第九十二話 陰謀
ー/ー--魔導王国エスペランサ ダークエルフたちの居城。
シグマたち、三人のダークエルフは、突如、転移した。
シグマがアレクに斬られた顔の右側を押さえながら周囲を見回す。
薄暗い半球状の大きな部屋に十二本の魔力水晶が円周状に立ち並ぶ魔法陣の中央にいることが判る。
シグマが呟く。
「……ここは?」
「戻ったか」
シグマは、女の声がした方角を見上げる。
女は、褐色の肌に尖った耳、長く美しいプラチナブロンドの髪で、黒革でできた水着のビキニとコルセットのような服を着ており、両肩にはケープのような薄布を羽織っている妖艶な美女であった。
ダークエルフたちの魔導王国エスペランサを統べる女王ドロテアであった。
ドロテアは、半球状の大きな部屋の内壁に沿って造られた階段を降りてくる。
「女王陛下!」
シグマたち、三人のダークエルフは、その場に跪いてドロテアが降りてくるのを待つ。
三人の元に来たドロテアが口を開く。
「遠視の鏡でうぬらの戦いぶりを見ておった。危ないところであったな。まずは手当てを」
そう言うとドロテアはシグマの顔に手をかざして魔法を唱える。
「治癒」
アレクに斬られたシグマの顔の傷からの出血が止まる。
シグマがドロテアに礼を言う。
「……感謝致します」
ドロテアがシグマに尋ねる。
「傷跡はどうする? 消すこともできるが」
シグマは、出血の止まった傷を指先でなぞりながら答える。
「この傷を忘れないためにも、どうか、このままで」
続けてシグマがドロテアに謝罪する。
「……女王陛下よりお預かりした霊樹の森の半数と鼠人、小鬼。犬鬼、食人鬼の軍勢を失いました。面目次第もございません」
ドロテアが続ける。
「相手が『神殺しの竜王』と『皇帝』では、致し方あるまい。相手が悪い」
三人のダークエルフたちは、ドロテアの言葉に畏まる。
「ははっ」
ドロテアが続ける。
「うぬらが戻って何よりじゃ。霊樹の森は、植えれば良い。妖魔の軍勢は、集めれば良い。だが、うぬらは、そうはいかんのでな。我らダークエルフの血は、貴いのじゃ」
シグマは、ドロテアの言葉に感激する。
「……陛下」
ダークエルフは、強さを至上として、極端な血統主義を取っており、自分たちダークエルフを支配種族として位置付け、人間や弱い種族は奴隷種族として消耗品程度にしか考えていなかった。
ドロテアが続ける。
「うぬらを呼び戻すのに、貴重な古代魔法遺産『転移の宝珠』を使った。そう簡単に手に入るものではない。その分は働いて返せ」
三人のダークエルフは答える。
「ははっ!」
ドロテアは、シグマを見詰めて詰問する。
「シグマ」
「はっ!」
「人間の皇帝は、どうであった?」
シグマは、ドロテアからの質問の意味を把握しかねていた。
「どう、と言いますと?」
ドロテアは、ラインハルトに興味を持っていた。
「戦った感想じゃ。大帝は神々から力を授けられた。その子孫である皇帝の一族は『人の子の、最も優れし者』と聞く。どうであった?」
「はっ。……皇帝は、マスタークラスの上級騎士であり、近接戦におけるその強さは、尋常ではありませんでした」
「うぬら三人掛かりでも、勝てなかったようだな」
「……おっしゃる通りです」
ドロテアは、上機嫌で自分の下腹部、子宮の位置を摩りながら呟く。
「ふふふ。……『人の子の、最も優れし者』である皇帝と、ダークエルフ最強の一族である我が目合ひ、吾子を孕めば、産まれてくる子は、一体、どれほどのものになるか……ふふふ」
ドロテアが続ける。
「……人でも、亜人でも、人外でも構わない。我らより強き者であるならば。我らの目的のためには、数の少ない我らには、強さと力が必要なのじゃ」
ドロテアの呟きにシグマは驚く。
「……陛下。恐れながら、皇帝を誘拐するなど、とても無理です」
「なら、我が直接、皇帝に求婚してみようかの?」
ドロテアはそう口にすると、自分の右手の中指と薬指を揃えて立て、男性器に見立てて根元まで口で咥えて見せる。
シグマは俯いて答える。
「……お戯れを」
ドロテアが告げる。
「ふふふ。次の手を考えねばなるまい。奴隷と生贄は、いくらあっても良い。……何も『大帝の生まれ変わり』と称される当代の皇帝でなくとも良い。皇帝の一族の男子であるならば」
ドロテアは、半球状の部屋の天井を眺めながら呟く。
「強き者の血は、必ず覚醒する。……その時が来るのを待てば良い。時は我らに味方する。我らに寿命は無いのだから」
奴隷と生贄、そして帝室の血を狙い、闇の眷属であるダークエルフたちは、次の陰謀を企てていた。
シグマたち、三人のダークエルフは、突如、転移した。
シグマがアレクに斬られた顔の右側を押さえながら周囲を見回す。
薄暗い半球状の大きな部屋に十二本の魔力水晶が円周状に立ち並ぶ魔法陣の中央にいることが判る。
シグマが呟く。
「……ここは?」
「戻ったか」
シグマは、女の声がした方角を見上げる。
女は、褐色の肌に尖った耳、長く美しいプラチナブロンドの髪で、黒革でできた水着のビキニとコルセットのような服を着ており、両肩にはケープのような薄布を羽織っている妖艶な美女であった。
ダークエルフたちの魔導王国エスペランサを統べる女王ドロテアであった。
ドロテアは、半球状の大きな部屋の内壁に沿って造られた階段を降りてくる。
「女王陛下!」
シグマたち、三人のダークエルフは、その場に跪いてドロテアが降りてくるのを待つ。
三人の元に来たドロテアが口を開く。
「遠視の鏡でうぬらの戦いぶりを見ておった。危ないところであったな。まずは手当てを」
そう言うとドロテアはシグマの顔に手をかざして魔法を唱える。
「治癒」
アレクに斬られたシグマの顔の傷からの出血が止まる。
シグマがドロテアに礼を言う。
「……感謝致します」
ドロテアがシグマに尋ねる。
「傷跡はどうする? 消すこともできるが」
シグマは、出血の止まった傷を指先でなぞりながら答える。
「この傷を忘れないためにも、どうか、このままで」
続けてシグマがドロテアに謝罪する。
「……女王陛下よりお預かりした霊樹の森の半数と鼠人、小鬼。犬鬼、食人鬼の軍勢を失いました。面目次第もございません」
ドロテアが続ける。
「相手が『神殺しの竜王』と『皇帝』では、致し方あるまい。相手が悪い」
三人のダークエルフたちは、ドロテアの言葉に畏まる。
「ははっ」
ドロテアが続ける。
「うぬらが戻って何よりじゃ。霊樹の森は、植えれば良い。妖魔の軍勢は、集めれば良い。だが、うぬらは、そうはいかんのでな。我らダークエルフの血は、貴いのじゃ」
シグマは、ドロテアの言葉に感激する。
「……陛下」
ダークエルフは、強さを至上として、極端な血統主義を取っており、自分たちダークエルフを支配種族として位置付け、人間や弱い種族は奴隷種族として消耗品程度にしか考えていなかった。
ドロテアが続ける。
「うぬらを呼び戻すのに、貴重な古代魔法遺産『転移の宝珠』を使った。そう簡単に手に入るものではない。その分は働いて返せ」
三人のダークエルフは答える。
「ははっ!」
ドロテアは、シグマを見詰めて詰問する。
「シグマ」
「はっ!」
「人間の皇帝は、どうであった?」
シグマは、ドロテアからの質問の意味を把握しかねていた。
「どう、と言いますと?」
ドロテアは、ラインハルトに興味を持っていた。
「戦った感想じゃ。大帝は神々から力を授けられた。その子孫である皇帝の一族は『人の子の、最も優れし者』と聞く。どうであった?」
「はっ。……皇帝は、マスタークラスの上級騎士であり、近接戦におけるその強さは、尋常ではありませんでした」
「うぬら三人掛かりでも、勝てなかったようだな」
「……おっしゃる通りです」
ドロテアは、上機嫌で自分の下腹部、子宮の位置を摩りながら呟く。
「ふふふ。……『人の子の、最も優れし者』である皇帝と、ダークエルフ最強の一族である我が目合ひ、吾子を孕めば、産まれてくる子は、一体、どれほどのものになるか……ふふふ」
ドロテアが続ける。
「……人でも、亜人でも、人外でも構わない。我らより強き者であるならば。我らの目的のためには、数の少ない我らには、強さと力が必要なのじゃ」
ドロテアの呟きにシグマは驚く。
「……陛下。恐れながら、皇帝を誘拐するなど、とても無理です」
「なら、我が直接、皇帝に求婚してみようかの?」
ドロテアはそう口にすると、自分の右手の中指と薬指を揃えて立て、男性器に見立てて根元まで口で咥えて見せる。
シグマは俯いて答える。
「……お戯れを」
ドロテアが告げる。
「ふふふ。次の手を考えねばなるまい。奴隷と生贄は、いくらあっても良い。……何も『大帝の生まれ変わり』と称される当代の皇帝でなくとも良い。皇帝の一族の男子であるならば」
ドロテアは、半球状の部屋の天井を眺めながら呟く。
「強き者の血は、必ず覚醒する。……その時が来るのを待てば良い。時は我らに味方する。我らに寿命は無いのだから」
奴隷と生贄、そして帝室の血を狙い、闇の眷属であるダークエルフたちは、次の陰謀を企てていた。
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--魔導王国エスペランサ ダークエルフたちの居城。
シグマたち、三人のダークエルフは、突如、|転移《テレポート》した。
シグマがアレクに斬られた顔の右側を押さえながら周囲を見回す。
薄暗い半球状の大きな部屋に十二本の|魔力《マナ・》|水晶《クリスタル》が円周状に立ち並ぶ魔法陣の中央にいることが判る。
シグマが呟く。
「……ここは?」
「戻ったか」
シグマは、女の声がした方角を見上げる。
女は、褐色の肌に尖った耳、長く美しいプラチナブロンドの髪で、黒革でできた水着のビキニとコルセットのような服を着ており、両肩にはケープのような薄布を羽織っている妖艶な美女であった。
ダークエルフたちの魔導王国エスペランサを統べる女王ドロテアであった。
ドロテアは、半球状の大きな部屋の内壁に沿って造られた階段を降りてくる。
「女王陛下!」
シグマたち、三人のダークエルフは、その場に跪いてドロテアが降りてくるのを待つ。
三人の元に来たドロテアが口を開く。
「遠視の鏡でうぬらの戦いぶりを見ておった。危ないところであったな。まずは手当てを」
そう言うとドロテアはシグマの顔に手をかざして魔法を唱える。
「|治癒《ヒール》」
アレクに斬られたシグマの顔の傷からの出血が止まる。
シグマがドロテアに礼を言う。
「……感謝致します」
ドロテアがシグマに尋ねる。
「傷跡はどうする? 消すこともできるが」
シグマは、出血の止まった傷を指先でなぞりながら答える。
「この傷を忘れないためにも、どうか、このままで」
続けてシグマがドロテアに謝罪する。
「……女王陛下よりお預かりした霊樹の森の半数と|鼠人《スケーブン》、|小鬼《ゴブリン》。|犬鬼《コボルト》、|食人鬼《オーガ》の軍勢を失いました。面目次第もございません」
ドロテアが続ける。
「相手が『神殺しの竜王』と『皇帝』では、致し方あるまい。相手が悪い」
三人のダークエルフたちは、ドロテアの言葉に畏まる。
「ははっ」
ドロテアが続ける。
「うぬらが戻って何よりじゃ。霊樹の森は、植えれば良い。妖魔の軍勢は、集めれば良い。だが、うぬらは、そうはいかんのでな。我らダークエルフの血は、貴いのじゃ」
シグマは、ドロテアの言葉に感激する。
「……陛下」
ダークエルフは、強さを至上として、極端な血統主義を取っており、自分たちダークエルフを|支配種族《マスターレース》として位置付け、人間や弱い種族は|奴隷種族《スレイブレース》として消耗品程度にしか考えていなかった。
ドロテアが続ける。
「うぬらを呼び戻すのに、貴重な|古代魔法遺産《アーティファクト》『転移の宝珠』を使った。そう簡単に手に入るものではない。その分は働いて返せ」
三人のダークエルフは答える。
「ははっ!」
ドロテアは、シグマを見詰めて詰問する。
「シグマ」
「はっ!」
「人間の皇帝は、どうであった?」
シグマは、ドロテアからの質問の意味を把握しかねていた。
「どう、と言いますと?」
ドロテアは、ラインハルトに興味を持っていた。
「戦った感想じゃ。大帝は神々から力を授けられた。その子孫である皇帝の一族は『人の子の、最も優れし者』と聞く。どうであった?」
「はっ。……皇帝は、マスタークラスの|上級騎士《パラディン》であり、近接戦におけるその強さは、尋常ではありませんでした」
「うぬら三人掛かりでも、勝てなかったようだな」
「……おっしゃる通りです」
ドロテアは、上機嫌で自分の下腹部、子宮の位置を摩りながら呟く。
「ふふふ。……『人の子の、最も優れし者』である皇帝と、ダークエルフ最強の一族である|我《わらわ》が|目合ひ《まぐわい》、吾子を孕めば、産まれてくる子は、一体、どれほどのものになるか……ふふふ」
ドロテアが続ける。
「……人でも、亜人でも、人外でも構わない。我らより強き者であるならば。我らの目的のためには、数の少ない我らには、強さと力が必要なのじゃ」
ドロテアの呟きにシグマは驚く。
「……陛下。恐れながら、皇帝を誘拐するなど、とても無理です」
「なら、|我《わらわ》が直接、皇帝に|求婚《プロポーズ》してみようかの?」
ドロテアはそう口にすると、自分の右手の中指と薬指を揃えて立て、男性器に見立てて根元まで口で咥えて見せる。
シグマは俯いて答える。
「……お戯れを」
ドロテアが告げる。
「ふふふ。次の手を考えねばなるまい。奴隷と生贄は、いくらあっても良い。……何も『大帝の生まれ変わり』と称される当代の皇帝でなくとも良い。皇帝の一族の男子であるならば」
ドロテアは、半球状の部屋の天井を眺めながら呟く。
「強き者の血は、必ず覚醒する。……その時が来るのを待てば良い。時は我らに味方する。我らに寿命は無いのだから」
奴隷と生贄、そして帝室の血を狙い、闇の眷属であるダークエルフたちは、次の陰謀を企てていた。