第百二十四話 帝国不死兵団と降伏勧告
ー/ー--翌日 キャスパーシティ上空 飛行空母ユニコーン・ゼロ 艦橋。
飛行空母ユニコーン・ゼロに乗るエリシスとジカイラの元に、帝都にいる皇帝ラインハルトの勅命が届く。
エリシスは口を開く。
「中佐。陛下から勅命よ」
エリシスはそう言うと、ジカイラに勅命が記された羊皮紙の命令書を手渡す。
「勅命?」
エリシスは答える。
「そう。私とリリーには転進命令、中佐には帰還命令よ。私達は、帝国東部方面軍と交代するため、カルロフカに向かうわ。行くわよ、リリー」
「はい」
エリシスとリリーの二人は、転移門を通ってトラキア第二の都市カルロフカへ向かって行った。
ジカイラは、受け取った封印が施されたままの羊皮紙の命令書を眺めながら呟き、艦橋から自室へと向かう。
「『帰還命令』……か」
ジカイラは、ヒナの待つ自室に戻る。
自室で羊皮紙に綴られた勅命の命令書に目を通しながら、ジカイラが呟く。
「帰還命令だな。……トラキア解放戦線の本部は、エリシス伯爵達に叩かせるらしい」
ヒナは答える。
「ジカさん、帝都に帰るの?」
ヒナからの問いに、ジカイラは安堵したように答える。
「そうだ」
ヒナは再び尋ねる。
「エリシス伯爵達は?」
「トラキアのカルロフカに向かった」
「そうなんだ」
ジカイラは、ベッドに横になると天井を見上げながら呟く。
「……各小隊に帝都に帰還することを伝えないとな」
ジカイラは続ける。
「……オレ達が……帝都に……帰還」
ジカイラは『勅命の意図』について、色々と考えを巡らせる。
半時ほど考えていたジカイラは、突然、ハッとしてベッドの上で上半身を起こすと、傍らにいたヒナが驚く。
「ジカさん、どうしたの? 突然、飛び起きて?」
ジカイラは、ヒナの方を見ると呟く。
「いや……まさか……な」
この時、ジカイラが気付いた『勅命の意図』が、概ね正解であった事が後に判る。
--三日後 トラキア カルロフカ。
トラキア解放戦線のアクエリアスとキャスパーは、カルロフカの街を取り巻く城壁の上に居た。
街の外でカルロフカを何重にも包囲する帝国軍を望遠鏡で見ながら、アクエリアスが口を開く。
「……一体、どういう事だ?」
キャスパーが尋ねる。
「何がだ?」
「街を包囲している帝国軍が一晩で様変わりした」
「何だと!? 私にも見せてみろ!」
キャスパーは、アクエリアスから望遠鏡を受け取ると、帝国軍の包囲陣を見る。
昨日まで、カルロフカの街を取り囲んでいた帝国軍は、蒸気戦車や攻城用大砲であった。
しかし、キャスパーが、今、望遠鏡で見た帝国軍は、動死体や骸骨、竜動死体や死の騎士などの不死者ばかりであった。
キャスパーは、帝国軍の包囲陣をぐるっと見渡す。
すると、一際豪華な小さな砦ほどの大きさもある車輪の付いた巨大な輿に乗っている二人の美女がいる事に気が付く。
輿に乗っているのは、五メートルほどの高さの位置にある、玉座を模した椅子に座る軍服姿のエリシスと、その傍らに軍服姿で立つリリーであった。
車輪の付いた輿を何体もの巨人の動死体が動かしていた。
キャスパーは、自分の尻に『獣人専用』の焼き印を刻み、耐え難い屈辱を与えたエリシスとリリーの事を覚えていた。
キャスパーの顔色が、みるみるうちに青ざめる。
「……あの女達だ」
アクエリアスが尋ねる。
「あの女?」
キャスパーは答える。
「……帝国四魔将と呼ばれる帝国軍で最も恐ろしい女達だ。街を取り囲んでいるのは、帝国不死兵団だろう」
キャスパーの言葉を、アクエリアスは鼻で笑う。
「……フン。女にビビッたのか? それに、街を取り囲んでいるのは、たかが動死体や骸骨ではないか」
キャスパーが答える。
「……お前は知らないのだ。あの人外の二人が、どれほど恐ろしいか」
アクエリアスがキャスパーを皮肉る。
「オレは、そいつらを知りたくもないし、知るつもりもない」
キャスパーは俯きながら考える。口には出さなかった。
(……馬鹿が。あの二人に殺されるぞ)
輿に乗るエリシスは、すっかり古代の女王のような気分でご機嫌だった。
リリーはエリシスに報告する。
「帝国東部方面軍との配置交代を完了しました。カルロフカ市街全周を、我が帝国南部方面軍、帝国不死兵団が包囲しております」
エリシスは、玉座に足を組んで座り、ひじ掛けに肘をつきながら微笑む。
「御苦労様」
リリーは続ける。
「カルロフカへの攻撃は、いかが致します?」
エリシスは楽しそうに答える。
「……陛下からの勅命に従い、勧告を出すわ」
リリーは尋ねる。
「『勧告』ですか?」
エリシスが答える。
「そう。投降と降伏の勧告よ。……骸骨使者を使うわ」
城壁の上にいるアクエリアスとキャスパーは、突然、カルロフカの街の上空に重苦しい雲が現れて、薄暗くなったことに気が付く。
アクエリアスは、空を見上げて呟く。
「……急に薄暗くなったな」
キャスパーは、街の上空の雲の形が変わっていく様子を眺めていた。
「……なんだ? あれは?」
街の上空の暗雲が、巨大な髑髏の形になる。
カルロフカの大勢のトラキア人達が、街の上空に浮かぶ巨大な髑髏の形の暗雲を見上げる。
やがて、巨大な髑髏は、その口を動かして語り始める。……正しくは、髑髏が発しているように見える重苦しい声が、カルロフカの街の者達の頭の中に響く。
「……カルロフカの賊徒どもに告げる。……偉大なる皇帝陛下は、賊徒であるお前達に、寛大なる慈悲を示された。……今より二十四時間以内に帝国軍に投降する者、降伏する者は、その命を助けるだけでなく、罪に問われる事は無い。……すみやかに降伏し、帝国に帰順するが良い。……心せよ。……二十四時間後、カルロフカに残る賊徒どもに、逃れられない死が訪れる。……決して逃れられない死が」
街の上空に浮かぶ巨大な髑髏の形の暗雲は、語り終えると虚空に消えて行った。
飛行空母ユニコーン・ゼロに乗るエリシスとジカイラの元に、帝都にいる皇帝ラインハルトの勅命が届く。
エリシスは口を開く。
「中佐。陛下から勅命よ」
エリシスはそう言うと、ジカイラに勅命が記された羊皮紙の命令書を手渡す。
「勅命?」
エリシスは答える。
「そう。私とリリーには転進命令、中佐には帰還命令よ。私達は、帝国東部方面軍と交代するため、カルロフカに向かうわ。行くわよ、リリー」
「はい」
エリシスとリリーの二人は、転移門を通ってトラキア第二の都市カルロフカへ向かって行った。
ジカイラは、受け取った封印が施されたままの羊皮紙の命令書を眺めながら呟き、艦橋から自室へと向かう。
「『帰還命令』……か」
ジカイラは、ヒナの待つ自室に戻る。
自室で羊皮紙に綴られた勅命の命令書に目を通しながら、ジカイラが呟く。
「帰還命令だな。……トラキア解放戦線の本部は、エリシス伯爵達に叩かせるらしい」
ヒナは答える。
「ジカさん、帝都に帰るの?」
ヒナからの問いに、ジカイラは安堵したように答える。
「そうだ」
ヒナは再び尋ねる。
「エリシス伯爵達は?」
「トラキアのカルロフカに向かった」
「そうなんだ」
ジカイラは、ベッドに横になると天井を見上げながら呟く。
「……各小隊に帝都に帰還することを伝えないとな」
ジカイラは続ける。
「……オレ達が……帝都に……帰還」
ジカイラは『勅命の意図』について、色々と考えを巡らせる。
半時ほど考えていたジカイラは、突然、ハッとしてベッドの上で上半身を起こすと、傍らにいたヒナが驚く。
「ジカさん、どうしたの? 突然、飛び起きて?」
ジカイラは、ヒナの方を見ると呟く。
「いや……まさか……な」
この時、ジカイラが気付いた『勅命の意図』が、概ね正解であった事が後に判る。
--三日後 トラキア カルロフカ。
トラキア解放戦線のアクエリアスとキャスパーは、カルロフカの街を取り巻く城壁の上に居た。
街の外でカルロフカを何重にも包囲する帝国軍を望遠鏡で見ながら、アクエリアスが口を開く。
「……一体、どういう事だ?」
キャスパーが尋ねる。
「何がだ?」
「街を包囲している帝国軍が一晩で様変わりした」
「何だと!? 私にも見せてみろ!」
キャスパーは、アクエリアスから望遠鏡を受け取ると、帝国軍の包囲陣を見る。
昨日まで、カルロフカの街を取り囲んでいた帝国軍は、蒸気戦車や攻城用大砲であった。
しかし、キャスパーが、今、望遠鏡で見た帝国軍は、動死体や骸骨、竜動死体や死の騎士などの不死者ばかりであった。
キャスパーは、帝国軍の包囲陣をぐるっと見渡す。
すると、一際豪華な小さな砦ほどの大きさもある車輪の付いた巨大な輿に乗っている二人の美女がいる事に気が付く。
輿に乗っているのは、五メートルほどの高さの位置にある、玉座を模した椅子に座る軍服姿のエリシスと、その傍らに軍服姿で立つリリーであった。
車輪の付いた輿を何体もの巨人の動死体が動かしていた。
キャスパーは、自分の尻に『獣人専用』の焼き印を刻み、耐え難い屈辱を与えたエリシスとリリーの事を覚えていた。
キャスパーの顔色が、みるみるうちに青ざめる。
「……あの女達だ」
アクエリアスが尋ねる。
「あの女?」
キャスパーは答える。
「……帝国四魔将と呼ばれる帝国軍で最も恐ろしい女達だ。街を取り囲んでいるのは、帝国不死兵団だろう」
キャスパーの言葉を、アクエリアスは鼻で笑う。
「……フン。女にビビッたのか? それに、街を取り囲んでいるのは、たかが動死体や骸骨ではないか」
キャスパーが答える。
「……お前は知らないのだ。あの人外の二人が、どれほど恐ろしいか」
アクエリアスがキャスパーを皮肉る。
「オレは、そいつらを知りたくもないし、知るつもりもない」
キャスパーは俯きながら考える。口には出さなかった。
(……馬鹿が。あの二人に殺されるぞ)
輿に乗るエリシスは、すっかり古代の女王のような気分でご機嫌だった。
リリーはエリシスに報告する。
「帝国東部方面軍との配置交代を完了しました。カルロフカ市街全周を、我が帝国南部方面軍、帝国不死兵団が包囲しております」
エリシスは、玉座に足を組んで座り、ひじ掛けに肘をつきながら微笑む。
「御苦労様」
リリーは続ける。
「カルロフカへの攻撃は、いかが致します?」
エリシスは楽しそうに答える。
「……陛下からの勅命に従い、勧告を出すわ」
リリーは尋ねる。
「『勧告』ですか?」
エリシスが答える。
「そう。投降と降伏の勧告よ。……骸骨使者を使うわ」
城壁の上にいるアクエリアスとキャスパーは、突然、カルロフカの街の上空に重苦しい雲が現れて、薄暗くなったことに気が付く。
アクエリアスは、空を見上げて呟く。
「……急に薄暗くなったな」
キャスパーは、街の上空の雲の形が変わっていく様子を眺めていた。
「……なんだ? あれは?」
街の上空の暗雲が、巨大な髑髏の形になる。
カルロフカの大勢のトラキア人達が、街の上空に浮かぶ巨大な髑髏の形の暗雲を見上げる。
やがて、巨大な髑髏は、その口を動かして語り始める。……正しくは、髑髏が発しているように見える重苦しい声が、カルロフカの街の者達の頭の中に響く。
「……カルロフカの賊徒どもに告げる。……偉大なる皇帝陛下は、賊徒であるお前達に、寛大なる慈悲を示された。……今より二十四時間以内に帝国軍に投降する者、降伏する者は、その命を助けるだけでなく、罪に問われる事は無い。……すみやかに降伏し、帝国に帰順するが良い。……心せよ。……二十四時間後、カルロフカに残る賊徒どもに、逃れられない死が訪れる。……決して逃れられない死が」
街の上空に浮かぶ巨大な髑髏の形の暗雲は、語り終えると虚空に消えて行った。
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--翌日 キャスパーシティ上空 飛行空母ユニコーン・ゼロ 艦橋。
飛行空母ユニコーン・ゼロに乗るエリシスとジカイラの元に、帝都にいる皇帝ラインハルトの勅命が届く。
エリシスは口を開く。
「中佐。陛下から勅命よ」
エリシスはそう言うと、ジカイラに勅命が記された羊皮紙の命令書を手渡す。
「勅命?」
エリシスは答える。
「そう。私とリリーには転進命令、中佐には帰還命令よ。私達は、帝国東部方面軍と交代するため、カルロフカに向かうわ。行くわよ、リリー」
「はい」
エリシスとリリーの二人は、|転移門《ゲート》を通ってトラキア第二の都市カルロフカへ向かって行った。
ジカイラは、受け取った封印が施されたままの羊皮紙の命令書を眺めながら呟き、艦橋から自室へと向かう。
「『帰還命令』……か」
ジカイラは、ヒナの待つ自室に戻る。
自室で羊皮紙に綴られた勅命の命令書に目を通しながら、ジカイラが呟く。
「帰還命令だな。……トラキア解放戦線の本部は、エリシス伯爵達に叩かせるらしい」
ヒナは答える。
「ジカさん、帝都に帰るの?」
ヒナからの問いに、ジカイラは安堵したように答える。
「そうだ」
ヒナは再び尋ねる。
「エリシス伯爵達は?」
「トラキアのカルロフカに向かった」
「そうなんだ」
ジカイラは、ベッドに横になると天井を見上げながら呟く。
「……各小隊に帝都に帰還することを伝えないとな」
ジカイラは続ける。
「……オレ達が……帝都に……帰還」
ジカイラは『勅命の意図』について、色々と考えを巡らせる。
半時ほど考えていたジカイラは、突然、ハッとしてベッドの上で上半身を起こすと、傍らにいたヒナが驚く。
「ジカさん、どうしたの? 突然、飛び起きて?」
ジカイラは、ヒナの方を見ると呟く。
「いや……まさか……な」
この時、ジカイラが気付いた『勅命の意図』が、概ね正解であった事が後に判る。
--三日後 トラキア カルロフカ。
トラキア解放戦線のアクエリアスとキャスパーは、カルロフカの街を取り巻く城壁の上に居た。
街の外でカルロフカを何重にも包囲する帝国軍を望遠鏡で見ながら、アクエリアスが口を開く。
「……一体、どういう事だ?」
キャスパーが尋ねる。
「何がだ?」
「街を包囲している帝国軍が一晩で様変わりした」
「何だと!? 私にも見せてみろ!」
キャスパーは、アクエリアスから望遠鏡を受け取ると、帝国軍の包囲陣を見る。
昨日まで、カルロフカの街を取り囲んでいた帝国軍は、|蒸気戦車《スチームタンク》や攻城用大砲であった。
しかし、キャスパーが、今、望遠鏡で見た帝国軍は、|動死体《ゾンビ》や|骸骨《スケルトン》、|竜《ドラゴン》|動死体《ゾンビ》や|死の《デス・》|騎士《ナイト》などの|不死者《アンデッド》ばかりであった。
キャスパーは、帝国軍の包囲陣をぐるっと見渡す。
すると、一際豪華な小さな砦ほどの大きさもある車輪の付いた巨大な輿に乗っている二人の美女がいる事に気が付く。
輿に乗っているのは、五メートルほどの高さの位置にある、玉座を模した椅子に座る軍服姿のエリシスと、その傍らに軍服姿で立つリリーであった。
車輪の付いた輿を何体もの|巨人の《ジャンアント》|動死体《ゾンビ》が動かしていた。
キャスパーは、自分の尻に『獣人専用』の焼き印を刻み、耐え難い屈辱を与えたエリシスとリリーの事を覚えていた。
キャスパーの顔色が、みるみるうちに青ざめる。
「……あの女達だ」
アクエリアスが尋ねる。
「あの女?」
キャスパーは答える。
「……帝国四魔将と呼ばれる帝国軍で最も恐ろしい女達だ。街を取り囲んでいるのは、帝国不死兵団だろう」
キャスパーの言葉を、アクエリアスは鼻で笑う。
「……フン。女にビビッたのか? それに、街を取り囲んでいるのは、たかが|動死体《ゾンビ》や|骸骨《スケルトン》ではないか」
キャスパーが答える。
「……お前は知らないのだ。あの人外の二人が、どれほど恐ろしいか」
アクエリアスがキャスパーを皮肉る。
「オレは、そいつらを知りたくもないし、知るつもりもない」
キャスパーは俯きながら考える。口には出さなかった。
(……馬鹿が。あの二人に殺されるぞ)
輿に乗るエリシスは、すっかり古代の女王のような気分でご機嫌だった。
リリーはエリシスに報告する。
「帝国東部方面軍との配置交代を完了しました。カルロフカ市街全周を、我が帝国南部方面軍、帝国不死兵団が包囲しております」
エリシスは、玉座に足を組んで座り、ひじ掛けに肘をつきながら微笑む。
「御苦労様」
リリーは続ける。
「カルロフカへの攻撃は、いかが致します?」
エリシスは楽しそうに答える。
「……陛下からの勅命に従い、勧告を出すわ」
リリーは尋ねる。
「『勧告』ですか?」
エリシスが答える。
「そう。投降と降伏の勧告よ。……|骸骨《スカル・》|使者《メッセンジャー》を使うわ」
城壁の上にいるアクエリアスとキャスパーは、突然、カルロフカの街の上空に重苦しい雲が現れて、薄暗くなったことに気が付く。
アクエリアスは、空を見上げて呟く。
「……急に薄暗くなったな」
キャスパーは、街の上空の雲の形が変わっていく様子を眺めていた。
「……なんだ? あれは?」
街の上空の暗雲が、巨大な髑髏の形になる。
カルロフカの大勢のトラキア人達が、街の上空に浮かぶ巨大な髑髏の形の暗雲を見上げる。
やがて、巨大な髑髏は、その口を動かして語り始める。……正しくは、髑髏が発しているように見える重苦しい声が、カルロフカの街の者達の頭の中に響く。
「……カルロフカの賊徒どもに告げる。……偉大なる皇帝陛下は、賊徒であるお前達に、寛大なる慈悲を示された。……今より二十四時間以内に帝国軍に投降する者、降伏する者は、その命を助けるだけでなく、罪に問われる事は無い。……すみやかに降伏し、帝国に帰順するが良い。……心せよ。……二十四時間後、カルロフカに残る賊徒どもに、逃れられない死が訪れる。……決して逃れられない死が」
街の上空に浮かぶ巨大な髑髏の形の暗雲は、語り終えると虚空に消えて行った。