以来、アレクは上級騎士になるため、必死に努力してきた。
日々、鍛錬を続け、幾つもの実戦を経験し、やっと兄ジークと同じ上級騎士にたどり着いた。
その事がアレクの胸を一杯にしていた。
アルは、大声でアレクに声を掛ける。
「アレク! やったな! 上級騎士に転職出来て!」
ユニコーン小隊の仲間たちがアレクの周りに集まって祝う。
「やったぁ!」
「アレク! おめでとう!」
「やったな! 隊長!」
目標を達成して男泣きに泣くアレクを見て、ルイーゼも涙ぐみながらアレクに声を掛ける。
「アレク、おめでとう」
ルイーゼが声を掛けると、アレクは涙目のままルイーゼを見る。
ルイーゼは、顔を上げたアレクの頬に両手で触れると祝福のキスをする。
アレクは軍隊手帳を懐に仕舞うと、ルイーゼを抱き締めてキスを繰り返した。
この日、ユニコーン小隊の全員が転職に成功し、小隊の戦力は大幅に強化された。
アレクはルイーゼを連れて、担任であり、恩師でもあるジカイラを尋ねる。
アレクが上級騎士への転職に成功し、ユニコーン小隊の全員が転職に成功した旨を報告すると、ジカイラも自分の事のように喜ぶ。
ジカイラは口を開く。
「良くやった。 アレク、頑張ったな。 ……どうだ? 上級騎士になった感想は?」
アレクは照れ臭そうに答える。
「何だか……、あっけないです」
ジカイラは、微笑みながら答える。
「アレク。お前は、あのラインハルトとナナイの息子で、元々、上級騎士の才能が眠っていたんだ。今まで上級騎士になれなかったのは、単に鍛錬していなかったためだ。日々の鍛錬と実戦経験の積み重ねが、その才能を開花させた。その事を忘れるなよ」
「わかりました」
ジカイラは、自分への報告を終えて、ルイーゼと一緒に寮に戻ろうとするアレクの後姿を目を細めて見送る。
ジカイラは、自分たち、初代ユニコーン小隊の息子たちの成長を目の当たりにできたことが、素直に嬉しかった。
寮では、アレクの帰りを待たずに小隊メンバー達が夕食を取っていた。
アルが返ってきたアレクに声を掛ける。
「帰って来たか。お疲れ~」
アレクはアルに答えると、食堂の自分の席に着く。
「ただいま」
ルイーゼは、アレクが帰ってきたことを知り、アレクの夕食を用意する。
「お帰りなさい。お腹空いたでしょ? すぐ用意するね」
「うん」
アルはアレクに尋ねる。
「ジカイラ中佐は、なんて言ってたんだ?」
アレクはルイーゼが用意した夕食を食べながら、ジカイラとの話の内容を小隊メンバー達に説明した。
再び飛行空母ユニコーン・ゼロに乗れると知ったエルザは大喜びする。
「いいね! また、飛行空母で遠征だね!」
アルはアレクに聞き返す。
「ゴズフレズ王国に行くのは、一週間後だったな?」
「そうだけど」
アルは、アレクの答えを聞いて提案する。
「実は、オレ、中堅職に転職しようと考えているんだ」
アレクとアルの話にトゥルムも関心を示す。
「ほう? 中堅職に転職か」
ドミトリーも関心を示す。
「中堅職に転職とは。ゴズフレズ王国に行く前に、できるなら中堅職に転職して、小隊の戦力を増強しておくのが望ましいのではないか?」
アレクは、アルに同意する。
「オレもアルや皆が中堅職へ転職するのは、良いと思う」
アルはアレクを冷やかす。
「アレク。お前、ひょっとしたら上級騎士に転職できるんじゃないか?」
アルの言葉にアレクは驚く。
「オレが……、上級騎士に!?」
アレクは士官学校に入学してから、ずっと上級騎士になる事を目指して、懸命に努力していた。
父である皇帝ラインハルトや、兄である皇太子ジークフリートが上級騎士になったように。
アルは、驚いているアレクに告げる。
「アレク。明日、皆で士官学校に行って、学校の登録水晶で転職できるか、試してみようぜ?」
「そうだな……」
仲間達と夕食を囲む食卓で話し、ゴズフレズ王国に行く前に、小隊の皆で転職しようという事でまとまった。
--翌日。
アレクたちは士官学校へ行き、登録水晶のある窓口へ向かう。
アルは口を開く。
「登録水晶を見るのも入学式以来だな。……早速、試してみるか!」
アルは、軍隊手帳の職業のページを開いて窓口の隣にある登録水晶の下に置き、水晶に手をかざす。
水晶に職業の名称の文字が浮かび上がる。
「オレが転職出来るのは、高地戦士か、剣闘士か」
窓口の係員が説明する。
「高地戦士は両手持ちの大剣使い、剣闘士は武器はほぼ全て扱えますね」
アルは口を開く。
「オレの父さんも、戦士から剣闘士になった! 剣闘士で!」
登録水晶は輝き出し、水晶からの光線がアルの剣闘士への転職を手帳に記入した。
アルは、ガッツポーズをしながら大喜びでアレクたちに告げる。
「うぉおおお! やったぁ! 中堅職だ! 剣闘士になったぜ!」
ナタリーや小隊の仲間達はアルを祝福する。
「おめでとう! アル!」
「おめでとう!」
「やったな!」
トゥルムもアルと同じ中堅職の剣闘士に転職。
ナタリーは、中堅職の魔導師に転職。
ナディアは、中堅職の召喚士に転職。
エルザは、中堅職の高地戦士に転職。
ドミトリーは、中堅職の武僧に転職。
ルイーゼは、緊張した面持ちで登録水晶に手をかざす。
水晶に選択できる職業の名称の文字が浮かび上がり、ルイーゼが選択して読み上げる。
「忍者で」
登録水晶からの光線がルイーゼの忍者への転職を手帳に記入した。
ルイーゼが読み上げた職業を聞いたエルザが驚く。
「え!? ルイーゼが忍者に?」
忍者と聞いてナディアも驚く。
「忍者!? それって、上級職じゃない?」
驚く小隊のメンバー達に、ルイーゼは可愛らしい笑顔で答える。
忍者は、斥候系・盗賊系の最上位に位置する、隠密活動や狭い屋内などでの至近距離の戦闘や一撃必殺に特化した非常に強力な上級職であった。
最後にアレクが登録水晶に手をかざす。
登録水晶は他の誰の時よりも強い光を放ち、その眩しさのあまり、アレクの周囲は白い光に包まれる。
ひと呼吸の後、登録水晶は発光を収めて青白く蓄光し、翼を広げた鳥の紋章を表面に描き出していた。
係員は、登録水晶が示した紋章に驚愕して動けなくなる。
「……こ、これは!? 『千年の光鷹』! 大帝の紋章が!?」
アレクの身体に流れている、父である皇帝ラインハルトの血、初代バレンシュテット大帝の血脈がその能力を覚醒させたことを登録水晶は感じ取ったのであった。
登録水晶は、表面に紋章から変わって選択できる職業の名称の文字が浮かび上がる。
アレクは、まじまじと水晶に浮かび上がった文字を見詰め、職業の名称を確認する。
水晶に浮かび上がった職業の名称には、アレクが渇望していた職業の名称が確かにあった。
『上級騎士』
アレクは、ためらいなく希望する職業の名称を読み上げる。
「上級騎士で」
登録水晶からの光線がアレクの上級騎士への転職を手帳に記入した。
アルは、アレクに話し掛ける。
「アレク。なんか、水晶が光っていたけど、上級騎士へ転職できたのか?」
「ああ」
自分の軍隊手帳を見詰めながら、アレクはアルに素っ気無く答える答える。
自分の軍隊手帳を見詰め続けるアレクの様子を訝しんだアルが、アレクの顔を覗き込む。
「アレク……?」
アレクは、軍隊手帳を持ったまま、声を殺して男泣きに泣いていた。
士官学校に入学して以来、アレクは上級騎士になるため、必死に努力してきた。
日々、鍛錬を続け、幾つもの実戦を経験し、やっと兄ジークと同じ上級騎士にたどり着いた。
その事がアレクの胸を一杯にしていた。
アルは、大声でアレクに声を掛ける。
「アレク! やったな! 上級騎士に転職出来て!」
ユニコーン小隊の仲間たちがアレクの周りに集まって祝う。
「やったぁ!」
「アレク! おめでとう!」
「やったな! 隊長!」
目標を達成して男泣きに泣くアレクを見て、ルイーゼも涙ぐみながらアレクに声を掛ける。
「アレク、おめでとう」
ルイーゼが声を掛けると、アレクは涙目のままルイーゼを見る。
ルイーゼは、顔を上げたアレクの頬に両手で触れると祝福のキスをする。
アレクは軍隊手帳を懐に仕舞うと、ルイーゼを抱き締めてキスを繰り返した。
この日、ユニコーン小隊の全員が転職に成功し、小隊の戦力は大幅に強化された。
アレクはルイーゼを連れて、担任であり、恩師でもあるジカイラを尋ねる。
アレクが上級騎士への転職に成功し、ユニコーン小隊の全員が転職に成功した旨を報告すると、ジカイラも自分の事のように喜ぶ。
ジカイラは口を開く。
「良くやった。 アレク、頑張ったな。 ……どうだ? 上級騎士になった感想は?」
アレクは照れ臭そうに答える。
「何だか……、あっけないです」
ジカイラは、微笑みながら答える。
「アレク。お前は、あのラインハルトとナナイの息子で、元々、上級騎士の才能が眠っていたんだ。今まで上級騎士になれなかったのは、単に鍛錬していなかったためだ。日々の鍛錬と実戦経験の積み重ねが、その才能を開花させた。その事を忘れるなよ」
「わかりました」
ジカイラは、自分への報告を終えて、ルイーゼと一緒に寮に戻ろうとするアレクの後姿を目を細めて見送る。
ジカイラは、自分たち、初代ユニコーン小隊の息子たちの成長を目の当たりにできたことが、素直に嬉しかった。
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ジカイラに呼び出され、勅命の説明を受けたアレクは、寮に戻る。
寮では、アレクの帰りを待たずに小隊メンバー達が夕食を取っていた。
アルが返ってきたアレクに声を掛ける。
「帰って来たか。お疲れ~」
アレクはアルに答えると、食堂の自分の席に着く。
「ただいま」
ルイーゼは、アレクが帰ってきたことを知り、アレクの夕食を用意する。
「お帰りなさい。お腹空いたでしょ? すぐ用意するね」
「うん」
アルはアレクに尋ねる。
「ジカイラ中佐は、なんて言ってたんだ?」
アレクはルイーゼが用意した夕食を食べながら、ジカイラとの話の内容を小隊メンバー達に説明した。
再び飛行空母ユニコーン・ゼロに乗れると知ったエルザは大喜びする。
「いいね! また、飛行空母で遠征だね!」
アルはアレクに聞き返す。
「ゴズフレズ王国に行くのは、一週間後だったな?」
「そうだけど」
アルは、アレクの答えを聞いて提案する。
「実は、オレ、中堅職に|転職《クラスチェンジ》しようと考えているんだ」
アレクとアルの話にトゥルムも関心を示す。
「ほう? 中堅職に|転職《クラスチェンジ》か」
ドミトリーも関心を示す。
「中堅職に|転職《クラスチェンジ》とは。ゴズフレズ王国に行く前に、できるなら中堅職に|転職《クラスチェンジ》して、小隊の戦力を増強しておくのが望ましいのではないか?」
アレクは、アルに同意する。
「オレもアルや皆が中堅職へ|転職《クラスチェンジ》するのは、良いと思う」
アルはアレクを冷やかす。
「アレク。お前、ひょっとしたら|上級騎士《パラディン》に|転職《クラスチェンジ》できるんじゃないか?」
アルの言葉にアレクは驚く。
「オレが……、|上級騎士《パラディン》に!?」
アレクは士官学校に入学してから、ずっと|上級騎士《パラディン》になる事を目指して、懸命に努力していた。
父である皇帝ラインハルトや、兄である皇太子ジークフリートが|上級騎士《パラディン》になったように。
アルは、驚いているアレクに告げる。
「アレク。明日、皆で士官学校に行って、学校の登録水晶で|転職《クラスチェンジ》できるか、試してみようぜ?」
「そうだな……」
仲間達と夕食を囲む食卓で話し、ゴズフレズ王国に行く前に、小隊の皆で|転職《クラスチェンジ》しようという事でまとまった。
--翌日。
アレクたちは士官学校へ行き、登録水晶のある窓口へ向かう。
アルは口を開く。
「登録水晶を見るのも入学式以来だな。……早速、試してみるか!」
アルは、軍隊手帳の職業のページを開いて窓口の隣にある登録水晶の下に置き、水晶に手をかざす。
水晶に職業の名称の文字が浮かび上がる。
「オレが|転職《クラスチェンジ》出来るのは、|高地戦士《ハイランダー》か、|剣闘士《グラディエーター》か」
窓口の係員が説明する。
「|高地戦士《ハイランダー》は両手持ちの大剣使い、|剣闘士《グラディエーター》は武器はほぼ全て扱えますね」
アルは口を開く。
「オレの父さんも、|戦士《ウォーリアー》から|剣闘士《グラディエーター》になった! |剣闘士《グラディエーター》で!」
登録水晶は輝き出し、水晶からの光線がアルの|剣闘士《グラディエーター》への|転職《クラスチェンジ》を手帳に記入した。
アルは、ガッツポーズをしながら大喜びでアレクたちに告げる。
「うぉおおお! やったぁ! 中堅職だ! |剣闘士《グラディエーター》になったぜ!」
ナタリーや小隊の仲間達はアルを祝福する。
「おめでとう! アル!」
「おめでとう!」
「やったな!」
トゥルムもアルと同じ中堅職の|剣闘士《グラディエーター》に|転職《クラスチェンジ》。
ナタリーは、中堅職の|魔導師《ウィザード》に|転職《クラスチェンジ》。
ナディアは、中堅職の|召喚士《サモナー》に|転職《クラスチェンジ》。
エルザは、中堅職の|高地戦士《ハイランダー》に|転職《クラスチェンジ》。
ドミトリーは、中堅職の|武僧《バトルモンク》に|転職《クラスチェンジ》。
ルイーゼは、緊張した面持ちで登録水晶に手をかざす。
水晶に選択できる|職業《クラス》の名称の文字が浮かび上がり、ルイーゼが選択して読み上げる。
「|忍者《ニンジャ》で」
登録水晶からの光線がルイーゼの|忍者《ニンジャ》への|転職《クラスチェンジ》を手帳に記入した。
ルイーゼが読み上げた職業を聞いたエルザが驚く。
「え!? ルイーゼが|忍者《ニンジャ》に?」
|忍者《ニンジャ》と聞いてナディアも驚く。
「|忍者《ニンジャ》!? それって、上級職じゃない?」
驚く小隊のメンバー達に、ルイーゼは可愛らしい笑顔で答える。
|忍者《ニンジャ》は、斥候系・盗賊系の最上位に位置する、隠密活動や狭い屋内などでの至近距離の戦闘や一撃必殺に特化した非常に強力な上級職であった。
最後にアレクが登録水晶に手をかざす。
登録水晶は他の誰の時よりも強い光を放ち、その眩しさのあまり、アレクの周囲は白い光に包まれる。
ひと呼吸の後、登録水晶は発光を収めて青白く蓄光し、翼を広げた鳥の紋章を表面に描き出していた。
係員は、登録水晶が示した紋章に驚愕して動けなくなる。
「……こ、これは!? 『|千年の光鷹《ミレニアム・ファルコン》』! 大帝の紋章が!?」
アレクの身体に流れている、父である皇帝ラインハルトの血、初代バレンシュテット大帝の血脈がその能力を覚醒させたことを登録水晶は感じ取ったのであった。
登録水晶は、表面に紋章から変わって選択できる|職業《クラス》の名称の文字が浮かび上がる。
アレクは、まじまじと水晶に浮かび上がった文字を見詰め、|職業《クラス》の名称を確認する。
水晶に浮かび上がった|職業《クラス》の名称には、アレクが渇望していた|職業《クラス》の名称が確かにあった。
『|上級騎士《パラディン》』
アレクは、ためらいなく希望する|職業《クラス》の名称を読み上げる。
「|上級騎士《パラディン》で」
登録水晶からの光線がアレクの|上級騎士《パラディン》への|転職《クラスチェンジ》を手帳に記入した。
アルは、アレクに話し掛ける。
「アレク。なんか、水晶が光っていたけど、|上級騎士《パラディン》へ|転職《クラスチェンジ》できたのか?」
「ああ」
自分の軍隊手帳を見詰めながら、アレクはアルに素っ気無く答える答える。
自分の軍隊手帳を見詰め続けるアレクの様子を訝しんだアルが、アレクの顔を覗き込む。
「アレク……?」
アレクは、軍隊手帳を持ったまま、声を殺して男泣きに泣いていた。
士官学校に入学して以来、アレクは|上級騎士《パラディン》になるため、必死に努力してきた。
日々、鍛錬を続け、幾つもの実戦を経験し、やっと兄ジークと同じ|上級騎士《パラディン》にたどり着いた。
その事がアレクの胸を一杯にしていた。
アルは、大声でアレクに声を掛ける。
「アレク! やったな! |上級騎士《パラディン》に|転職《クラスチェンジ》出来て!」
ユニコーン小隊の仲間たちがアレクの周りに集まって祝う。
「やったぁ!」
「アレク! おめでとう!」
「やったな! 隊長!」
目標を達成して男泣きに泣くアレクを見て、ルイーゼも涙ぐみながらアレクに声を掛ける。
「アレク、おめでとう」
ルイーゼが声を掛けると、アレクは涙目のままルイーゼを見る。
ルイーゼは、顔を上げたアレクの頬に両手で触れると祝福のキスをする。
アレクは軍隊手帳を懐に仕舞うと、ルイーゼを抱き締めてキスを繰り返した。
この日、ユニコーン小隊の全員が|転職《クラスチェンジ》に成功し、小隊の戦力は大幅に強化された。
アレクはルイーゼを連れて、担任であり、恩師でもあるジカイラを尋ねる。
アレクが|上級騎士《パラディン》への|転職《クラスチェンジ》に成功し、ユニコーン小隊の全員が|転職《クラスチェンジ》に成功した旨を報告すると、ジカイラも自分の事のように喜ぶ。
ジカイラは口を開く。
「良くやった。 アレク、頑張ったな。 ……どうだ? |上級騎士《パラディン》になった感想は?」
アレクは照れ臭そうに答える。
「何だか……、あっけないです」
ジカイラは、微笑みながら答える。
「アレク。お前は、あのラインハルトとナナイの息子で、元々、|上級騎士《パラディン》の才能が眠っていたんだ。今まで|上級騎士《パラディン》になれなかったのは、単に鍛錬していなかったためだ。日々の鍛錬と実戦経験の積み重ねが、その才能を開花させた。その事を忘れるなよ」
「わかりました」
ジカイラは、自分への報告を終えて、ルイーゼと一緒に寮に戻ろうとするアレクの後姿を目を細めて見送る。
ジカイラは、自分たち、初代ユニコーン小隊の息子たちの成長を目の当たりにできたことが、素直に嬉しかった。